マツ★キヨ: 「ヘンな人」で生きる技術 (新潮文庫 い 75-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101035277

作品紹介・あらすじ

茶の間で引っ張りだこの人気タレント・マツコと、学会の主流になぜかなれない無欲な生物学者キヨヒコ。互いをマイノリティ(少数派)と認め合うふたりが急接近。東日本大震災後に現れた差別や、誰をも思考停止にさせる過剰な情報化社会の居心地悪さなどを徹底的に話し合った。世の中の「常識」「ふつう」になじめないあなたに、「ヘンな」ふたりがヒントを授ける生き方指南。

感想・レビュー・書評

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  • LGBTQの本棚から
    第32回「マツ☆キヨ」

    今回紹介するのは、マツコ・デラックスさんと池田清彦さん(評論家)の対談本です。
    出版されたのが東日本大震災のあとということもあって地震や原発関連の話もありますが、様々なマイノリティのことや、色々な視点から見たマイノリティについて知ることができます。


    まずは「マイノリティでも他のマイノリティを差別する」ということ。
    これは痛いところをつかれたという感じで、僕も身に覚えがあります…。
    自分より下の人間をつくって安心しようとしたり、優位に立とうとしたりしてしまうこと、ありますよね。
    自分がセクマイとして色々な問題に直面したり辛かったりした経験があるはずなのに、それでもほかのセクマイを差別してしまう。
    自分を守るためにしているのかもしれないですが、悲しいことですね…。

    マツコさんは『どうせ差別しないと生きていけないんだ、と居直ってしまったら、自分がマイノリティであるがゆえに、マイノリティを攻撃して安心するという、回避行動的な本能がうんと強く出てしまいそうで。そうなるんじゃないかという恐怖とつねに闘っているし、いつも意識している。』と語っています。


    次は「少子化問題の間違った観点」
    セクマイ(特にゲイやレズビアン)の多くがセクマイに対して否定的な人に言われるのが「同性愛は生産性がない」という言葉。そう言う人たちはだいたいこの言葉と一緒に少子化問題について語ります。
    でも、少子化問題を解決するには同性愛者を非難するのではなくてもっと他に大切なことがあるはずなんですよ。
    マツコさんは『現状として、たとえばシングルマザーでもどうやって子どもを育てていくかとか、離婚した女性が仕事をしながらどうやって子どもを育てていくかということが、もっと切実な問題でしょ』と言っています。

    僕は「生産性」を問われるたびに、「生産性って何?」と思います。
    異性愛者はみんな生産性を考えて恋愛とか結婚をしているんですか?
    「子どもを作るために恋愛するぞ!」って思っているんでしょうか?

    もし「生産性」という言葉をセクマイに投げかけたことがある人がいるなら、一度考えてみてほしいです。


    次は「生きづらさの原因」
    池田さんは『人が生きづらいと思うのは、自分が本来こうしたいということと、世間が自分にどんな役割と与えてくるかということの齟齬が大きいときなんだよね。』と語ります。
    セクマイが悩む原因をいろいろ見ていると「社会的に普通なこと」に合わせようとする自分と、ありのままで行きたい自分との差が苦しみになっているということがあると思います。
    「異性愛が普通。同性愛は異常」「男性・女性らしく生きなければ」と小さいころから言われたり感じたりするのが残念ながらこの国の悲しい現実です。
    長年生きてきた中で凝り固まった価値観を壊すことができたら、生きやすくなると思います。
    それには勇気が必要だけど、ギリギリで生きている人や自殺まで考えている人は、1度だけ勇気をだしてみたら新しい世界が開けるかも?
    そんな勇気をくれる本でもあります。



    最後はセクマイとはあまり関係がないのですが
    「全会一致の怖さ」がかなり心に残りました。
    議会なんかで「全会一致で決定」って聞きませんか?
    それって、誰も反対者がいないってことなんですよ…。
    よく考えたらそれってとても怖いことじゃないですか?
    全員が真剣に考えた結果の一致ならいいですけど、なんとなくそれっぽい意見に流されてよく考えず「それでいいよ」という結果が全会一致だとしたら…?

    日本人の気質として空気を読む、同調志向というのがありますが、これが暴走すると第二次世界大戦中の日本みたいになっちゃうんですね。

    でもこれを逆手にとって「セクマイは異常じゃない」という意見を浸透させられれば、現状は大きく変えられるのかもしれません。


    何か所かかいつまんで紹介しましたが、この本は「自分で考えること」の大切さを教えてくれる本だなと感じました。
    セクマイ関係の本としても、生き方や考え方を広げるための本としてもオススメです!

    セクマイについての本は漫画が圧倒的なのですが、お堅い学校には入れられないこともあると思います。
    今回紹介した「マツ☆キヨ」は対談本で中身はすべて活字なのでそういったところでも入れやすいのではないでしょうか!
    また、対談形式は説明形式の本や小説が苦手な人にも読みやすいかと思います。
    ぜひ図書館にいれてみてください!


    2017年12月18日

  •  解説の澤口俊之さんが以下のように書かれている「本書を読むことで、おそらく全ての人がほっこりしたすがすがしい気持ちになったりすると思うが、その理由は『変人の普遍性』にあるはずだ。誰だって『変人』なのである。それが生物としての人間の普遍性である。」と…

     一見“自由闊達”に生きているように見えるマツコ・デラックスさんが、マイノリティ(少数派)の中のマイノリティであり、そのために逆に身につけた社会を客観的に見る視座から池田清彦先生とキレのある対話を繰り広げている。二人の間に、同調があるため、若干”暴走気味!?”であるが...

     マイノリティとしての扱いを受けるからこそ見えるものがあります…それはマジョリティの視点よりも社会を客観的に捉える目線です…マイノリティの視点には、もしかしたら私たちが感じる違和感を解かす力があります。なぜ私たちが違和感を感じるのか、一見、違和感を感じていないように見える人たちが、心の壺の底に、何を沈めているのかを知る力があります。

     私は、誰もが心身ともに男と女に生み分かれてくる!?と思っていたのですが、人が誕生する極めて神秘的なプロセスを考えると、それはある意味、奇跡であり、そうではない人がいることは何ら不思議なことではないのですね。そして、一見、普通に見える私だって!?変人である可能性は否定できないわけで、逆にそうである前提で、周囲の人々と調和をとり、信用・信頼関係を築いていかなければならないのだと思いました。 見かけによらず良書ですヾ(- -;)

  • 池田清彦とマツコ・デラックスが2011年、震災直後に行った対談。「震災で見えた差別のしくみ」「「情報化社会」の少数派として」「誰がマイナーで、誰がメジャー?」「マイノリティの生きる道」の四章構成。

    自然体で生きる両氏の飾らないキャラが共鳴している。

  • お二人とも自由奔放にできている。だから幸せそうだ。なので対談がおもしろい。いつも考えてるのだな、というのが伝わってくる。「他人のことを評価するのは、それによって自分に見返りがあるからだよ。」単刀直入である。2018.11.12

  • マイノリティなマツコ・デラックスさんとこれまたマイノリティな池田清彦先生のマイノリティな会話がとても面白かったですし、ためにもなる本でした!
    ぜひ読んでみてください!★×10ぐらいにしたいぐらいです。

  • 大変面白かった。
    最近、読書に集中できなくて困っていたのだけど、内容が面白い上に読みやすくて、久々に没頭できた。

    私は賢い人が好き。
    自分では到底考えつかないことを教えてくれるから。
    だから読書が好きだし、聞くことが好き。
    賢い人は自分の生きやすい生き方を知っているから、私もそうありたい。
    たとえ賢い人にはなれなくても、自分の生きやすい方法くらいは自分で見つけたいものだと思う。

    p82「やり取りをすることによって自分や相手が変わることが本来のコミュニケーション」
    という言葉は、心に留めておきたい。
    変わりたくない、ということは土台自信過剰が招いた本末転倒な希望に過ぎないのだろう。
    生きるということは、変わり続けることと同義に違いない。

  • この2人、好きやわ〜。

  • 『ホンマでっかTV』でおなじみの二人の対談本です。
    私も世間ではどちらかと言えば、お二人と同じマイノリティーの側の人間だからか、お二人の意見には共感できました。
    とにかく、世の中の一般的な空気はどこかおかしいし、信用できません。
    だからこそ、お二人のように真っ当なことをおっしゃる方がいることに安心できます。
    くだらない世間話のように、社会問題について、笑いも交えて語っているところがいいです。
    解説で澤口先生もおっしゃっていますが、お二人は自他ともに認めるマイノリティーなだけに、人の気持ちの機微に敏感な優しい人たちだと思います。
    行間から温かな人柄が伝わってきます。

  • 本質を捉えようとすれば、これくらい斜に構えることも必要なのか、と。

  • 面白いっちゃ面白いんだけど、まあそれ程ぶっ飛んで無いというかある意味想定内と言えば想定内な感じかなあ…。ちょっと「マイノリティ」にトピックがとらわれ過ぎちゃってるように感じる部分が所々あったかな。

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著者プロフィール

池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年生まれ。生物学者。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田清彦の作品

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