世間のカラクリ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2016年10月28日発売)
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  • 本 ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101035307

作品紹介・あらすじ

栽培生物ならいいが野生動植物を食べるのは良くない、という倒錯。100年後の予測ばかり報道して科学的事実を報道しないマスコミ。健康診断の基準値変更で一気に増えた患者。がんの検診、手術、抗がん剤治療の強要――。政治的強者や利権で儲ける輩が言い続ける定説を、そのまま信じていいですか。人気生物学者が、不都合な事実の数々を示して鮮やかに切り込む、痛快サイエンス時評。

感想・レビュー・書評

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  • この本に書かれる主張が受け容れ易いか否かは置いておくが、少なくとも、考えさせられるテーマやキーワードが豊富である事が特徴的だ。著者は、ホンマでっかTVでよく知られる池田先生。流石に博識。テーマに沿った考察に用いる引き出しの中身は多い。しかし、本著は所謂評論なのであって、いち考え方でしかない。だからこそ、いや、私ならこう考えるが、とひとりでに思考が進み、同意したり反証しようとしたり。それがまた楽しい所作にもなるが。

    例えば、アモク・シンドローム。自尊心を傷つけられた人間が自己破滅的になり、自分は死んでも構わぬが周りも道連れだと、大量虐殺に及ぶ。男にしかいないらしい。しかし、これって誰しも実行はせぬが想像はした事のある衝動では。当然、理性で制御し、破壊衝動は妄想で終わる。だからこのような事件を起こす人は、理性を抑えらなかったという意味で、ある種の病人として決めつけもできよう。だが、理性が外れるきっかけを査定するのは難しい。似たような話を挙げれば、男の人が、あの子を自由にできたらどんなに良いだろう、と異性に感じる欲求。実行への移し方が強引になればなるほど、犯罪性が高まる。犯罪性が高まるから、理性で抑制する。理性と抑制のバランスは、実は、打算によって規定される。例えば、密室で2人なら、誘惑されたからOK、大人しそうだから、など。人殺しも、自分が死ぬなら罰を受ける肉体は最早ないわけだから、この際、何人殺しても大丈夫だろうと。この手の発想は、巧妙に理性のタガを外しながら、理性で計算しているのだ。治安を維持するには、自己を保存する価値を見失わせない事こそが重要だ。

    本の後半は、ガン治療論についてだ。こちらも考えさせられる。しかし一冊終えて最も感じ入ったのは、趣味に生きることについて。世界を跨いで虫捕りをする、というのはアウトドアに狩猟や宝探しの目的、海外旅行の楽しさなんかも兼ね備えて楽しそうだなあと。

  •  『人間、このタガの外れた生き物』がとても面白かったので、紀伊國屋書店(流山おおたかの森S・C)でフィーチャーされていた『世間のカラクリ』を買いました。本書はメールマガジンに連載したエッセイを抜粋して編んだものとのことで、一貫したテーマがあるわけではありませんが、池田清彦先生の視座がしっかり固定されているので、安心して読むことができます。良くネット上の情報は信憑性がないと言われますが、マスメディアが流す情報も、世間を歪めて見せている可能性があるので、私たち市井に生きる者は、騙されないように注意が必要ですね。

     私は、テレビや新聞などのマスメディアが報じる情報はもちろん、まるでバラエティのような情報番組の実験結果も信じてしまうようなところがあるので、世間をコントロールしようとしている組織にとっては、とても都合の良い国民の一人なのだと思いますが、池田清彦先生の著書と出会ったことを切っ掛けに、もう少し社会を客観的に見るようにしたいな。

     理由の分からない世間の慣習に従う必要はないと思いますが、冠婚葬祭の場合は相手もあることなので、従わざるを得ないですよね。難しいです。

     生物学者である池田清彦先生の著書と出会ったことにより、新しい視座を手に入れることができましたが、今年も目標100冊で読書に励むことによって、より高いバードビューから世間を俯瞰できるようになりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

  • この本も、ホンマでっかというスタンスで楽しむのがよい。
    結構的を射ている気もするが。

  • 肺がんのくだりが秀逸でした

  • 天邪鬼な考えが面白い。

    大麻がGHQの指図で違法になったのを初めて知った。
    大元のアメリカは合法化される州が増えてるのも皮肉。

  • 世間の常識に意見する書。癌の話は納得いくところがあるが、二酸化炭素は減らした方がいいと思う。2017.7.22

  • 個人的見解ばかりで内容がない

  • 小保方さんの話は驚きです

  • 日本人の悪しき特徴として,決定事項は決して覆さず唯々諾々と遂行する,とあるが,そもそもその前段階として,自分で決定したくない,自分で考えたくない,自分の頭を使わ(え)ない,という反知性主義的挙動が島国村社会文化から醸成されてしまい,それが民族としてのマジョリティになっているのではあるまいか.日本人文化とは別の文明世界を体験している人は,その環境を客観視する視点を持つことができるはず.虫大好きな人たちに,この視点があるのは,虫という別な文明を小さいときから見ているからに他なるまい.

  • 前半はさすがの博覧強記に基づく主張たちで、読みながら納得して、”あ、これやっとかんと”みたいな場面もしばしば。ただ、後半の近藤擁護論に基づく展開みたいになって以降、ちょっと”う~ん”って思えてしまいました。なんで、トータルで星4つ(前半5、後半3)。ガンもどきは確かに存在するんですけどね。

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著者プロフィール

池田 清彦(いけだ・きよひこ):1947年東京生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。早稲田大学、山梨大学名誉教授。専門の生物学分野のみならず、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野で100冊以上の著書を持ち(『構造主義科学論の冒険』 講談社学術文庫ほか)、フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」等、各メディアでも活躍。

「2024年 『老後は上機嫌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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