夫婦善哉 決定版 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 338
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101037028

作品紹介・あらすじ

惚れた弱みか腐れ縁か、ダメ亭主柳吉に懸命に尽くす女房蝶子。気ィは悪くないが、旨いもん好きで浮気者の柳吉は転々と商売を替え、揚句、蝶子が貯めた金を娼妓につぎ込んでしまう。新発見された「続夫婦善哉」では舞台を別府へ移し、夫婦の絶妙の機微を描いていくが……。阿呆らしいほどの修羅場を読むうちに、いとおしさと夫婦の可笑しみが心に沁みてくる織田作之助の傑作六篇。

感想・レビュー・書評

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  • 夫婦善哉と続夫婦善哉の他に短編が幾つか収録された本。

    表題作の夫婦善哉・続夫婦善哉では、大阪の貧しい商人の娘蝶子が芸者になり、懇ろになった妻子持ちの客との貧乏暮らしの日々が描かれる。

    とにかくとにかくもう、夫になった柳吉がどうしようもない放蕩ダメ亭主。理髪用品、果物、関東煮、カフェ、別府に移ってまた理髪用品、と色々お店をやってたくましく生きているが、ほぼ毎回以下のパターン。

    節約したり金借りたりして開業資金を作る→店がんばる→亭主が事業に飽きる→芸妓に散財→亭主を折檻・数日逃亡→店畳む→金貯める&借りる…のループもの。読んでてああああああああああまたやった、という、感想がため息と共に浮かんで消えていきます。

    よくもまあこんな相手に愛想尽かさないもんだなぁと思いつつ、多分お互いがお互いにしかハマれない超稀有な関係なのかもしれない、と前向きに捉えることにしました。

    こんな夫婦は多分現代にはなかなか成立しなさそう。
    「昔はおおらかな良い時代だった、大阪下町はやっぱりなんだかんだ人情味溢れてやがるぜ!」みたいな美談着地は自分は到底できないなぁと思った。

    六白金星
    妾の子供だと分った兄弟が成長するにつれ少しずつ特に弟の楢雄が壊れていく少し不気味さを感じるお話。救いはないまま終わる。

    アド・バルーン
    じわっと良い終わり方。継子やら妾の子やら、一筋縄ではいかない育ちの子が成長していく過程を描きがち。しかも良い話になるとは限らず、むしろ不幸や理不尽が横行する。でも最後まで読みたくなるし日々を大切にしようと思える、不思議な作風だと思いました。

    世相
    織田作之助の戦時中〜戦後辺りの自伝?なのかな。本当なのか作り話なのか、前提知識が無いから分からないが、普通に面白かった。下町の貧しさでドン詰まった市井の人々を描くのが得意な作家なんだなーということはよく分かった。

  •  文章で読んだ。そしてラジオで聞いた。音にして聞くとより良さが伝わってきた。努めて端的に描こうとしているように思う。そしてこの手の作品の続編が冗長になるのは良くあることと感じる。
     印象的なのは銭勘定を詳しく述べているところだが、西鶴の影響か。他に収録されている短篇も楽しく読んだ。

  • ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    『夫婦善哉 決定版』
    著者:織田作之助
    装幀:新潮社装幀室
    装画:信濃八太郎
    発行所:株式会社新潮社
    初版発行:1950年
    発行:2016年 新潮文庫
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    気が弱く家の金を浪費するダメ夫の柳吉と
    肝っ玉母ちゃん的な気の強さを持つ蝶子という
    大阪を舞台にした夫婦のドタバタと人情を綴った
    『夫婦善哉』を代表作に持つのが
    オダサクさんだ。

    ダメ夫 柳吉のダメさ加減に終始
    イライラしながら読み進め、
    ラストの大阪法善寺境内にある
    「めおとぜんざい」へ行き、
    2人でぜんざいを食べるという
    半ば強引な結末で〆るのが
    オダサクさんだ。

    そして、
    そんなオダサクさんの代表作『夫婦善哉』の
    未発表続篇が2007年に発見された。
    今度は大分別府に舞台を移して
    そこでもドタバタを繰り広げる。
    この続篇は蛇足感があり、
    そのまま発表しなければいいと個人的に思えた。
    だが発表しないでも続篇を書いたのは
    紛れもないオダサクさんだ。

    その他の短篇に、
    複雑な環境下での自己の出自に対する
    葛藤や煩悶を描いた
    『六白金星』『アド・バルーン』、
    私小説風の『木の都』『世相』『競馬』を掲載している。
    個人的に1番のお気に入りは、
    阿部定事件を元にした短篇『妖婦』構想に着目した
    『世相』だろうか。
    思わずまだ未読の『妖婦』を読んでみたくなった。
    さすがはオダサクさんだ。

    オダサクさんはわずか33歳で早世してしまった。
    だがその間、
    7年間の作家生活で書いた短篇作品は50を超える。
    まだまだ面白い作品は残っている。
    これからもその短篇たちを追い求めていく気にさせる。
    それがオダサクさんだ。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ⚫︎目次情報⚫︎

    夫婦善哉

    続 夫婦善哉

    木の都

    六白金星

    アド・バルーン

    世 相

    競 馬

    解 説 青山光二/石原千秋
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  • 2024.02.10読了

  •  
    ── 織田 作之助《夫婦善哉 1940‥‥ 決定版 20160827 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101037027
     
     
    (20231128)

  • 2023.9.28 読了。
    「夫婦善哉」「続 夫婦善哉」「木の都」「六白金星」「アド・バルーン」「世相」「競馬」7編の短編集。

    初読のオダサク作品。
    「夫婦善哉」「続 夫婦善哉」の勝ち気な蝶子とどこかだらしのない柳吉の切っても切れない、転んでも前にどんどん進んでいくリズミカルでユーモラスだけれど根底には気づかない程の哀愁も漂わせている人間臭さ溢れる2作品が代表されるが、「木の都」になると書き出しから一気に静寂な雰囲気になり、他の短編も読んでいくと作者の書き方の特徴が全作品に収められつつも、異なる世界観に引き込まれる部分があり不思議な気持ちにもなった。
    どの短編も涙が滲みそうになってしまう感覚を残していくような小説。

    解説にもあったけれど、地名や細かいお金の勘定がたくさん出てくる。大阪に詳しくないので地元民や地理に詳しかったらもっと面白く読めたかもしれないとつい考えてしまう。

  • 関西の「銀の匙」のような回想がとても良かった。恐ろしく面白い

  • ①文体★★★★☆
    ②読後余韻★★★☆☆

  • 大阪の情景が眩く心を打ちます。
    夜店の下りは何度読んでも気持ちが良い。
    人情味溢れる人の営みに織田作先生の優しさが垣間見えます。面白かったので他作も読もう

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著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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