蟻の棲み家 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2021年10月28日発売)
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本 ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784101033419

作品紹介・あらすじ

東京都中野区で、若い女性の遺体が相次いで発見された。二人とも射殺だった。フリーの事件記者の木部美智子は、かねてから追っていた企業恐喝事件と、この連続殺人事件の間に意外なつながりがあることに気がつく。やがて、第三の殺人を予告する脅迫状が届き、事件は大きく動き出す……。貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなる社会の暗部を、周到な仕掛けでえぐり出す傑作ノワール。

感想・レビュー・書評

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  • 探偵役が女性フリーライターの物語。
    警察顔負けの捜査力、いや取材力で事件の真相を明らかにしていきます。

    しかし、正直読みにくかった。
    盛り上がる感じでもなく、ハラハラドキドキがあるわけでもなく、貧困家庭の闇、社会の暗部を見せつけられて、げんなり。さらに犯人のくずっぷりが嫌になっちゃいます。

    東京中野区で次々と発見された女性の射殺体。
    蒲田の食品工場の恐喝事件を追っていたフリーライターの木部美智子は、恐喝事件との関連性を突き詰めていきます。
    恐喝事件は、さらに、第三の殺人をほのめかす脅迫まで発展。

    この事件に絡む登場人物たちが辛い。
    被害者の女性たちの生き方、貧困さ。
    企業恐喝に絡む者たち。暴力と虐待。
    母親や家族からはじき出された者たちの末路という感じ。

    そして、事件の真相に迫るにあたって、容疑者が二人。
    どちらかが真犯人というところで、美智子が明らかにした真相。

    という展開です。

    解説を読むと、これシリーズ化されているんですね。
    木部美智子シリーズの5作目とのこと。
    知らなかった。
    ほかの作品も読んでみたいと思います。

  • 事件は、二人の売春婦の射殺と顔を撃ち抜かれた男の死体の発見。クライムノベル。
    この犯罪に関わったと思われる男女数人を女性フリーライターが、子供時代に遡って丁重に調べる。
    主犯格と思われる青年二人の対比が、面白い。
    一人は、医師の息子で恵まれた家庭生活を過ごして、意義あると思わせる大学生活を送る男。
    一人は、未婚のシングルマザーの元、貧困、虐待、家族崩壊、そして万引窃盗から犯罪に染まる男。
    社会的に守られながら、破滅的傾向に向かう大学生。蟻の棲み家のような世界から這いあがろうと、社会を見据えてきた底辺の男。共通項は、世間を欺くこと。
    ミステリーとしては、再読しても、このフリーライターがたどり着いた真犯人は、難しいかなと思う。社会問題としての貧困家庭の現状を、同情するのでも解決を探すのでもなく、現実を追うように書いている。最後の彼女の判断は、印象的です。

  • 何か、負のパワーに引き摺り込まれそうになる!

    育児放棄とか、暴力とか…
    小さい頃にそんな環境で育ったら、どうなるんやろ?…
    そういう子どもが、大人になって、常識ないって言われるのも、側から見てるとそうなんやけど、実情を知ってるとね…
    本来は、産んだ親の問題なんやろうとは思うけど、ムリなら、国とかがもっと積極的にやらなあかんのやろう!

    何か凄い環境や。
    彼曰く
    「彼女たちに権利はない。ぼくにも、ぼくの母にも。妹はまだ、生きているうちに人権というやつをもらえるかもしれない。ぼくは、妹にそいつをやりたかった。人間として扱われる世界に押し込みたい。…命には尊い命とそうでない命があって、彼女たちも、ぼくも、ぼくの母も尊くない命なんです。…」

    人殺しなどの犯罪は、絶対悪やけど、こんな人たちに掛ける言葉は見つからん…

    どんでん返しもあり、面白かったけど、暗さは半端ない!

  • 連続射殺事件。犯人一味は捕まるがどちらが主犯なのかというところが興味深い。そしてそれを追求するフリーライターの恐るべき嗅覚と実行力には驚いた。

  • 若い女性の連続殺人事件と恐喝事件の謎を追う女性フリーライターを描くクライムノベル。

    貧困、虐待、育児放棄、格差、暴力、闇金などがテーマの社会派ミステリーは嫌いではないのですが…
    残念ながら私には合わなかったみたいで、時間ばかりかかってようやく読み終えました。
    だらだらと長くてとにかく読みづらかったし、ライター、事件関係者、マスコミ関係者、刑事の誰からも魅力を感じず、物語に没入出来ませんでした。
    辛口ですみません。

  • 2人の女性の射殺遺体が発見される。
    フリーの事件記者である木部美智子は、以前から追っていた企業恐喝事件と関連するものがあるのでは…と感じて繋がりを突き詰めていく。

    育児放棄のなか妹の面倒を見るために犯罪に手を染める吉沢末男と真逆の医者のドラ息子である大学生の長谷川翼。
    この2人に共通すべきことは一切なく、会話もなく物語は進むのだが、すべては木部美智子の凄まじいほどの行動力や洞察力(刑事をも超えている)に驚く。


    新年にはキツイほどの重苦しさの残る内容ではあったが、社会の暗部を抉り出す迫力に凄味を感じた。

  • 初読の作家さん。
    物語は、三章で構成される。
    二人の女性が、銃殺された状態で発見される事件が
    起こる。 
    フロンティアという雑誌記者が、食品会社へのクレームで恐喝され続けている事件を取材しているうちに、三人の人物が浮かび上がり、殺人事件とも関わっている可能性が出てくる。

    物語の始めは、展開が遅く読みづらいけど、事件が
    解明されるに従って、事件を起こした犯人達の背景が、リアルでのめり込んで読むことが出来た。
    どんでん返しもあって、印象に残る作品だった。

  • 面白かったけど、どんでん返しに期待しすぎると良くないかも
    読了まで時間かかってしまったな~
    ジェットコースター感はあまり無かった
    末男達の境遇は想像してみるけど、本人達のリアルとは程遠いんだろう

    ■育った環境
    貧しく半ば育児放棄の母に育てられた末男と医者の親を持ち裕福な家庭の翼
    末男は頑張ってるのに可哀想、翼は甘やかされてダメ息子というイメージになりやすい
    実際翼は信用されずに恐らく死刑、真実は公になっていない
    本人達は人生に関わることだが、雑誌やニュースを見ている人達には関係ないこと
    自分の身に起こらない限り自分もそちら側のスタンスだろうな
    悲惨なニュースを見ると一時は感傷的になるけどすぐに忘れてしまう…
    当事者には永遠に続くことでも。

    ■正しく生きる
    親も子もお互い選べないとは言うけど、産む産まないの選択ができるのは親だけだし責任はあるよなぁ
    綺麗事をいくら言ったところで正しく生きても幸せになれるとは限らない
    (そもそも正しいとは?)
    正しく生きようと頑張った分社会に裏切られたと感じたら反動は大きそう
    自分も色々なものを見てみぬふりして自分の幸せだけ考えているんだろう
    余裕があれば少しの募金でもしていい人ぶることもできるし
    映画『関心領域』見た直後なので余計に卑屈にとらえてしまう…


    色んな事情で3冊並行で読んでいる
    そりゃ読み終わらんし頭にも入らんわ(笑)
    寝ることも忘れてしまう読みきれる本に出会いたい

  • 板橋区のバラック街で売春で生活していた母と少年。少年は当てにならない母の代わりに7歳にして幼い妹を懸命に養う。少年の独白で描かれる冒頭の数ページでガツンと物語に引き込まれる。
    中野区で立て続けに起きた若い女性の殺人事件が発生。地味な大田区の弁当工場への悪質で幼稚なクレーマー事案を取材していたフリーの雑誌記者の木部美智子は、やがて独自の調査で殺人事件との関連性を見つけ出す。
    徐々に真相に近づくにつれ、モラルや正義だけでは片付けられない社会の暗部を、表に引きずり出し、読者に提示する。
    テンポ良いミステリーであり、重厚なノワールであり、そして見事なまでのどんでん返し。やられた。

  • 24年のスタートは望月諒子さん
    殺人者からの2作品目ですが共通点は犯人が捕まらずに終わるストーリーでしたー
    捕まらないけど終わる……という違和感はあるけれど犯人側にはしっかりと目的がありそれが達成されて完結する物語って言う感じ。

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著者プロフィール

愛媛県生まれ。銀行勤務の後、学習塾を経営。デビュー作『神の手』が、電子書籍で異例の大ヒットを記録して話題となる。2011年、『大絵画展』(光文社)で、第14回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。

「2023年 『最後の記憶 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

望月諒子の作品

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