私の少女マンガ講義 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2021年6月24日発売)
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本 ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784101029818

作品紹介・あらすじ

日本の漫画は世界でも希有な文化である。中でも少女マンガは男性とは異なる視点で新たな物語を生み出してきた。その第一人者である萩尾望都が2009年、イタリアで行った講演で繙いた、『リボンの騎士』から『大奥』へ至る少女マンガ史、そして、自作の創作作法と解説を収録。‘19年にデビュー50周年を迎え、現役であり続ける著者が語る「原点」と「未来」を繫ぐ少女マンガの記録となる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ■少女マンガの岸辺で――まえがきにかえて 矢内裕子
    ■Ⅰ章 イタリアでの少女マンガ講義録
    ・少女マンガの歴史
    ・自作についての解説「半神」「柳の木」「ローマへの道」「イグアナの娘」
    ・質疑応答――イタリア人聴講者からの質問
    ・ドナテッラ・トロッタ氏によるインタビュー
    ■Ⅱ章 少女マンガの魅力を語る
    ・少女マンガは生きている
    ・私の創作作法
    ■Ⅲ章 自作を語る 『なのはな』から『春の夢』へ

    □萩尾望都氏との初対面 ジョルジョ・アミトラーノ
    □イタリアの秋 矢内裕子
    □著者あとがき
    □解説 中条省平

    この数年萩尾望都界隈が滾っている。
    個人的には「残酷な神が支配する」で凄まじい漫画に対面させてもらったあとは、そのフィナーレを作家への興味の終わりのように錯覚したせいもあり、熱心な読者ではなくなってしまった。
    が、萩尾望都は常にナウなのだ。
    ということで未読だった「バルバラ異界」を初読、「なのはな」を再読してこの本に向かったが、居住まいを正すとはこのこと。
    記事は多様なものだが、常に貫かれているのは萩尾望都の真摯さ、生真面目さ、文化への愛。
    個人的には「イグアナの娘」「残酷な神が支配する」で親を描くことで、作者自身が救われた、という記述に、感慨ひとしお。
    こういう形で読者を救い作者を救う、やはり稀有な作家だ。

    今後は中川右介「萩尾望都と竹宮惠子 大泉サロンの少女マンガ革命」、竹宮惠子「少年の名はジルベール」、萩尾望都「一度きりの大泉の話」と読み継ぐことで、じゅくじゅくした気持ちに自らなっていこうと計画している。

  • 三部構成で第一章がタイトル通り、2009年にイタリア、ナポリの大学での少女マンガについての講義の記録。日本の少女マンガのざっくりとした歴史(「リボンの騎士」から「べるばら」を経て「大奥」まで)、「半神」と「柳の木」の自作解説、質疑応答、そしてイタリアのメディアからのインタビューなど。

    二章は、イタリアでの講義をふまえてのおさらいと、少女マンガについてのインタビュー。コマ割りというものについて結構専門的な話をされているのは初めて読んだかもしれない。なにげなく読んでいるけれど、作家によってそんなに個性が出るものなのか。

    三章は2011年の震災以降の比較的最近の作品についてのインタビュー。原発や放射能について扱った「なのはな」以降のシリーズ、「王妃マルゴ」、「AWAY」、そしてポーの一族の続編「春の夢」について。ポーの一族続編は、ご自身でも絵柄が変化したのでもう描けないと思われた時期もあったそうだが、夢枕獏氏に会うたび続編読みたいと言い続けられて洗脳されたのかもとのこと(笑)

  • 萩尾望都による少女漫画誌概論と、近作の解説。
    ほんとうに漫画が好きな人だな。よう読んどいでる。大泉の話でも出てきた、この漫画をあの人が描いたら……という遊びの話がここでも出てくる。

    岡崎京子を少女漫画の血脈の中で語っているのが新鮮。いや確かに萩尾望都と大島弓子からの影響は大いに語っているのだし継承者であるのは確かなんだけど。
    岡崎京子を男性批評家が理解できてなかったという話にどきりとする。わ、わたし、わかってるのかな…大好きだけど、自信なくなってきた。

  • 萩尾氏のナポリ大学での講義内容他。
    テーマは 日本における少女漫画史。

    漫画については私もあれこれ考察することはあるけれど、「日本における女の子の社会的在り方」に対しての自由への渇望であるとの見方は、「なるほどーーーー」と感じ入りました。
    なぜ我々はあらゆるジャンルを漫画に求めるのか。コマの間に何を探って読んでいるのか。なぜBLが確固たるジャンルとして座を占めているのか。
    窮屈な日本においてなんだって許される世界が少女漫画!
    すごいなー、この「みんなと同じ形」を重んじる日本において、よくこのジャンルが存在を許されたなと感動すら覚える。
    ある意味「少女漫画」は少女にしか理解できない謎世界だが、しょせん少女だし大した脅威でもないのでほっとこう、というのが真実だろうか。
    その結果、立派に根を張って、その文化を樹立してしまったなんて、奇跡じゃないですか。

    結果的に「漫画で覚える日本史」的なものも隆盛を極めている。そんで確かに漫画としてのストーリーがあるから記憶に残るんですよね。

    漫画・・・スゴいな・・・。
    わたしはコミックス派です。(だからなんだ

  •  姉の持っていた『ポーの一族』を学生時代に読んで、ストーリテリングの巧さに感嘆し、エドガーの行く末に想いを馳せたものだった。
     『ポーの一族』の新作が40年ぶりに発表されると聞いて、当時の記憶が思い出されたが、期待半分、不安半分だったので、読むことはしなかった。
     そんな時本書が刊行されたので、手に取った。

     I章は、もともとイタリアでの日本少女マンガ講義を元にしたもので、著者の視点でのマイルストーン的な作品が紹介されるとともに、自作を素材にテーマやテクニックが語られる。
     タイトルは知っているが実際には読んだことのない作品が多くて興味深かった。


     II章は、I章を踏まえた上でのインタビューを元にしたものであるが、自作についての解説、構図やコマ割りなどマンガならではの手法についての見解は、素通り、読み過ごしてしまいそうなポイントについて、実作者ならではの見解が随所に示されていて、読み応えがあった。

     少女マンガを切り拓いてきた第一人者の率直な思いを聞くことのできる、ありがたい一冊だ。

  • 萩尾望都が2009年にイタリアの大学で行った講演(質疑応答含む)の記録と、自作や創作にまつわるインタビューをまとめたもの。
    講演では萩尾望都視点による日本の少女マンガ史の概観が述べられており、そこに挙げられた作品など萩尾望都史観とでもいうべきものが伺われて面白い。
    後半のインタビューもコマ割りに現れる個性の話などいろいろ興味深い。しかし、何十年も前に読んだと思われる漫画のコマ割りがさっと頭に浮かぶ萩尾望都の記憶力は凄い。

  • イタリアの大学で行われた講演の内容ですね。
    あ~そうなんだと気が付いたり、そーだよねってウンウン頷いたり。
    …"ポーの一族"を買いそうな自分がいる。

  • 100冊ビブリオバトル@オンライン第20ゲームで紹介された本です。オンライン開催。
    2020.08.22〜23

  • 萩尾望都さんといえば、少女漫画の歴史とも言える伝説的な作家さんだ。
    が、残念ながら、自分自身は大人になるまで、ほとんど読んだことがない。
    唯一読んだのは『トーマの心臓』くらい。

    この本では、イタリアの大学に招かれて行った講演をベースに、少女漫画の歴史を概観し、表現の特質について語られる。

    表現論ではコマ割りのことが特に多く取り上げられていた印象がある。

    規則的なコマを割って物語を作っていくことがむしろ難しいという話があった。
    自分にとってはそれ自体が意外で、興味深かった。

    少女漫画の自在なコマ(例えば人物がコマを無視して、画面の前面に出てくるような配置)が読めない人がいるというのも、わかるような気がする。
    同時に、むしろ自分はどうして違和感なく読めたような気になっていたのか、改めて不思議に思ったりもする。

    萩尾さん自身のことも知ることができた。
    お母さんとの関係に苦しんだことが作品に反映したものもあるとの由。
    名前だけは知っていた『イグアナの娘』も、そういう作品だったとは。

    あとは、SFと少女漫画は親和性があるという指摘も面白かった。

    今更ながら、『ポーの一族』を読んでみたい、と思うきっかけになった。

  • 男性は少女漫画が読めないという話やそれに関係するコマ割りの話がとても興味深かった。それが当たり前と受け入れられる時にインプットしておかないと、大人になってからでは理解が難しいんだな。思わず手元の少女漫画を引っ張り出して確認してしまいました。
    『半神』、怖くて美しくて何度も読み返してしまいました。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩尾望都の作品

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