- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101028811
作品紹介・あらすじ
上様の寵愛こそすべて、とは考えなかった女性たちがいた。御手つきとは違い、昼間の仕事に励んだ「お清」の女中たち。努力と才覚で働く彼女たちにも、人知れず悩みはあって……。里に帰れぬ事情がある文書係の女、お洒落が苦手なのに衣装係になった女、大柄というだけで生き辛い女、負けるわけにはいかぬが口癖の女。涙も口惜しさも強さに変えて、潑剌と自分らしく生きた女たちを描く傑作。
感想・レビュー・書評
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木挽町のあだうち文庫化待ち。図書館にある永井さん全部読みます、5作目。
大奥内お仕事時代小説。
将軍のお手付きの無い「お清」系大奥勤め。
「ひのえうまの女」
祐筆係 大奥内記録係
「いろなぐさの女」
呉服の間 衣装係
「くれないの女」
御末 掃除、洗濯、水仕事の雑益
「つはものの女」
表使の後継者争い 外交係
「ちょぼくれの女」
御三の間 狂言を習う二人の女性 一人はくれないの女の夕顔のその後
「ねこめでる女」
御中居 台所係
華美で絢爛、将軍の寵愛をめぐる女の戦場ではなく、江戸の女性の職場としての大奥。
先日、皇居東御苑内の大奥跡地を見てきた。近くの天守台跡地から比べてもなかなかの広さ。
常時500人以上がお仕事していたらしい。
それだけいれば、いろんな事情のいろんな性格の女性達がいたことでしょう。
それぞれ上を目指す者あり、花嫁修行的な者あり、案外助け合っていたのかもしれない。 -
するするっと読める短編集
大奥と言えば、愛憎蠢くドラマがあの壮大な音楽で浮かぶがこれは、そういうこととは無縁のお仕事小説
江戸時代好きな私は今まで幾度となく
この時代に生まれたら、煮売屋や小間物屋の
おかみさんになりたいと思っていたがこの本を読んだら
奥勤めも素敵と思えた
いまさらながら、大奥とは女性が活躍でき笑って過ごせる職場なのだと知った
いつの時代も、女性はたくましく、考えたり委ねたりしながら笑って働いていることが素晴らしいんだと思えた -
最初、堅いかな?読みにくいかな?と不安もあったが、いつの間にか大奥の暮らしに引き込まれて楽しかった。大奥に勤めている色んな階級の女性たちの話の短編集。前の話に出てきた方が、あとの話の中に出てくるとその後がわかって微笑ましく思えた。
当時あった豪華絢爛な衣装や小物など今はどうなっているんだろうか。江戸城なくなってるのは勿体ないなと思った -
11代将軍家斉といえば、側室数十人、子供も五十数人。庶民の生活苦をものともせず、遊蕩に耽っていたことで有名だが、その頃の大奥の物語。
将軍お手つきの者を「汚れた方」というのだが、そうではない「お清」たちのお仕事小説集。
さすが時代小説に造詣の深い著者の作品なので、当時の大奥のしきたりなどを読んでも説得力もあり、それを知る楽しみもあった。
大奥に入るいきさつなど、当時も生きづらかった女性たちが、大奥に入ることで、自分の生きる道を見つけていく前向きな話が多く、読後感もよかった。
高貴な方たちが飼う猫が、大奥の中を歩き回る「ねこめでる女」が一番好きだった。
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江戸城・大奥のお仕事小説短編集。
ひのえうまの女・・・奥女中の要・御年寄に仕えたお利久。
家の事情も伴い、大奥で出世したい願望あれど、今の仕事は
心あらず。だが思わぬ出会いから自分を生かせる道を見出す。
いろなぐさの女・・・「私にご指南いただきたいのです」
呉服の間のお松の境遇からの悩み。呉服問屋の千沙と
女形の岩井粂三郎との出会いと語らいは、己と向き合い人と
向き合う大事さを知ることになる。それは二人も同様に。
くれなゐの女・・・御末の玉鬘は大柄な身体が悩み。だが夕顔との
出会いで変化が。夕顔の見事な処世術。心に残るのは、
白塗りの顔と皆を笑顔にさせる夕顔の心持の逞しさ。
つはものの女・・・祐筆のお克は出世の道を歩むことが心の支え。
そんな彼女と呉服の間のお涼を競わせるのは、表使の初瀬様。
表使の役目とは。母の言葉が心に響く。「負けても良いのです」
ちょぼくれの女・・・美津江は御狂言師として大奥へ。「喜撰」の
舞を教える相手は御三の間のお美乃とお正。悩みを抱える
美津江とお美乃の心を晴らし、舞の楽しむ。それはお正のお蔭。
ねこめでるの女・・・御仲居・お蛸。御年寄の御小姓・お佐江。
飼い主で御中臈・お倫の方。彼女たちに愛され、年齢も身分も
境遇も違う三人を結びつけたのは、猫の小萩だった。
・解説 細谷正充
「大奥御用商人とその一族」読み終わって、大奥での仕事や
生活に興味を持ち、では小説ではと読んでみました。
大奥には様々な仕事があること。奥入りは、一に引き、二に運、
三に器量。お清の出世は己の手腕と運、そして人脈。
また、花嫁修業や奥勤めでの箔付け、後家になってからの
奥入りなどもあり、出世とは異なる理由もある。
でも多くの女性が働き、お役目がある職場。
喜怒哀楽があり、多くの悩みを抱えている者もいる。
でも、自分を活かし働ける場所でもあるということ。
特に、御末から出世したお正の生き様の逞しいことに
心惹かれました。
呉服問屋の女将・千沙と呉服の間のお松の関係は、
「大奥御用商人とその一族」の補足になる感じで興味深い。
また、それぞれの物語に登場した人物が、他の話に
ひょっこり登場するのも良かったです。
あ~頑張ってるなぁと。 -
友人に貸してもらった1冊。
ちょうど「木挽町の仇討ち」を図書館本で読んだあとだったので、あの気持ちいいリズム感と人間の機微が感じられる江戸小説を堪能。
周五郎のような江戸時代に生きる人の美学、大奥という場所での女性の在り方が伝わり、今に通じる心意気などが沁みました。
永井さんの他の小説も読んでみたいと思います。 -
朝井まかてさんの「残り者」から引き続き、大奥の王道をいかない女性たちの話。かなり面白い短編集。
ちょぼくれの女が好き。お正さま優しい(⌒▽⌒)
ねこめでる女も好き。猫好きにはたまらない(=^ェ^=) -
大奥と言うと女のたたかいのイメージがついていたが、普通の生活があり、辛い事もあるけれど、その中で逞しく生きていく人達が生き生きと書かれていた。短編集だが時々登場する人物に親近感が湧いてくる。
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6編からなる大奥の中の様々な部所で働く女達の話。
どの話もとても良かった。 身分も年齢も大奥に入ることになった事情もそれぞれ違う登場人物達が 時に思い悩み しかし皆 誠意をもって一生懸命自分のつとめをはたそうとする姿勢が 清々しく気持ちが良い。
〝つはものの女〟で 初瀬様が言った「ここまで歩んで来たことを誇りに思われよ。その誇りある女がするからこそ、この礼には意味がある。それゆえにこの負けは勝ちなのじゃ」という言葉には まさに 天晴 という思いだった
最後の話〝ねこめでる女〟は他とは少し違う切り口で 猫を介した 身分も年齢もこえた繋がりがホッコリ温かく物語の最後を結んでいた。 -
試しにと手に取り、小さなお話がいくつもあり、大作ではないと期待せず読んでみた。読み始めてみると、大奥の習わしに好奇心が動かされ、さらには一つ一つの話の温かさに涙がこぼれそうになった。読んでいると心がほぐされるような感覚でとても読み心地が良かった。面白楽しかった。
著者プロフィール
永井紗耶子の作品






大奥お仕事小説珍しくてなかなか良かった〜!!
大奥お仕事小説珍しくてなかなか良かった〜!!