藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 348
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101028019

作品紹介・あらすじ

元禄期の名優坂田藤十郎の偽りの恋を描いた『藤十郎の恋』、耶馬渓にまつわる伝説を素材に、仇討ちをその非人間性のゆえに否定した『恩讐の彼方に』、ほか『忠直卿行状記』『入れ札』『俊寛』など、初期の作品中、歴史物の佳作10編を収める。著者は創作によって封建性の打破に努めたが、博覧多読の収穫である題材の広さと異色あるテーマはその作風の大きな特色をなしている。

感想・レビュー・書評

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  • 『藤十郎の恋』これはゾクゾクときました。こういう男、好きな人多いんじゃないでしょうか。時は元禄時代。名優として名高い男が、人妻との道ならぬ恋を、どう舞台で演じてよいのかわかりません。悩んだ末に彼がとった行動は、ひとりの女性に残酷な仕打ちをすることになりました。芸のためなら、鬼にでも人でなしにでもなるんですね。それでも魅力的に思えてならない男です。
    『ある恋の話』は、逆に女子なら分かる~ってなるんじゃないでしょうか。今の時代でも芸能人とかスポーツ選手とか、手の届かない人に憧れてる女の子の中で、同じような気持ちになってしまったって子いると思いますよ。
    『忠直卿行状記』も好きかも。自分が偽りの土台の上に立っていたことに気づいた忠直が、段々と周りを信じることができなくなり暴君度マックスになって乱行三昧。でもその背後には孤独感が付きまとっているのが見え隠れしてました。SOSを発信しているような感じです。それが憑き物が落ちたかのように穏やかに晩年を過ごした忠直。この二極化された人生に、とても興味を覚えました。
    これらの話や『恩讐の彼方に』にしろ、他の話にしろ、出てくる人物たちの感情が徐々に変化していく心模様の表現がとても好きです。そして菊池寛は封建制度の打破に努めたと解説に書かれてありましたが、なる程。時代に対して、これでいいのか、これは違うだろう。その考え方はおかしくないかい?と読者に問い掛けるような題目だったなと気づきました。

  •  短編揃いながら抜群のストーリーテラーのベスト盤。文豪という名声にビビッて手を出さないのはもったいない存在。
     殿様が故の心の疎外感をあぶり出した忠直卿行状記・ドリアングレイの肖像をモチーフにしたある恋の話・芸事を極めるために人情を切り捨てた藤十郎の恋、地獄の火焔は天国の退屈をも凌ぐものであることを諭させる極楽・見た目が人にとっていかに大事かを示す形・杉田玄白と前野良沢の諍いをとりあげた蘭学事始・小物の自尊心の滑稽ぶりをあぶり出した入り札・巷語られる史実よりも救いある俊寛、そして、何よりも極悪人の一生をかけての改心に感動を抑えきれない恩讐の彼方に。
    どれもこれも抜群に面白いです。注釈が多いですが知ってる用語は注釈を読まないほうがスラスラ楽しめるでしょう。

  • 文豪の名に相応しい一冊ではないかと思います。

    ほとんど現代の出来事ではなく、歴史上の出来事。
    想像はできても、自分達と違う世界の物語。
    違う世界故に入りにくいのではないか・・・という危惧がありましたが。

    情景等は確かに昔の世界観だけど、完全に登場人物の心は今も昔もそう変わりない。
    日本人が、持っているなんていうか道徳心とかそういったもの。
    倫理と情がぶつかりあうところ。

    そんなところがいきいきと書かれていて、本当に素敵な作品だとおもいます。
    「形」とかブラックユーモアの効いた作品もあり、楽しく読ませてもらいました。

    おすすめの一冊です。

  • 歴史物の短編集で、表面だけ見れば少しとっつきにくさを感じる作品なのに、読み始めると簡単に引き込まれてしまう。どの作品も魅力的なのだが、話の展開の面白さというより、登場人物の心情の描かれ方のリアルさがすばらしいと思った。どの人物にも多かれ少なかれ共感できる。
    『恩を返す話』『忠直卿行状記』『極楽』が特に好き。『恩讐の彼方に』はうっかり泣いてしまった。

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/onshu_no_kanatani.html【書評】『藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)』〜第10回千年読書会課題図書

    恩を返す話
    忠直卿行状記
    恩讐の彼方に
    藤十郎の恋
    ある恋の話
    極楽

    蘭学事始
    入札
    俊寛



    2014.08.31 千年読書会の課題図書

  • 菊池寛の本にはずれはないと思えるほどどの短編にものめりこめる。「極楽」や「形」は一風変わった趣で楽しめて、「蘭学事始」は伝記などでしか触れることのない人物の人間的な部分をよく表現されていてこちらも楽しめる。吉川英治の解説も一見の価値あり。

  • 菊池寛の作品が描く世界は結構悲惨なものが多い。けれど読後あまり暗い気分にならない。フィクションとして安心して読めるからかな。そして純粋に面白い。

  • 菊池寛氏初期の佳作集。氏の作品は初めて読んだが、どれも非常に面白く人を勇気付ける感じを受けた。

    人生どこかに救いはあるといった人間に対する優しさを感じた作品。

  • 江戸中期~後期を舞台とした作品を纏めた短編集。

    表題の作品である前者はそこまでピンと来なかったが、後者の「恩讐の彼方に」はかなり惹きつけられた。冒頭の設定を読んだだけで、あ。これこの後こうなるな。と予想はつき、読み進むにつれて「火の鳥」の鳳凰編らしさを感じたが、それでも既視感が拭えなかった。洞窟を掘り進める後半に当たりようやく思い付いたのが映画「エル・ポト」に似ている!!だったが、まさか同映画の元ネタの作品だったとは思わなかった。

    作者は、人間の心情描写が上手いと思う。
    それも、人間の狡さや、その狡さを相手に見せない様にする虚栄心だったり、自分を騙す心を上手く描いている。

  • 九州旅行に際して表題二作目めあてで手に取った本。古典的で難しい言葉遣いも多いけど、素人目にも洗練を感じさせる文章でおもしろく読めた。ひとの感慨について、オリジナルでたくさんの表現を持っているのだなぁ。

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