駅前旅館 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1960年12月19日発売)
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感想 : 65
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101034058

感想・レビュー・書評

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  • まぁ、よくしゃべる番頭さんだこと。
    読み手に一息つく暇も与えず、旅館の裏話や色恋話を愉快に語る。

    昭和初頭のにぎやかな風情を感じられます。

  • 楽しく読まさせていただきました。

  • 堅気な商売のようだが実は江戸前の粋な世界に浸りながら、駅前旅館の番頭におさまる主人公の、活き活きとした立ちまわりを回想体の文章により表現した著者ならではの面白小説。
    まず、その語り口が「古き良き」昭和の旅館とその周辺を再現していて面白い。べらんめい調だったのが、語り調になったり、旅館の隠語がみだり飛んだりと変幻自在だ。
    ひとつの話も脱線して別の話になっていきそれがまた面白く、実はさっきの話の前振り話だったのかと戻ってくることもしばしば。なかなかついていくのも大変です。(笑)
    番頭仲間でつるんだりとぼけたりする話や、旅館の泊まり客の様子も面白いが、主人公の派手だが結局はしぼむ淡い恋愛模様もそこはかとなく彩りを加えます。数々の与太話!も微に入り細に入る説明でついつい笑みがこぼれてしまいます。(笑)
    話が唐突に終わったような感じだったが、もっと続いていても良かったな。

  • 個人的名作です。

    番頭さんや女中と、お客様のやり取りに風情があり味わい深い作品です。

    小説全体から旅情が溢れだし、旅好きでお酒好きな私としては場面毎の風景が頭の中で浮かんできました 笑

    コロナ禍のいまだからこそ家で旅行気分に浸れる小説かと思います。

  • 上野駅前にある旅館の番頭の語りで物語が進み、ひょうきんな感じでとても面白く読めました。こういう業界(?)のあるあるは好きです。
    当時の言葉と風景もとても良かったです。

  • やっぱり井伏鱒二ですね。番頭の身の回りに起こったこと、訪れた客のこと、お色気な展開に発展しそうで特に何もなかったこと。感情の起伏は乏しく、一歩引いたところから見た光景をただただ書き記したもの。落ち着いて読めます。最高でした。

  • 表紙のイラストを見て、ほのぼの系なのかと思ったら、思い切り寅さんの時代でした。

    昭和30年頃の、上野駅前の番頭さんの語りを元に、旅館の仕事や観光業界の裏の世界を興味深く描いたもの。
    映画にもなったことがあるらしいです。

    慣れた番頭さんたちの、客引きや、お客の値踏み(ふところ具合や出身地)、困ったお客のあしらい方や、夜の遊び場所の紹介の仕方やら…
    面白かったのは修学旅行の引率の先生たちで…
    番頭さん同士のお付き合いも、ライバルであり、友人でもある関係が面白い人間模様。
    まあ、根無し草でやくざな稼業な感じもしますが、語り手の生野次平さんは、一本筋の通ったお方でもありました。
    生野さんは能登の出身ですが、仲間の番頭さんたちの語り口など、江戸っ子のべらんめえ口調が残り、時代を感じました。

  • 井伏鱒二を読むと、普段の生活やいつも読んでいる本からは得られない何か微量栄養素みたいなものを得られる気がする

    駅前旅館の番頭の風俗などこちらは知る由もないのだが、いかにも本物らしくありありと描き出される。かならずしも堅気の商売ではないらしい。子供の頃にウチの母親が少し眉をひそめていたあたり、よく覚えていないのだが祭りのテキヤとか上野駅前で托鉢していた虚無僧とか、そのへんの人々に近いか。要は勤め人とは違う世界。なぜこんなものを読んで面白いのか言葉にしがたいのだが面白い

  • 上野の本屋さんで見つけた本。井伏鱒二はこんな本も書いていたんだなぁ。昭和30年代の旅館業の様子を垣間見られ、楽しく読めた。

  • 井伏鱒二なんて学校の教科書でしか
    読んだことなかったけど
    これは表紙のジャケットに惹かれて。
    字も大きく読みやすくなってたし。

    番頭さんの自叙伝みたいなおはなし。
    仕事のあれこれを追うだけで
    戦後の東京の旅館業の盛衰が楽しめる。
    品の悪い修学旅行生が
    関西方面からなのが、ひっかかるけど(笑)

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著者プロフィール

井伏鱒二 (1898‐1993)
広島県深安郡加茂村(現、福山市加茂町)出身。小説家。本名は井伏満寿二(いぶしますじ)。中学時代より画家を志すが、大学入学時より文学に転向する。『山椒魚』『ジョン万次郎漂流記』(直木賞受賞)『本日休診』『黒い雨』(野間文芸賞)『荻窪風土記』などの小説・随筆で有名。

「2023年 『対訳 厄除け詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井伏鱒二の作品

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