和解 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101030012

感想・レビュー・書評

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  • 1917年 志賀直哉が長年続いた父親との不和が解消した経緯とその時の両者の安堵感を描いた中編小説。
    父子の深い確執が何故生まれたかについては、この作品には書かれていません。解説によると「大津順吉」「或る男、その姉の死」等に書かれているようです。女中との結婚への反対、大学中退、毒銀事件への関わりなど、幾つかが重なり、この小説の始まりのごとく、顔も合わさない状態が続いていたようです。
    肉親であり家族であった二人の感情は複雑で、憎しみさえも感じる。
    順吉は、一人目の子供を生後間も無く病気で亡くし、その子供の死に対する父親の態度が一層確執を深める。
    しかし、二人の子供が無事産まれて、その出産に立会い、その生命に感動する。
    他の家族の望みもあり、本人自ら、父親と対話する。父親の方も、これからの生活の中で息子との和解を望んでいて、言葉足らずとも二人は、和解する。
    和解した後は数ページなのだけれど、父子も満ち足りた様子に、家族も産まれた子供も穏やか生活が約束されているようで美しい描写でした。
    直哉忌

    • 傍らに珈琲を。さん
      わぁ志賀直哉読まれたんですね!
      なんだか難しそうで、スルーして22日の中也忌に手をつけました。
      谷崎の「陰翳礼讃」で「城の崎にて」に触れてい...
      わぁ志賀直哉読まれたんですね!
      なんだか難しそうで、スルーして22日の中也忌に手をつけました。
      谷崎の「陰翳礼讃」で「城の崎にて」に触れていたので、そちらはいつか読もう読もうと思いつつ遠ざかり…汗
      おびのりさんのレビューに"感動"や"美しい描写"の文字があったので、改めて、志賀直哉はいつか読もうと思ったのでした←いつ!?
      2023/10/22
    • おびのりさん
      こんばんは。中原中也の熱いレビュー読んできましたよ。
      私は、詩が全くダメなんです。ほぼダメ。鑑賞下手。時々、挑戦するんですけど、玉砕。

      そ...
      こんばんは。中原中也の熱いレビュー読んできましたよ。
      私は、詩が全くダメなんです。ほぼダメ。鑑賞下手。時々、挑戦するんですけど、玉砕。

      そして、志賀直哉なんですけど、文章はとても読みやすく、理解しやすいです。好みはもちろんあると思いますが。暗夜行路は、読んだことあるのですが、印象が薄くて、別の作品にしてみました。
      来年は、是非どうぞ。
      2023/10/22
    • 傍らに珈琲を。さん
      こんばんは!
      読みやすいとのこと、志賀直哉を読んでみようかなーと思い始めてます♪
      とは言え知らなさすぎるので、『城の崎にて』にしようかなぁ。...
      こんばんは!
      読みやすいとのこと、志賀直哉を読んでみようかなーと思い始めてます♪
      とは言え知らなさすぎるので、『城の崎にて』にしようかなぁ。
      できれば薄いのがいいなぁ 笑

      中也のレビューを読んでださって有難う御座います。
      私は翻訳本が苦手です。
      最近何故か、昔はダメだったハヤカワのディストピア小説は読めたのですが。
      詩も、まだまだ好き嫌いが激しいし、間違った解釈もしがちなのですが、楽しく読めるようになってきました。
      もしかしたらブクログのお陰なのかもしれません。
      2023/10/22
  • 父子の確執と和解をテーマとした短編?私小説。
    男は父親と対峙・葛藤してこそ一人前なので(カッコいい!笑)、少し期待をこめて読んだのですが、葛藤と和解にいたる心境について、私小説ならではの肝心の内面の部分の深みが足りない気がして(むしろイジイジしているきらいすらある)、短編(中編?)ということもあり、少し物足りませんでした。また、代名詞の多用と、短フレーズの文体、場面描写の唐突感なども状況をわかりづらいものにした一因だったような気もします。
    ですが、本書の構成は、諍い→長女の死→次女の誕生→和解と、見事な三角形になっており、盛り上げから着地にいたるまでの描写がきれいですね。特に、長女の死と次女の誕生の場面は生々しく、本物語の両柱として主人公の心情の変化をリアルに転換させているところは面白かったです。それに、祖母、義母、妻、妹たちといった周囲の女性陣も、父子の諍いに一喜一憂し、和解に向けてやきもきする立場がとても良い。

  • 志賀直哉の作品は平易な文章で、あまり劇的な何かがあるわけではなく、最初はつまらなく感じました。
    でも、本作は父子の心境が細かく書かれていて、大人になって読むと双方の気持ちもよくわかり、ラストはジーンときて泣いてしまいました。

  • 自らのための備忘録

     この星5つは、志賀直哉の作品にではなく、安岡章太郎氏による解説にだけ捧げます。『暗夜行路』を失敗作と言ってくれたことで溜飲を下げることもできました。これまでの志賀直哉の父子の争いの理由、経緯、また時代背景など何もかも、すべてを理解することができました。まったく素晴らしい解説でした。感謝!!!

     『和解』『暗夜行路』への感想は、それぞれ別に書きました。

  • 大学生のころに初めて読んで、心をわしづかみにされた本。
    テーマは、父と息子(主人公)の間にある溝の深い深い不仲。
    そもそも小説にはなぜここまで不仲なのかがはっきりかいていなくて??なのですが、
    志賀直哉本人が足尾銅山鉱毒事件で市民のために活動したことや、女中と結婚したい
    といったことで、父親と衝突したことが、本作に根底にあるようです。

    小説では、主人公に生まれた長女、その死をめぐって、不仲が加速しますが、次女の誕生をきっかけに、主人公の心持ちも変わり、、、
    物語のクライマックスでは、父と息子がまさしく「和解」を遂げます。

    この和解っぷりがとても気持ちよかった印象だったので、久しぶりに読みたくなり、手に取りました。
    が、和解シーンに、昔ほどの感動がなく。

    これはとても意外でした。感動したくて読み返したのに!
    この10年の間に、私の中で主題が変わったのか(いや、それはない)、はたまた今まさしく私に子どもができることと、主人公の境遇が似ているから、変な感じになったのか。

    10年前は意識しませんでしたが、むしろ、長女の死と次女の誕生シーンがとても印象的でした。死と生に、いのちの儚さと、瑞々しさが美しく描かれていて、感動しました。

    また、10年後に読んでみよう。

  •  
    ── 志賀 直哉《和解 1917‥‥ 19491207 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101030014
     
     
    (20231128)

  • 淡々と男の生活が書かれていて特に面白いこともないけどなんか読めるな、からの父との和解の場面の突き刺さり方が凄かった。
    平凡な日常が和解の場面を盛り上げていて、読み始めよりずっと読んでよかったと思える。

  • 文章が好きだ。難しい言葉はなにひとつ使われていないのに、的確でよくわかる。これは理想的だと思った。父と子の関係修復が丁寧に描かれている。純粋に話を心に受け取れた。だからこそこの小説を成り立たせているその根幹がとても気になる。後々、構造的なところを研究するために読み返してもいいかもしれない。父との不和が、赤子を死に至らしめてしまう〈行動〉で表現されているのがいい。そして次の子の誕生を通して関係の修復へ導かれていく。この赤子は人であるというよりも象徴だ。

  • 父子喧嘩と巻き込まれる人々と死んだ子どもと和解の話。
    っていうか、これが私小説ってことは、主人公(志賀直哉)めっっっちゃ性格悪くないか!?!?!(時代的なものがあるにしても)気分屋過ぎるだろ……振り回される妻の身になってやれよ……というのが正直な感想でした。
    そもそもなんで京都でシカトしたの……それがさっぱり訳分からんのですが……。長子が死ぬ前の話だろそれ……。
    あまりにも主人公に振り回される(父親も含めた)周囲がかわいそうすぎるでしょ……と思ったけれども、そういう話ではない気がしますね。(本来は、長子の死!次子の誕生!祖母の不調!実母の命日!生と死!血は水よりも濃い!!!!みたいな話だと思われ)
    元々、志賀直哉が自分が父親と仲が悪い為に、父子の不和を主題に書いているらしいが、本当にこれだけ読むと息子側の勝手な主張では~?と思ってしまうのであった。

  • 私にとっての、志賀直哉入門の一冊。

    白樺派の代表ともいえる彼の、生涯のテーマである父との確執を描いた作品。
    次第に和解していく様子が、何故だか分からないけど自身に投影される。

    リアルでは父と仲良しなのに不思議。それだけ広く解釈させられる文体であるということかな。

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著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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