- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101040028
感想・レビュー・書評
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この本を読んでいる間、なんども電車を乗り過ごしそうになった。題名が作品を表していて、しかも予想と違う話ばかり。小説はおもしろいと心から感じさせてくれる一冊だった。
好きなのは「蔦の門」。孤独な者同士が牽き合い、孤独でなくなる話。気にかけていい存在があるからこそ、やさしい人になれることはあると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
見事な筆致だと思います。
「鮨」「家霊」が印象に残っているかな。
「越年」の恋話も良かったな。 -
未読のままに来てしまった日本近代文学の「名作」を改めて読むシリーズ、今回の岡本かの子は、1889(明治22)年生まれ、林芙美子より一回り年上だ。もちろん、画家・岡本太郎の母親であったことは有名な事実。
初めて読むこの作家の短編集は、まず何よりも、彫琢された文章の充実が見事であり、それだけで大変読み応えがある。こういう文体はゆっくりと味わいながら読むべきものだ。
一方で物語内容は、「あまり面白くない」ような、刺激の少ないもので、巻頭の名作の誉れ高い「老妓抄」は、要するに老いた芸妓が若い男を「飼う」という話で、これがどのような意味を持つのか最初判然としなかった。亀井勝一郎の巻末の解説を読んで、老妓の性愛を描いている、という評価を手がかりとすると、なるほど、若い芸者たちを雇って嬌態によってサービスさせたり、養女が幼い媚で迫るに任せたり、といった実践が、自らの愛欲を他者に託して表象しているのだと推測することはできる。しかし、一読してなかなかそうは明確にならないので、直接描かない心理の不明瞭が、もどかしい。
むしろ「鮨」「東海道五十三次」「家霊」などの方が話として分かりやすく、文学的に充実を極めた文体とともに、良かった。
この集中、「越年」だけは異色で、文体はごく普通の平易なものだし、いきなりオフィスの情景を描写しているし、ストーリーも「ちょっとした恋愛小話」のようなもので、まるで違う作家の作物であるかのようだった。書いた年代が違うのか、原稿を発表した雑誌が他とは異なる種類のものだったのか、巻末にもデータが無いので分からなかった。
最後の「食魔」は、ちょっと記述がだらだらと間延びしていて、他の秀作のような簡潔さに欠け、良くなかったと思う。 -
小説の力もすごくて驚いた
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もっとドロドロ系かと思っていたので、意外とツルッといけてしまい、逆に不安。商売に身を費やしてきた小そのさんは観客席であって、プレイヤーになるつもりはハナからないという読み方をしてしまったんだけど、なんか見落とした??そのうちまた読み直し。「食魔」のほうがウゲーな人物で印象強い。
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理由もなくエキセントリックな印象があったけど、落ち着いた安定感のある文章に驚いた。特に鮨がとても気に入りました。
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初 岡本かの子。老女中と茶屋の娘が孤独なもの同士、素直ではない心の通わせ方を見せる「蔦の門」。極端に偏食(潔癖)な子供のために母が目の前で寿司を握って食べさせるシーンがキラキラしている「鮨」。当時評価の高かったという「老妓抄」は、現役を退いてからの老妓の生き方が肝が据わっていて背筋がピンとしています。老妓の短歌「年々にわが悲しみは深くして いよよ華やぐいのちなりけり」かっこいいですね。奥深さにシビれます。
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著者の身の上話し?結構しんどい
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短編9作。明治の女性のどろっとした生き方が生々しい。文体が古めかしく、読みづらかった。15.5.15
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老境の芸妓の心境を描く老妓抄、どじょうなべを毎晩無心に来る老人の話、鮨をきっかけに偏食を克服した紳士の話。失われた明治の東京の街並みと人々の暮らしを、輪郭のある筆致で描いた短編集。風景や部屋のしつらえの描写が視線の移動や構図を考えてあるかのようで情景が見たこともないのに浮かぶよう。食べ物の描写が何気ないのにとにかく美味しそう。
著者プロフィール
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