カンヴァスの柩 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036113

感想・レビュー・書評

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  • ガムランの音楽が鳴り響く南国の楽園、バリ島を旅するアルコール依存症の女、ススと、現地の画家ジャカとの情愛の物語が、著者ならではの多彩な比喩を用いて描かれている。湿気と熱を帯びた異国情緒の贅沢な味わいは日常の感覚を麻痺させるほどにクセになる。主人公に自分は重ねられなくても現地のカフェで働く従業員にでもなって二人の行く末をみてやろうか~という心持ちになった。愛読していた当時はまだ若かったので、こちらを読みまだ見ぬ異国のバリ島に魅せられたものだ。
    表題作の他「オニオンブレス」「BAD MAMA JAMA」からなる短編集は時間を忘れて一気に読めるもの。

  • 女の人の描写が魅力的すぎて、どきどきした。
    三つ短編があって「オニオンブレス」と「BAD MAMA JAMA」もとても良かったけど、最後の「カンヴァスの柩」がすごく好きだった。

  • 『オニオンブレス』
    パートナーの口の匂いにうんざりしてバーのトイレに落書きする女。その落書きに返答を書き込む男。男女共、自分の生活に嫌気を感じ、メッセージ交換に喜びを見出していた。
    トイレでメッセージを書き込んでいるところで鉢合わせた男女、彼らはお互いに嫌気を感じていた夫婦だった。

    『BAD MAMA JAMA』
    マユコは夫を愛しているけど、キースに恋してしまった。彼と話したいけど、離婚はしたくない。だから、友人女性にキースを紹介した。彼らは恋人になったが、マユコとキースは惹かれあっていく。
    友人女性にも夫にも内緒で、キースと寝てみたらあっという間に気持ちが冷めて、マユコは愛する夫のところへ戻っていく。

    『カンヴァスの柩』
    熱帯の島で絵を描く青年、ジャカ。日本からやってきた女性、スス。
    奔放すぎるススに振り回されながらも、ジャカは心身共に満たされていく。

    ---------------------------------------

    貞操観念や倫理観から解き放たれた世界の話だなあ、と感じる。愛だの恋だのとそれらしい会話を交わしたとしても、結局はセックスなのだった。

    結婚していようが、友人のパートナーだろうが、そんなの関係ねえ! セックスすんだよ! これがうちらの恋愛なんだ! 文句あっか!
    そんなふうに言わんばかりの情欲。猛烈な勢い。

    思春期の恋を第一発目の発情期と言い切ってしまう感覚に凄みを感じる。

  • でもわたしが女の子だからおもしろいのかもしれない疑惑です。
    好きな人に、なにか、貸して、っていわれて鞄の中に入ってたこれをとっさに貸してしまって、なんか、どうやら、少ししくじったらしかったです。狙いすぎも、含めて、かわいい作品

  • 3作の短編集
    僕は勉強ができない
    が大好きだがそれよりも前の作品

    僕は勉強ができないが、丸く見えるほど尖った表現
    なのに伝わる
    そして響く
    カンヴァスの柩は特に、どうとでも取れそうなのに結局伝わることはひとつな気がして表現の面白さを感じる

  • 短編3作を収録しています。

    「オニオンブレス」は、おたがいのことに愛想をつつあるシドニーとネットの夫妻が、クラブのトイレの落書きを通じて、それぞれ相手に知られることのなかった心の欠如を埋めようとする話。

    「BAD MAMA JAMA」は、デイヴを夫にもつマユコが、キースという男に恋心をいだいてしまう話。マユコの親友のジュンコが彼女の恋のアドヴァイザーとしてストーリーを統制する役割を演じているのですが、マユコがいささか無責任にみずからの運命をジュンコのアドヴァイスにゆだねてしまっているように見えて、著者の作品の主人公にしてはいささか魅力に乏しい女性に感じてしまいます。

    表題作である「カンヴァスの柩」は、日本からバリに旅行にやってきたススという女性と、地元の画家であるジャカとの恋物語です。いささか奔放なススに振り回されながらも、バリでの生活と文化を愛するジャカが印象にのこっています。

  • 山田詠美の描写力が一番よく出ているのがこの作品なのではないかと思っている

  • 結婚退職したスタッフが職場に残していった本。
    '96.2読了。
    「BAD MAMA JAMA」が良かった。

  • これは女性視点の感性、特に性と生が強く描かれている。女性の感性や本質は強く表現されているが、単に自己顕示欲が強く、自己中心的な主人公たちを描いているのと紙一重だとも感じたかな。
    短篇集で、どの作品も忘れた愛をもう一度探したい、確認したいという気持ちが伝わってきたけど、それぞれ男性に対する愛情表現や男性視点から女性に対する感情や言動の描き方が、ちょっと男性蔑視にすら感じられるほど男が単純に描かれている気がした。
    男性が女性に対する愛情表現はセックスと論理的会話だけのようなイメージを受けるほど。逆にあまり男性のこと理解してないのかなと思わせる。
    作者の恋愛観の偏見が強すぎて共感できなかったかな。期待して読んでみた作品だけにちょっと残念な気持ちが残った。

  • 短編3つからなってる作品。

    『オニオンブレス』は、クラブのトイレの落書きのやりとりをきっかけに、本当の愛をさがす女と男の話。
    私、これがこの短編の中で一番好きだったな~。
    『青い鳥』の恋愛版って感じ。最後に「やられた~」って思わせてくれた。
    夫婦っていうのは、いつのまにか空気のような存在になっててお互いを見失うことがあるけど、でも何があっても結局は求めてるものが一緒なんだな。いろんなことを乗り越えそれぞれ感じて、お互いを分かり合えたときに本当の夫婦になれると思う。
    まぁ、しかし冒頭の放尿のシーン。放尿がこんなにもロマンチックなものだとは思わなかったよ~。と思わせる筆力。すごいわ。

    『BAD MAMA JAMA』は、既婚者の女が久しぶりに恋をする話。
    これは、いわゆる「Amy Style」な話。日本人妻と米軍人の旦那。そして米軍人の彼。
    ちょっともう、こういう話は飽きてきた。。。
    私も米軍人の旦那もってますが~、なんか違う人種の話に聞こえてしまう。
    んー、こういう話ばかり書かれてしまうと、変に米軍の夫婦に対して偏見もってしまう人も出てきちゃうじゃないかな~。って思う。。。ウチも私のまわりの友達も、いたって普通な夫婦。たまたま結婚した人が米軍人だっただけなんだけど。。。
    「黒人が一番ロマンチストで。。」とか言う書き方もなんかひっかかる。。。ロマンチストなのは、「黒人」だからじゃなくて「その人」だからなんじゃない?って。思っちゃうんだけど。。。
    まぁ、それが主人公のマユコの考え方なんだけど、いまいち共感できなかった。

    『カンヴァスの柩』はバリを舞台にした日本人のアル中な旅行者と地元の男の子の話。
    これは、なんとなくファンタジーな感じのする話。文体が詩のようにすごくキレイなんだな~。でも、私には主人公のススを理解することができなかった。。。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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