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本 ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784101039411
作品紹介・あらすじ
石田三成とは、何者だったのか。 加藤清正、片桐且元、福島正則ら 盟友「七本槍」だけが知る真の姿とは……。「戦を止める方策」や 「泰平の世の武士のあるべき姿」 を考え、「女も働く世」を予見し、 徳川家に途方もない〈経済戦〉を 仕掛けようとした男。誰よりも、 新しい世を望み、理と友情を信じ、 この国の形を思い続けた熱き武将を、感銘深く描き出す正統派歴史小説。吉川英治文学新人賞受賞。
感想・レビュー・書評
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賤ヶ岳の七本槍+石田三成による、7本の連作小説。さすがに今村さんらしく、はじめて知る史実や視点が多く流石です。
一方で、読んでいくにつれて違和感が膨らんでいくのです。一言でいうなら歴史「ファンタジー」小説なのだと感じます。「ファンタジー」の要素が大きいのです。
石田三成が諸葛孔明張りに神懸かっています。100年先を見通す知謀も無理があるように思います。
三成は優れた吏僚であるが、人間的に穴が大きい方がしっくり来る。また、福島正則がかなり優しい。狂気を孕んでいる点が欠落していて、もの足りません。
その他、現代的な感覚も巧みに組み込まれています。「男女共同参画」の構想、「PTSD」や「愛着障害」を抱えた武将。出世への悩み、8人の友情。これらが出てくる度違和感が広がっていくのです。現代人にはよく分かる感覚なのですが、戦国時代には不釣り合いというか、時代の先を飛び越しちゃっている気がします。
司馬遼太郎の短編なら脇坂甚内の「貂の皮」、福島正則の「愛染明王」。遠藤周作なら加藤清正の「宿敵」がかなりよかったです。
また、柳広司「風神雷神」は時代を精緻に描きながらも現代につながる点を巧みに描写していて惚れ惚れとしました。
本作は評価の分れる作品だと思いますがどうでしょうか……。
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賤ヶ岳七本槍それぞれの話だけど、彼らを通じて見た『武将・石田三成』の生き様に迫る物語。
構成や話の展開が凄くて、大変読み応えがあった。
七本槍と石田三成は、かつて秀吉のもと小姓組として青年時代を過ごし、お互いに切磋琢磨して成長していく。その後、ある人は大大名になったり、ある人は振るわず理想に届かなかったりと、時代の波に飲み込まれながら、複雑な人間関係が築かれる。それぞれに理想や置かれている立場から、協力関係を貫いたり、やむにやまれず袂を分かつことになったり、豊臣家と徳川家の狭間で揺れ動く感情や葛藤に胸が打たれる。
歴史的な事実、結末は分かっているものの、もしこれが上手くいってたら、、と何度も歯痒くもどかしい気分になった。
フィクションももちろん含まれているだろうけど、この時にこんなことがあって、こんなやり取りがあって、こんな気持ちで、とか歴史に思いを馳せる楽しさも本書にはあった。
8人ともそれぞれに個性的でキャラが際立ち、熱く魅力的な人物像が描かれている。
ロマン溢れる歴史小説でした。 -
最高にかっこいい石田三成に出会えました。
歴史は勝者がぬりかえるもの。敗者は事実と異なると言われがちですが、そもそも、一から十まで明確なものは残されていないわけで。膨大な資料の片隅からこれほどのしっかりとした、ドラマチックな人物を描くことができるとは。そしてそこに、作者特有の明るさと、温かさがあることが、読後の爽快感に繋がっているのだと思います。
地元ながら賤ヶ岳七本槍の武将名もままならなかったのですが、瑞々しく生き生きとした文章のおかげでそれぞれの表情まで想像することができました。今村さんに感謝✨
それにしても、一本目から七本目まで、それぞれが完成された映画のよう。七本分の世界観を楽しませていただきました。 -
賤ヶ岳の七本槍と呼ばれた男たちが
佐吉こと石田三成に語りかけ、問いかけていく話。
順番に1人ずつ出自や、心の中を語りながら
関ヶ原の戦いを向かえ、終えていくので
読者は7人分の関ヶ原の戦いにふれて
8人目の石田三成の関ヶ原の戦いを想像することとなる。何を考え何を伝えたかったのか。
太閤秀吉のもと、様々な出自を持った若者たちが
切磋琢磨し、青春を共に過ごしてから
大人になって疎遠になり袂を分かちながらもどこかで繋がっている…。
結局はここに戻ってくる原風景のようなもの。
ふとしたきっかけで溢れて出てくる思い出や
若い頃は気が付かなかった優しさや友情。
何度も、佐吉、佐吉、と語りかける男たちに
歴史小説の浪漫を感じた。
いやぁ、面白かった。
去年の大河ドラマの役者さんたちが時折
頭をかすめたけど、読みごたえがある作品だった。
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賤ヶ岳七本槍の武将達の目から見た、新しい石田三成像を描いた作品。
それぞれの武将を中心に三成の思いに迫っていく連作短編という形式をとっており、そこから少しずつ三成の未来を見据えた構想が描かれていきます。
また同時にそれぞれのエピソードにつながる部分も描かれていくので、とても深く物語世界に浸ることができました。
最後のエピソードによって、三成の全構想が完成するところは、思わず胸が熱くなる思いでした。
新しい視点や切り口によって、考えをさらに深くすることができるという醍醐味も味わうことができました。 -
石田三成というと、私は、以前見たドラマの知識しかありませんが、先頭切って戦う猛将タイプではないけれど、頭はとてもキレる。しかし、残念ながら人望はあまりなく、関ヶ原の戦いで、徳川家康と争い、敗れた人という印象です。
この本は、賤ヶ岳の戦いで、功のあった七本槍の面々が、石田三成とはどのような人物であったかを回想するお話。七本槍の、加藤清正、福島正則など、人物ごとに章が分かれています。なので、関ヶ原の戦い一つとっても、同じ場面でも、人物によって別の角度から語られているので、七人全員の話を読むと、とても重厚で奥行き深く感じられます。石田三成の人物像も同じように、どんどん深みを増していきます。
この七人と三成が初めて出会ったのは、大体、10代後半ぐらい。最初は皆んな秀吉の小姓として、武芸を磨き、勉学に励みます。喧嘩をしても、皆んながなだめて直ぐに仲直り。徐々にそれぞれの得意分野で、名を挙げていきます。しかし、年齢を重ね、大名となり、守らなければならない家族、家臣が増えていくと、彼らの間に亀裂が入るようになります。ついに、関ヶ原の戦いでは、敵味方に分かれてしまいました。
七人の武将達の、石田三成への想いは、とても熱いものがあります。彼らの一致した想いは、「豊富家を守りたい」ということ。
戦で勝って守るのか、徳川家について、豊富家が存続する方法を探るのか。方法は違っても想いは同じです。八人の武将達の熱い生き様を、強く感じることができる本です。 -
感想
加藤清正が元々吏僚で、戦に自信を持っていなかった形で書かれている。福島正則と並んで豪傑なイメージしかなかったので、そこが意外。
どの話も人間関係が交錯する仕掛けがあり、面白い。
あらすじ
賤ヶ岳七本槍のそれぞれから見た八本目の槍の三成像が書かれる。
共に吏僚出身で清正が朝鮮出兵から帰ってきたところから始まる。吏僚出身である清正は、三成の凄さも、徳川から豊臣を守ろうとしていたことも分かっていた。賤ヶ岳で自身は七本槍に数えられるも、三成は入っていなかった。戦に自信がなかったが、その才を三成が見抜いて大将に抜擢し、見事に応える。その後は三成と違え、徳川に仕える。
志村助右衛門は、播州の小寺家の寄力の嫡男として育つ。別所が織田に謀叛を起こしたことをきっかけに兄と対峙することになる。助右衛門は、羽柴の旗下に入り、戦うも実の兄を手にかけて、悪夢を見るようになる。賤ヶ岳七本槍に数えられるも、兄を討った影響でその後は奮わず、関ヶ原にて散る。
脇坂甚内安治は女のために出世することを志す。丹波の地で出会った八重は実は間者であり、大野家を守るために行動する。それが分かった後も甚内は大野家を保護する。時は流れ、甚内が大名になった頃、八重は拾いの乳母になり、子も豊臣に取り立てられていた。大野治長である。八重は恩返しの意を込めて、甚内が内府に通ずる道を作る。
片桐助作は欲がなく凡庸に生きてきたが、秀吉の最後に秀頼を頼むと言われて、付家老になるが、大野治長と淀殿の無茶な策に翻弄される。最後まで豊臣を守ろうと奮闘するも、改易されて大坂城を去り、豊臣恩顧の大名が亡くなった原因を作った者に葬りさられる。
孫六は三河出身であるが、父親が一向一揆に参加したため、放逐され、秀吉に拾われる。しかし、その実は一族を人質に徳川に内通を強いられた。徳川に従うことで豊臣恩顧の大名を次々に手にかけ、ついには助作をも手にかける。
平野権平は、村では神童であったが、召し抱えられた秀吉の小姓組では仲間に敵う部分がなく、劣等感を持っていた。七本槍の仲間が次々と大名になる中、自身だけ加増されずに燻っていた。佐吉が訪れ、権平が出世出来なかった理由を語る。その後、関ヶ原の前、佐吉は権平に徳川方について功を上げて大名になるように進める。ここでも活躍ができず権平は関ヶ原の戦いを分析し、佐吉が何を狙っていたかを分析する。
福島市松は、東軍に味方して関ヶ原を戦ったが、佐吉の足跡を辿りながら彼が家康に残した呪詛と時を稼ぐ法を解き明かして行く。佐吉と七本槍が頑張って稼いだ時であったが、最後は秀頼と淀殿によって気泡に帰す。市松は全ては八本目の槍の所業であると言い残して大坂城を去る。
著者プロフィール
今村翔吾の作品





