写楽 閉じた国の幻 下 (新潮文庫)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 新潮社 (2013年1月29日発売)
3.71
  • (69)
  • (165)
  • (99)
  • (21)
  • (11)
本棚登録 : 1220
感想 : 142
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784101033136

みんなの感想まとめ

消えた浮世絵師、東洲斎写楽の正体に迫るミステリーは、江戸時代と現代を行き来しながら展開され、読者を引き込む魅力に満ちています。島田荘司が20年の歳月をかけて構築したこの物語は、蔦屋重三郎や歌麿とのやり...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 佐藤と出版社の常世田たちが、写楽は誰かの考察を進める中、オランダ商人の記録の写しをオランダで入手した片桐教授のお陰で、写楽は外国人という説が一気に可能性を帯びてくる。

    一方、江戸編にて当時の状況長崎に滞在していたオランダ商人が参府した際の蔦屋重三郎とのやりとりが描かれ、ぐんぐん引き込まれてしまった。
    写楽は誰かという議論や当時の江戸文化など、興味深い内容満載で、特に江戸編が面白かった。

    大河ドラマの"べらぼう"をフォローしていなかったが、今更ながら、少し興味が湧いてきた。(笑)

  • 読了して、まさに写楽、証明終了したんじゃないかと思った。
    そもそも写楽という名前自体、写す楽しみと書く、という話になった時のパズルのピースがはまった感は鳥肌モノ。
    説を実証するために証拠の文献を集めていく過程は、学術研究の楽しさも感じられた。

    そして、カリスマ出版人の江戸っ子・蔦屋と、お調子者で気のいいオランダ人・ラスさんの友情には、意外にも涙腺が緩んでしまった。

  • 作者(島田荘司)が挑んだ写楽ミステリー。蔦屋重三郎、歌麿、山東京伝とのやりとりも面白い。現代での謎解きを江戸時代ではこうだったろうって、ストーリーを並列してるから日常でTVを観ている感覚に落ち入りどんどん読み進めた。あとがきは、物語以上に良かった。島田荘司先生の今後の発表作品を見逃せない。

  • 帯に、「構想20年。」とある。
    確かにこれだけ調べるのは並大抵のことではないだろう。
    "写楽とは何者なのか?"
    歌麿が激怒したわけが、著者の推理だと腑に落ちる。
    上巻を再読した時は、全然覚えてなかったと感想を書いたが、全部読み終わると、よく忘れていたな、と自分に呆れた。最初に読んだのはたぶん十年以上前だけど。
    面白かったが、入り組んでいて読むのが大変だったし、最初に出てきた肉筆画の謎などはまだ残ったままだ。

    印象的だった所を引用すると、
    (上巻だが)
    「でも写楽は違う。静止写真じゃなく、あれは動体の撮影です。動いているものの一瞬の姿を、ぴたっととらえているんです」中略「欧州の名画群が、被写体が一分間我慢のピンホール・カメラなら、写楽は千分の一秒の高速シャッターを持っているんです」
    とても面白い見方だと思った。

  • 消えた浮世絵師東洲斎写楽の正体に迫ったミステリーの下巻。長大な作品の割には現代編のモヤモヤしたものが残るが江戸編は人間ドラマとして熱いものが感じられた。それに現代編も紆余曲折(平賀源内説とか)あっての真相解明はミステリーとして良かったと思う。読了後に写楽の第1期作品(大首絵)が観たくなった。
    個人的な考えとしては現代に例えると蔦屋重三郎が漫画雑誌の編集長でネームの素晴らしい新人作を大御所漫画家プロダクションに委託(なので金もかけた)、ペンネームをつけて連載するも打ち切りとなり後になって調べ様にも当事者死亡で分からなくなったという認識。

  • 2022年2月4日読了。

    『東洲斎写楽』
    寛永六年・1794年の5月から1795年の正月までの10ヶ月間のみ突如江戸に現れ、140数点もの作品を猛烈な勢いで作り上げ、そこから忽然と姿を消した謎多き1人の浮世絵師。

    有名でも無名でも、他の絵師たちには生い立ちやエピソード・風貌・人柄など多かれ少なかれ何かしらの情報があるのに対して、写楽に限っては一切の情報が皆無である。

    文献も残っていなければ、版下絵・肉筆画・練習の為の絵などの類も、写楽のものだけは何一つ発見されていない。

    更なる謎として、『喜多川歌麿』や『葛飾北斎』を世に送り出し、江戸一番の版元として名を馳せた『蔦屋重三郎』が、無名の写楽を大抜擢し、黒雲母摺りという高価な材料を使った待遇でデビューさせている事。

    写楽と顔を合わせていたであろう『蔦屋重三郎』や、蔦屋組と呼ばれた『喜多川歌麿』『葛飾北斎』『十返舎一九』『山東京伝』などの有名人達が何一つとして写楽について語っていない事。

    『写楽=別人説』や『写楽は存在しなかったのではないか』など様々な議論がなされるが正体は謎のまま。


    北斎の研究を専門としていた『佐藤貞三』は、とあるきっかけで一枚の浮世絵の肉筆画を手に入れる。
    浮世絵とは基本的に美男美女・スターを描くものだが、その絵にはどう見ても美しくはない醜女が描かれていた。
    しかし浮世絵史上、ただ一つの例外として醜女を描いて有名になった絵師が存在したのだ。
    それこそがまさに『東洲斎写楽』

    まさかこれは写楽の肉筆画なのか?
    そうであればこれは時代を揺るがす大発見なのではないか?
    そんな事を考えている折、とあるビルの回転ドアによる事故に巻き込まれ、大切な人を失ってしまう。
    絶望の中、事故の原因究明の場で知り合う事になった機械工学の女性教授『片桐教授』と共に写楽の正体を探り始める。


    初の島田荘司氏の作品。
    構想20年という大作。
    写楽という存在は知っていたし、『奴江戸兵衛』はとても有名な作品なので観た事もあったが、ここまで謎の多い人物だという事はまったく知らなかった。
    作中で写楽の正体を著者の自説で明確にしているが、本当にそうなのではないかと思わせるほどリアル。
    どこまでが史実に沿った話なのか分からないが、とても面白い説で、読み終わった後の感想としては実際そうであって欲しいとすら思ってしまった。

    現代編と江戸編の2つの時代のストーリーから成り立っていて、現代編ではメインストーリーと写楽に関しての説明・推測が大筋。
    江戸編では実際どのような事になっていたのかという答え合わせ的なストーリー展開だった。

    無理に現代編のストーリーは必要ないんじゃないかと言う意見も多々あるようだが、ストーリーがいらないのであれば写楽に関しての文献や参考書でも読めばいいわけで、小説が読みたくてこの本を手に取った自分としてはストーリーありきで良かったのではないかと思う。
    語りきれてないのは否めないが…。

    江戸編は天保九年だの文政元年だの、年号がよく分からず苦手なので、初めのうちは読み辛さを感じたし、現代編は説明を丁寧にする為か同じ事を何度も解説していて読み辛さを感じて上巻は読むのがキツかった。

    しかし、下巻からの江戸編の面白さは格別。
    現代で言うところの敏腕プロデューサー『蔦屋重三郎』の漢気溢れる感じがたまらなくカッコいい。
    現代編の主人公『佐藤貞三』が魅力が無さすぎて、本当の主人公は『蔦屋重三郎』である。
    大手書店企業の『TSUTAYA』の名前の由来ともなっているらしく、『蔦重』の偉大さを感じた。

    作中にオランダの話が頻繁に登場し、フェルメール・ゴッホ・レンブラントといった画家達の名前があがっていた。
    自分の人生の中で唯一行った海外旅行がオランダであり、フェルメール・レンブラントの作品は美術館で鑑賞してきたが、アムステルダム国立美術館に写楽の浮世絵が展示されている事を全く知らなかった。
    日本の誇りとして鑑賞して来なかった事を心から後悔。

    著者が後書きでも書いていたが、上下巻合わせて900ページ以上あるのにページの都合上、伏線の回収がしきれていなかったり、書きたかった事を書ききれなかった事が心残りだそうで、続編を匂わせる発言をされていた。
    しかし、この本が発売されて10年近くたっているがまだその兆候は見られないので期待は薄いのかもしれない。
    実現するのであれば、読んでみたい。

  • 写楽の正体を追う部分は面白かったし江戸歌舞伎の風景が描写されていて興味深かった。が、小説としてはイマイチ…。
    と思っていたらあとがきで作者自身が、「写楽論だけで分量がいっぱいになっちゃって、登場人物のストーリーいろいろ用意してたのに盛り込めなかったよー無念」って言ってた。え、失敗作宣言?
    でもまあ作者も、写楽の正体に関する自説を論じたかった、それが目的だったみたいなので、まあそれだったらいいんじゃないですかね…。小説だと思って読むと金返せって気分になるが、『写楽の正体』みたいな胡散臭気な新書だったら読み切れなかったかもしれないし…。

  • 謎の絵師写楽の正体は?
    実在する歴史上の謎に対し、小説の体をとりながらも、作者の膨大な下調べと長年の考察による新説をぶち上げる。このような小説を読むのは初めてかもしれない…

    自分は写楽について知識がないので、これが写楽論争に一石を投じ得るものなのかは分からないが、
    読んでいる限り状況証拠もいくつかあるしとても面白いと感じた。もちろん小説家ならではの創造力がその合間を埋めているのはわかっているが。

    なによりこのようなチャレンジングな小説を読んだのが初めてなので単純に感動した。
    実在しない絵師をでっち上げて完全フィクションを作ったのならこんなに感動しなかったろう。

  • この本を読んでしまうと、写楽の正体はコレしかあり得ないと思えてしまうのだけど、真実はどうなのだろう。

    ただこの本の面白さは、写楽の正体を解き明かしていく点だけでなかった。

    その過程で描かれる当時の江戸庶民の生活事情(倹約が義務付けられていた)や、将軍に謁見する為、出島からオランダ人がはるばる上京する江戸参府(彼らも厳しい監視体制下にあり自由行動が許されなかった)など、勉強になることが多かった。

    あと、浮世絵が絵師(下絵)、彫師、刷師、三者の分業で行われていたことも。彫り、刷りの過程を熟練の職人が行うことで、下絵のオリジナリティが薄まり、絵師写楽の正体の謎を深めた様だ。

    "写楽現象"に関わった人たち(本書の仮説の様だが)がまたいい。
    浮世絵の版元で蔦屋重三郎という人物も男気があって魅力的だし、若かりし春朗(北斎)の素朴さもいい。
    前半で生涯が描かれる平賀源内の天才ぶりもまた、興味深かった。

    現代編だけでなく、江戸編で生活者の目線で当時を見せてくれるあたりも上手い!と思った。
    現代編では主人公の厳しい現実が迫ってくるので読む方もキツイが、江戸編で救われる。

    でも何といっても、一見無関係に思える回転ドアの悲劇的な事故と、写楽作品、そして混血の女性教授の共通点には、こう来たか!と唸らされた。緻密なプロットがあったのね。

    ただ、あとがきによれば、思い入れが強い分想定以上に頁数が増え、書くはずだった裏ストーリーが一行も書けなかったらしい。

    確かに前半は説明的に長々と同じ内容を繰り返し描かれており読み進めるのが少々辛い。後半はスピード感がありサクサクいけた。
    裏ストーリーがあるなら続編も読みたい。

    あとがきで、以前の浮世絵軽視の風潮や初期の推理(探偵)小説への蔑視を"常識の暴力"と呼ぶ作者。固定観念を嫌い、浮世絵の常識を打ち破った蔦屋に敬意を払う熱い気持ちが伝わってくる。

    "写楽現象"の写楽の正体とは。個人的には今までそんなことを考えてみたことも無かった。
    でも改めて浮世絵を見比べると確かに写楽の(特に初期)は他と大きく違う。面白いなぁ。

    この本を読み終わった今、江戸時代の魅力的な登場人物や、人々の暮らし、歌舞伎や浮世絵、もっと安価に楽しめたはずの落語、色々なものに派生して興味が湧いた。
    しばらく江戸がマイブームになりそう。。

  • ある程度以上気に入った本しか本棚に登録しない主義なので、登録自体結構迷いましたが、単純につまらなかった訳でもなく、それなりに気持ちに残っているので登録することに。

    核である「写楽の正体」の推理自体は(学問的にどうなのかはともかく)面白く、蔦屋重三郎をはじめとする江戸篇の登場人物も魅力的でした。
    もともと蔦重が好きなのもありますが、ここだけでも評価に値すると思います。

    ただ、小説としては、自分のことしか考えていない主人公に全く魅力がなく、主人公を助ける女性教授も都合のいいキャラクターでしかないので、現代編で感情移入できる人物が誰もいないのがつらかったし、あからさまに実在の事件を思わせる導入部(遺族や関係者は話題になったことで傷ついたかも)に必然性が感じられないことにも苛立ちました。

    連載がおわったあと、単行本化に当たって、あるいは文庫化に当たって、大幅に書き直す必要があったんじゃないかと思うんですが…。

    蔦重が(もともと)好きなので、彼に免じて★2つ半ってところでしょうか。

  • 歴史検証ものとしても楽しめますが、純粋に写楽とは誰だったのかというフーダニットでもある。久々に、流石島田荘司!と拳を握りました。
    読み出したら止まらない止まらない。一気読み。きっちりとデータを並べ、推理の過程を書き込んでくれるので、読み手のこちらもさまざま思考を重ねながら読むことが出来る。その分、上巻が冗長過ぎた気もするんですがー…著者の思考の過程を読んでいるのだなと思えばそれもまた楽しくもあり。
    回収できていないエピソードがあり、その点がもやもやしますが差し引いても、この面白さ。流石です。

  • 面白かった! 確かに、回収されない伏線や説明されない疑問など、物語としての瑕疵はあるものの、ミステリー界の大御所島田荘司が今こんなに熱のこもった作品を世に出したことに感動。
    もちろん「写楽」の謎に対する解答は鮮やか。島田荘司ならではの答えだと思うし、説得力も抜群。これが正解!と思える内容だった。個人的には、解答に至る前の課題設定のしかたにも、というかそこにこそ瞠目。どんな仕事もそこがキモなんだよなぁ…などと、つい我が身を反省してしまった。

  • 写楽の正体を解き明かす歴史ミステリー
    島田荘司さんは御手洗潔も面白いけれど、本作のように知的好奇心を満たしてくれる作品もいいですね
    写楽と蔦屋重三郎の心温まる物語です

  • 2013/5 初読時のメモより

    作者が提示した、写楽の謎:写楽が誰にせよ(既に知られた人物の変名にせよ)何故出自などが全く伝わって無いのか、接触していた筈の周りの人々が写楽について何故なにも語っていないのか。写楽はオランダ人だったという仮説は、これを合理的に説明していると思う。役者絵は、ブロマイドと芝居の宣伝を兼ねるものなのに、写楽は本来対象にならないような端役も描いていたという事も本作で初めて知った。

  • 写楽の正体を名指し.根拠に薄いがありえない話ではない印象.

  •  二回目。それを承知で読み始めたがすっかり忘れていた。途中で思い出した。
     初めて読んだときは興奮した。でも二回目で思い出すと写楽の正体はわかっている。興味は半減。面白味も半減。となると小説部分の粗が目立つ。子供の死亡事故なんて何の関係もないやん。現代のドラマは収束もせずお粗末。江戸時代のドラマはまあ面白いが台詞が鬱陶しい。洒落本を研究しているのはわかるけど、そんな話し方はせんやろ。洒落本風に書いたのかもしれないが、知識のひけらかしにしか感じられない。

  • 生き生きと描かれる400年ほど前の江戸町人に、羨ましさを感じる。著者の作品は初めて読んだが、歴史考証が飽きずに読める筆力。重くなりがちな歴史的な謎を、写楽作品への想い入れを消すことなく、娯楽作品として描いておりワクワクしながら読むことが出来た。他作品も読みたい。

  • 面白いけど 無理矢理ストーリーはいるんかな

  • 写楽の正体を小説したてで提示した作品。どこまで史実に沿っているのか分からないけれど、物語として引き込まれた。

  • 写楽は誰なのかと言う謎解きに関しては、斬新な解釈で説得力もあると思う。
    学会での反応とかはどうだったんだろう。資料的な裏付けが弱いから、やはり無視されてるのかな?

    ただ、小説としては著者も認めてるが、現代での様々な事柄の整理がついてないし、新発見の浮世絵の謎もそのまま放置。とても、完成されてるとは言い難い。続編なり、完成版を期待します。

全118件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田荘司の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×