1R1分34秒 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2021年11月27日発売)
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本 ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784101034416

作品紹介・あらすじ

デビュー戦を初回KOで華々しく飾ってから、3敗1分けと敗けが込むプロボクサーのぼく。そもそも才能もないのになぜボクシングをやっているのかわからない。ついに長年のトレーナーに見捨てられるも、変わり者の新トレーナー、ウメキチとの練習の日々がぼくを変えていく。これ以上自分を見失いたくないから、3日後の試合、1R1分34秒で。青春小説の雄が放つ会心の一撃。芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 自分の心の葛藤を、下手に綺麗にせず葛藤のまま書かれた文が多く、印象に残った。
    爽やかなスポーツ小説といったものではないが、登場人物たち全員に対して、わかるよ、頑張ってくれ、報われてくれ、、と思わずにはいられなかった。

    170ページ程度だが、描かれている期間も1年程度(?)と短く、密度の濃い話だと感じた。

  • 初読みの作家さんで芥川賞受賞作。
    正直、ページ数の割に読むのに時間がかかるくらい引っ掛かりの多い作品でした。

    ボクシングの描写はリアルに描いているけれど、スポーツ系と言うよりも、さらにその奥にある人生の葛藤や悩み成長を濃く書かれている感じ。

    好きで始めたボクシングに対しての感情は、虚無感や目的を見失ってしまう今の自分の生き方にシンクロしてくる感じがあった。だから、この作品がスッと読めなかったのかな。

    読了短歌

    窓から
    見える枝のカゲ
    伸びる様子は
    葛藤なのか
    成長か

  • 負け越してトレーナーに見放されたボクサーが、新しいトレーナーと共に次の試合に向けて、と言うストーリー。話自体は単純だが、主人公はボクサーとしての自分を見失っており、それを取り戻すというのがある。スポーツ小説のようで純文学という感じ。

    場面の切り替わりが独特で、少し戸惑ったが面白かった。ページ数も短いのですぐに読める。

  • ウメキチに出会ってから加速的に面白くなった!
    主人公が自分自身、ボクシング、勝利に
    真正面から向き合っていく姿がかっこいい。
    中途半端じゃない真剣だからこその恐怖。

    ウメキチも、ガールフレンドも、友人も
    最高だったなぁー!
    河辺で友人の前でシャドウするシーンと
    対戦相手が決まってガールフレンドに恐怖を吐露して次の日、別れを告げるシーンが好き!

  • かっこいい、とは言えない負け越し中の4回戦ボクサー。3回TKO負けを喫した前戦後、トレーナーが代わり、練習内容も変わる。トレーナー自身も負けが込んでいるプロボクサーで、彼もその先の自分の勝利ために指導を担当する。
    主人公は相手を研究するうち、勝ちたいという思いよりも相手そのものの存在が大きくなり、夢の中で友達になるという性癖を持つ。それでも今回は、階級も経験も上の相手にスパーで負けたり、試合が近づくにつれて減量が激化したりする中で、怒りや涙といった闘争心につながる感情がジリジリと次第に燃えていく姿に、主人公の人間らしさを見た。
    スポーツ小説ではなく、どちらかというと人間の内面を描いた叙情的で、観念的な文学作品だった。

  • ボクシング経験者としては共感できる部分も多くあった。勝敗どうこうよりもその道程を人間臭く描くのは純文学らしい。

    ボクサーとは純粋な生き物だと思う。曖昧な世の中に対比させるとなんとも悲哀を感じる。

    生きているのか生かされているのかわからなくなる。そんな感覚を思い出した。

  • 久々に、引き込まれる作品。一般人にとっては想像もできないボクサーの日常。その感情や、こだわりやこだわりのなさや、執着や無頓着やさまざまなものがリアリティを持って、生きている感じがしたんだと思う。文章もなんだかボクサーのダッキングを思わせる流れ方で、よかった。

  • 町屋さん、芥川賞受賞のボクシング小説

    プロボクシングの試合って、独特だ
    何ヶ月も準備して、命を文字通り削って試合をして、それまでの準備の全てが、たった数分の試合で試される
    だからこそ、負けの記憶は全ての否定として残る
    だからこそ、勝負に上がることはとても怖い

    その全てを、曖昧化した主人公の一人称で描き切った筆力
    気がついたらのめり飲まされるリズムよい筆致
    ウメキチや友達との奇妙な関係の魅力
    なにより、「ぼく」自身の弱さと強さ
    これはボクシングなんてやったこともない読者を問答無用でリングにあがらせ、己の生き方を問わせる(こういう比喩をすると友達に怒られる!)暴力的な作品
    なんと曖昧で鮮やかなんだろう

  • 図書館で見かけ、そういえば読めてなかったなと思い読了。ボクサーを題材に、試合に対する負の感情に比重を置いて描かれた作品。主人公の剥き出しの、生身のままの言葉が多く、それがボクサーとしての理想像とのギャップを写実的たらしめていたのが印象的。でもそんなに好みじゃなかった。こればかりは完全に好みの問題( ; ; )

  • 人の心の中の渦巻いている感情をうわぁ〜!っと書き切ったような本だと思った。
    だからわりとボクサー用語とか関係なく難しい文章が自分の中であった。

    主人公の周りの人達がなかなかに面白い人達だなと思った。

    好きだと思っていたことが本当に好きなのかわからなくなるのはわかるから、感情は移入した。
    けど、自分と違う部分は多々あるのでそこも面白かった。

    人に迷惑かけないで生きるのは無理なんだから、迷惑をかける、というより人を気にしない時期があってもいいんじゃないかなと思った。

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著者プロフィール

1983年生まれ。2016年『青が破れる』で第53回文藝賞を受賞。2019年『1R1分34秒』で芥川龍之介賞受賞。その他の著書に『しき』、『ぼくはきっとやさしい』、『愛が嫌い』など。最新刊は『坂下あたるとしじょうの宇宙』。

「2020年 『ランバーロール 03』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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