- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101034102
作品紹介・あらすじ
著者は知人の家で池の中にかきつばたの狂い咲きを見た。が、見たものはそれだけではなかった。水面には女の死体が浮いていたのだ-終戦時の混乱を描いて鬼気迫る「かきつばた」。早稲田の貧乏学生の著者は田舎の兄に送るつもりだった無心状を、あろうことかレポートと取り違えて敬愛する師・吉田絃二郎に提出してしまった-ほのぼのと心なごむ青春回想記「無心状」。名品全15編。
感想・レビュー・書評
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短編集。いろいろな<井伏鱒二味>が楽しめる。
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おそらく再読。
読んだことないのもあったから、短編なので他のと重複してたのかも。あるいは忘れてしまっているのか。
小品集。太宰も出てくる。なんなのだろう、この雰囲気。これが明治の名残なのかな。 -
4位
A・M・ツウェイバック『ナタリーの朝』(角川文庫)
安い古本で思わぬ収穫。アメリカのさえない女の子の恋愛と自立の物語です。
今だったら映画「ゴーストーワールド」に近いかも。テンポもいいし、ぐっと感情移入しながら読みました。
(でも検索で出なかった………)
5位 井伏鱒二『かきつばた・無心状』(新潮文庫)
こちらも古本で大当り。内容はもちろん、小沼丹の解説がまた、なんかのどかで、いいんですよ。 -
2011/1/9購入
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井伏鱒二の短編集。
いずれも秀逸な作品ですが、
中でも印象深いのが、
「おんなごころ」。
自邸で結婚式をひらくほど、
目をかけた太宰治の無理心中直後。
この直後の井伏を初めとする人間模様を描いた作品です。
太宰は井伏鱒二にこう手紙を送っています。
●「うんと永生きして、世の人たちからも、立派な男と言われるように、忍んで忍んで努力いたします」
しかし、この10年とたたない間に、
太宰は身投げし遺骸で見つかります。
タイトルのごとく、太宰の周りには、
母性をくすぐられた女性が幾人も登場します。
そして数回の無理心中。
中には、すれ違いで、少しの恋を傾けた、
片思いの女性もいたようです。
それも太宰の死後に。
違う女性に出会っていれば、
太宰も穏やかに最期を迎えられたかもしれません。
出会ってしまった女性一つで、
「すっぱりした、気持ちのいい男」と、
井伏が死後に形容した男の人生が、
がらりと変わっていたかもしれない。
●「ひとえに「おんなごころ」といっても、人によって現れ方がちがっている」。
女性の思いの不思議さを、
太宰の死に透かして見た印象でした。
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他にも、
うぶで愚かな若者を許容する、大人社会の清々しさと、
その中で、あがきながら道筋を見つける
若者の無垢な力が、
キレイに描かれた「無心状」などなど、
素敵な短編がたくさんです。