黒い雨 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2863
レビュー : 272
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101034065

感想・レビュー・書評

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  • 2020年8月、「黒い雨」訴訟のニュースを目にした。原爆関連のニュースであることは分かるものの、自分はそれ以上に詳しいことを知らない。

    そこで本作、黒い雨を手に取った。

    果たして、内容は事前の予想とはやや異なる。広島を、原爆を描いていることは確かなのだけど、徹底的に市民目線だ。

    大きな爆撃が起こった。今回の爆弾は何かが違う。不安感が止まない。

    そのような観察や心理描写が続く。

    それはとてもクリアな追体験だった。道端に打ち捨てられた死体の、その臭気が音を伴って匂い立つような、とても深い読書体験。

    また、これらの描写は「被爆日記」の清書という形で為される。戦後の視点から過去を振り返るという手法は、ある種ユニークだった。

    総評。とても重たくディープな一冊。けれど、恣意性を排しているので、誰もがあの時代のあの場所に降り立つことができる。

    本書の紹介文はこのようにある。

    原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨"にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。

    なるほど。「無言のいたわりで包みながら」というのは非常にしっくりくる形容。


    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%81%84%E3%81%BE%E8%A2%AB%E7%88%86%E6%97%A5%E8%A8%98%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80_%E9%BB%92%E3%81%84%E9%9B%A8_%E4%BA%95%E4%BC%8F%E9%B1%92%E4%BA%8C

  • 高校三年生の時に感想文を書く宿題を結局やらずにやり過ごしてしまった本をようやく読んだ。
    黒い雨というタイトルから凄惨な原爆投下後の広島の姿が描かれるかと思いきや、まさしくその通りなんだけど、語りの構造が、原爆投下の頃の日記を終戦後に清書するという形で間接的になっているせいか客観性が強まっているし、終戦後の生活に原爆が与えた不自由さが物語の大きな主題になっていると感じられるので、原爆被害そのものよりも、戦争に翻弄される市井の人々の押し殺された感情が浮かび上がる。とても技巧的な構造だけど文章は平易で明るさと鷹揚さのあるもので、広島の惨状がとてもよく伝わりつつもあまり暗くならないのが不思議に感じるほど。とはいえ決して軽いわけではなく、日常に入り込む悲劇というのは実際はこのようなものなんだろう。広島で起こったことと井伏鱒二の技量の双方に恐れを抱く。

  • 課題で読まされた本
    描写がリアルで読み進めるのがしんどかった
    一生のうちで読んでおきたい、知っておきたい話ではあるけど中学生のうちに読むのは少し辛かった……

  • 広島の原爆の日々とその時の人々の暮らしが、とても生々しく再現されている。著者の表現力は凄まじい。ことばが古くて読みづらいときもあったけど、途中からその世界に引き込まれていった。
    戦争ものだけど、ただ感傷に訴える物語ではなかったのが救いで、冷静に読むことができた。星4つに限りなく近い3つ。

  • 日常に突然原爆が降ってきたら…こういうものなのかもしれない。とても淡々としていて、悲しい!怖い!とならないところが、ある意味リアル。この正常性バイアスが人の心を麻痺させるのだろうな。良くも悪くも。
    人間て簡単に死んじゃうんだな、とか、人間て案外簡単に死ねないんだな、とか、どちらも真実だなとしみじみ思う。

  • 再読。『この世界の片隅に』の戦時中のご飯のくだりが好きでなんとなくこちらのお話の奥さんのメモを思い出して読み返してた。この淡々とした語り口いいなあ。元になってる『重松日記』も前に買って積んであるので読みたいね

  • 爆弾は光った。黒い雨が降った。一部の地域でのことのようだ。被爆日記の清書という形で、体験(事実)が経時的に語られてゆく。延々と続く被災の記述は、ひどくなるばかり。
    人類の歴史において、原爆が投下されたのは、日本だけである。その後の数多くの戦争が起こっているが、この爆弾が使われることはないだろう。それ程に、非人道的な行為である事を知るべきである。一時の破壊力よりも膨大であるのだが、命あるものずべてに、後世への影響が大きい。
    爆発時の描写は、想像を絶する。そのすぐあとのキノコ雲の不気味な描写、言葉で伝えること、文章表現が追いつかない感じを受ける。黒い雨とは何であったのか?日々経過するごとに、人も街も、死んで行く。一日がとても長く感じる。被爆者は、爆弾がどういうものであるのか、噂により、日々重大なものであったことが、刻々と記されている。
    被爆者を治療する場面も出てくるが、なんと言うお粗末さであろうか?物が不足していては、人命を救うことは出来ない。しかし、その反面、民間治療が、応急手当てが、誰でも出来るようなので、感心した。戦争終結前の国民の貧しい生活状況が良く分かる。(物が)何もなくなってっしまうと、欲がなくなる?生きることに希望をなくさなければ、助け合えるだろう。共助が、上手に出来ている。

    米国は、このような被害を予測していたのだろうか?人道を逸脱する行為は、許されるはずはない。好戦的な国民&民族は反省すべきである。
    もはや、戦後70年、体験した世代は少なくなり、記憶に残る人も多くはない。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      評価が低いですね。
      小説そのものが?題材が?
      気になりました。
      こんにちは。

      評価が低いですね。
      小説そのものが?題材が?
      気になりました。
      2013/08/19
    • だいさん
      vilureefさん
      こんにちは。
      どちらも、ですね。
      自分に何が出来るか?考えると、意気が下がってしまいます。
      vilureefさん
      こんにちは。
      どちらも、ですね。
      自分に何が出来るか?考えると、意気が下がってしまいます。
      2013/08/19
  • 65年目の原爆の日を迎え読んでいます。
    やっと三分の一を読み終えました
    読むのがつらくなる場面も多いです。

    しかし、私達が後世に伝えていかないとね。
    唯一の被爆国であり、被爆都市ヒロシマに生きている私としては

  • あの惨劇を
    雨は洗い流してはくれなかった。
    むしろ雨があがってからが惨劇だった。

  • 残酷な、悲惨な描写はあるのに、そこに作者の感情・感傷は入り込まず、1日1日が続いていく。そのことが原爆投下の結果をまざまざと見せつけてきて、なによりも苦しい思いを感じさせる。
    何が起きても、とにかく毎日を生き切るしかないのだと、きっと原爆や戦争だけでない世の中の不条理への人の在り方を痛感させられた思い。

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著者プロフィール

本名・満寿二。一八九八年(明治三十一)、広島県に生まれる。早稲田大学、日本美術学校を中退。一九二九年(昭和四)、「山椒魚」「屋根の上のサワン」で文壇に認められる。三八年(昭和十三)、「ジョン万次郎漂流記」により直木賞を受賞。「鯉」「さざなみ軍記」「多甚古村」「丹下氏邸」「本日休診」(読売文学賞)「遙拝隊長」「集金旅行」「漂民宇三郎」(芸術院賞)「武州鉢形城」「黒い雨」(野間文芸賞)などの小説の他、詩集や随筆・紀行も数多い。六六年(昭和四十一)、文化勲章受章。九三年(平成五)没。

「2018年 『七つの街道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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