ゴーグル男の怪 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2018年2月28日発売)
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本 ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784101033143

作品紹介・あらすじ

煙草屋の老婆が殺された夜、ゴーグルで顔を隠した男が闇に消えた ……。死体の下から見つかった黄色く塗られたピン札、現場に散乱する真新しい五十本の煙草。曖昧な目撃情報に怪しい容疑者が続出し、核燃料製造会社をめぐって奇怪な噂が。そしてついに《ゴーグル男》が出現した。巧緻な伏線と戦慄の事件が、ねじれ結ばれ混線する! この上なく残酷で、哀しい真相が心を揺さぶるミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 煙草屋の老婆が殺された夜、ゴーグルで顔を隠した男が目撃される。また現場には、黄色く塗られたピン札と散乱した煙草が。巧妙に張られた伏線と驚愕の結末に戦慄する長編ミステリー。
    島田作品といえば奇想天外なトリックと謎。読む側もハードルの高い期待をしてしまうが、十分に満足いく作品だった。原子力問題という現代のタブーに挑みながら、古典落語のネタも挟むという奇想さ。だから島田荘司はやめられない。

  • 冒頭から島田荘司ワールド全開。

    物語は東京都下の架空のある街を舞台に、タイトルにある得体の知れない不気味な「ゴーグル男」の出現から殺人事件の発生、主人公の一人である「ぼく」の一人語り、その街で起こった臨界事故と3つの別々の視点から始まっているが、最後には全て一つに収束していく・・・。

    「ゴーグル」とその中にのぞく顔は、皮膚が無く、赤黒く爛れた筋肉のように見える、そんな男が霧の中から現れるなんて恐ろしすぎる。

    前述の臨界事故は、1999年に発生した「東海村JCO臨界事故」をモチーフにしていると思われ、本作の中で重要な背景として扱われている。実際の東海村の事故はニュースで起こったことは知っていたが、その後二人の作業員の命が失われたことまでは記憶していなかった。改めてWikiを読んで事故の状況を知ることができた。

    兎にも角にも最後にどんでん返しがあると思って早々に犯人を考えるのを諦めて、純粋に読み物として読み進めることにした笑

    案の定、想定外の結末。犯人の言い分は共感できず。この犯人のような生い立ちの設定は筆者の登場人物に多いような気がする。

    このところYoutubeばかり見ていて日本語の文章の乱れについて心配になってきたところにこの本の正しい日本文を読んでホッとしたり。

  • 本物のゴーグル男?の生い立ちが可哀想すぎた。
    光子にも同情すべき点はあるけど恵まれない人生を送ってきた人がみんな悪人になるわけじゃないからねぇ。
    話としては3人のゴーグル男の物語が絶妙に絡み合い面白かった。
    ただ頭の悪い自分にはつぼ算を理解するのに相当な時間がかかってしまった。

  • <あらすじ>
    煙草屋の店員が殺される事件が発生。
    死体の下から見つかった黄色く塗られたピン札。
    曖昧な目撃情報に怪しい容疑者《ゴーグル男》が浮上。
    目撃者の証言ではゴーグルの中は血と皮膚がはがれたように真っ赤だったという。
    犯人は核燃料製造会社の臨界事故で働いていた?
    そして更に殺害事件が発生。
    事件を追う刑事とゴーグル男の2つの視点で進む物語の真相とは?

    <オチ>
    犯人はアイドルを目指す女性で、黄色く塗られたピン札で詐欺を行おうとしたら、店員にバレて通報されそうになったので殺した。
    その女性をストーカーしてた男がいて、ポストから部屋を覗いてたときに赤いスプレーをかけられ、それを隠すためゴーグルをしていた。

    もう1つの視点であるゴーグル男は、幼い頃に男にレイプされたり、臨界事故で被曝したり。
    後半に起きる殺害事件も被害者は昔ゴーグル男をレイプした張本人なので、殺したのはゴーグル男なのでは?と思わせる展開だが、結局その犯人もアイドルを目指す女性だった。

  • 「ゴーグル男の怪」
    哀しいという言葉を使った意味が分かる。


    タバコ屋の老婆が殺された夜。現場付近でゴーグルで顔を隠した男が目撃された。警察はその男を容疑者として捜査を開始する。深い霧と共に現れるゴーグル男は一体何者か。


    複数の謎が張り巡らされたミステリ。久々の島田荘司であり、時間をかけて読んだ。一つのテーマに複数の人間が絡む。そのテーマはゴーグル男が抱えるトラウマと大きく関係する。過去に縛られ、苦しめられる。そこから脱する為には、殺しを厭わない、殺すしか術が無い。ミステリとしては大きな仕掛けは無い分、ゴーグル男の苦悩と救いに焦点が当たっている。


    もちろん老婆を殺したのはゴーグル男なのか、何故男はゴーグルを掛けていたのか、は重要な謎である。


    前者のポイントになるのは、現場に残されていた黄色く塗られたピン札。同様のピン札は町の他のタバコ屋でも発見されるが、何故黄色く塗られていたのかが分からない。この謎は実に練られていて、本作がゴーグル男だけに留まらないストーリーになっているのは、この練り具合のおかげだと思う。ゴーグル男だけに注目していると、途中辺りで風向きが変わることを感じ、意外な展開に転がっていくのに気付けば、島田荘司上手いな〜と感じるのでは無いか。ゴーグル男の使い方も上手い。


    ゴーグル男が現れた町は、核燃料製造会社である住吉化研が落とすお金によって支えられている。一方で、ある被曝事故を機に忌み嫌われている。恨んで死んでいった者達の怨念により、会社の敷地には幽霊が現れるとまで囁かれる。後者では、この住吉化研が関係している。住吉化研のような会社でも小さな地域が社会的・経済的に存在する為には、危険だが完全に排除することは出来ない。


    重層なトリックが駆使されるタイプのミステリでは無いが、島田荘司の腕が光ったミステリだと思う。ゴーグル男が隠す怪の発散の仕方も良く、最後辺りはゴーグル男にどこか同情し、彼なりの解釈に理解をせざるを得ない。苦しめられながらたどり着いた結論は、彼の思い通りにはならなかったが、何故そうなったか?の部分の展開がキモとなっている(しっかり推理している)。


    果たして、ゴーグル男はこのあとどうなったのだろうか。殺人事件を機にゴーグル男は変わったのだろうか。殺人ものには似つかわしくないが、少しだけ前向きさを感じさせる。

  • こ、これはいまひとつだったなー。
    島田御大の特徴として、謎解きパートと怪奇パート分割、力技のトリック、社会問題の盛り込み、会話べったりで説明、若者の軽薄さ、などなどあるが、
    本作ではすべてが悪い方向に作用している気がする。

  • 原発。いま、日本人が一番真剣に考えなければいけないことの一つ。
    もちろんミステリーとして楽しめたけれども、被爆についてのシーンは結構衝撃的でした。なんとなく終了させていい問題じゃない。

  • 巧緻な伏線と戦慄の事件が、ねじれ結ばれ混線する!この上なく残酷で、哀しい真相が心を揺さぶるミステリー。

  • ★3.8くらい

    個人的に面白かった
    結局、津田の言った「三人目」とは?
    元々トリック云々より
    生い立ちとかそういう方に興味があるので
    続きが気になって仕方なく、すぐ読み終わった

    そういえばフクイチで
    長くつの中に水が入ったと報道され
    被曝したとか言われた人はどうなったんだろう

  • 煙草屋の老婆が殺された夜、ゴーグルで顔を隠した男が闇に消えた…。死体の下から見つかった黄色く塗られたピン札、現場に散乱する真新しい五十本の煙草。曖昧な目撃情報に怪しい容疑者が続出し、核燃料製造会社をめぐって奇怪な噂が。そしてついに“ゴーグル男”が出現した。巧緻な伏線と戦慄の事件が、ねじれ結ばれ混線する!この上なく残酷で、哀しい真相が心を揺さぶるミステリー。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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