デッドライン (新潮文庫)

  • 新潮社 (2022年8月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784101041612

作品紹介・あらすじ

2001年の春、僕は大学院に進んだ。専門はフランス現代思想。友人の映画制作を手伝い、親友と深夜にドライブし、行きずりの相手とセックスをする日々を送りながら、修士論文の執筆が始まる。テーマはドゥルーズ――世界は差異からできていると唱えた哲学者だ。だが、途中までしか書けないまま修論の締め切り(デッドライン)が迫ってきて……。気鋭の哲学者が描く青春小説。芥川賞候補、野間文芸新人賞受賞作。

みんなの感想まとめ

多様な場面と哲学的対話が織り交ぜられたこの作品は、主人公の大学院生活を通じて青春の空気感を巧みに描き出しています。友人とのドライブや日常のささいな出来事が、時に淡々と、時に深い思索を伴いながら展開され...

感想・レビュー・書評

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  • 良い小説だなと思った。場面転換が頻繁にあるのだけれど、話をぶったぎるなんてものは全く感じなくて、まるで映像(映画のような)の視覚効果のような気がした。
    その色々な場面のなかに「僕」と「先生」の会話があるのだけれどそれが重要な気がする。でもちょっと難しくもあり完全に捉えることができなかった。
    そして何より誰にでももある(あった)であろう、あの年齢の時のあの空気感がすごく出てる。友達と夜中ドライブにいったり、ご飯を食べたり、引越作業だったり、家庭のあれこれ...。青春小説かな?不思議だ。
    後半に知子と電話する場面で知子の視点が出てくるのだけれども、それがどういう意味だったんだろうって今考えている。そういう余韻というか考えさせられるものがあるというのも良い。

    解説だと思って読み始めたらなんだか難しくて、よく見たら解説って書いてなかった(笑)

  • 千葉氏著の『センスの哲学』において、「純文学はリズムを楽しむ」とされていたが、この『デッドライン』は正にリズム重視の文学といった趣きであった。難解ではあるけど、サクサクとリズム良く読めた不思議な文学体験。

  • 朧気な記憶だが、「文学賞メッタ斬り!」で豊崎由美が「インテリ版西村賢太」と評したので興味を持った上、年下の友人が面白いと言っていたので。
    西村賢太式露悪癖もないではないが、むしろスケッチや、時代習俗を文章を用いて保存する試みだと感じた。
    解説の町屋良平の文章も面白いが、ネット上で保坂和志との対談を読んで、これが断然面白かった。
    (自分は保坂和志の読者ではないが、きっと好きなんだろうなと思っている。)
    ハッテン場の描写から始まるが、個人的には第119回(2014年度・下)の文学界新人賞で佳作となった森井良「ミックスルーム」がずっと記憶に残っているので、連想したりした。

    が、本作のゲイセックスはむしろ自身の可塑性(と言っていいのかしらん? 変容可能性?)の一部であるのかなと思った。
    猫になったり、知子になったり、動物になったり、少女になったり、締め切りになったり。
    「僕」の生成変化は割と忙しい。
    大学生活はのんびりしているのに対して、内面の動き。
    知に触れることで自身が組みあがっていく、ブッキッシュな青春ではあるけれど、頭デッカチではなく、ぬぬーっと身体性(性欲)が頭を蠢動している。
    同級生との交流は正直柴崎友香っぽいと思ったが(彼女もまた佐々木敦所謂ところの保坂スクール出身)、指導教授徳永の存在感は、なかなか出色で、メンター小説という面もあると思った。
    いずれにしてもスケッチの集積が小説としてのまとまりを持ち得るという観点は、いいものだ。

    なんでも「オーバーヒート」、「エレクトリック」を足して三部作とするらしい。
    3作目は高校時代のインターネットとの出会いが題材らしいが、並べるとどうしてもセクシュアルな単語を意識して取り上げているように、つい感じてしまい、勝手に期待してしまう。

    ところで森井良、今回検索して知ったが、なんと獨協大学フランス語学科専任講師で、翻訳多数。
    しかも積読にしている「特別な友情──フランスBL小説セレクション」の編訳者のひとりらしい。
    「ユリイカ 詩と批評 総特集 大江健三郎 1935-2023」に、「大江の〈A〉、オントのにおい」という文章を寄せていたりして、うーん興味湧く!

    と書いたあとで、自分のevernoteを検索してみたら、2年前に遠野遥「改良」の感想にて、
    >なんとなーく連想したのが、第119回文學界新人賞で佳作だった森井良「ミックスルーム」(初めて知ったがフランス文学者で、「特別な友情―フランスBL小説セレクション―」を編纂しているのだとか!)、いや本作はゲイではなく異性装。
    と書いていた。
    ……どんだけ脆弱な記憶力で、どんだけ同じ連想圏をうろうろしているんだ。

  • 正直な感想は序盤は退屈かつ、時系列が複雑な場面転換についていけず読みづらかった。
    しかし、最後まで読むと、序盤〜中盤までのつかみどころのない話が意味を持つ。
    繰り返して読みたい作品のひとつになった。
    はっきりとした起承転結があるわけではないので、他の感想でもあるように退屈と感じるかもしれない。王道の小説(事件があってそれを解決するような)が好きな人には向かない作品だなとは思う。

    裕福な家庭の〇〇(主人公)が大学院で修論を書きながら、大学院の友人たちとの交流やハッテン場で相手を探し行為をいたすのはとても詳細だが淡々としていて、失礼ながら「THE自堕落な生活」。
    その中で、フランス思想や荘子など哲学が入り乱れるので、アンバランスさを感じる。
    ネタバレになるので細かくは書かないが、後半、窮地に立ち始めると主人公がちゃんと血の通った人物に感じ、急に人間味を帯びてくる。
    だからといって、困難を乗り越えるようなサクセスストーリーが展開されることはない。
    我々の日常事件はあっても、目に見えた起承転結もあるはずもなく、その中でどう考え、どう生きていくのか、そんなリアルさをもった作品だとも感じた。

    そこを経て、再読するとまた深みが生まれそうな予感がするので、間を開けてまた読みたい。

  • やっぱり千葉さんの書くモノは好きだなと思った。
    自分と本とが重なる感覚がある。登場人物が自分と重なるとかそういう意味ではなく、あくまで本と重なっている。
    この感覚がすごくなんともいえなくてすごく好き。

    読み終わった今ふとした時に、もうあの本読み終わっちゃったんだもんなって気持ちになる。

  • 哲学がエンタメとなって、元々哲学に関心のなかった層にも手の届くところまで降りてきた、というイメージを持った。國分功一郎さんの本が話題になったりと、最近フランスの現代思想の流行を感じるが、少しでも齧ったことのある人は楽しめる作品になっていると思う。

    主人公は同性愛者の院生で、ドゥルーズの生成変化について修論で書くことになる。ドゥルーズ+ガタリの『千のプラトー』には、人間、男性、支配者→動物、女性、支配からの逃走という生成変化について語られている(らしい。未読で、本書に出てきた内容をうろ覚えのまま書いているのでご参考までに)
    「ドゥルーズは、生成変化を言祝いだわけです」という先生の言葉が印象的。

    同性愛の当事者の若者は、研究を通して、自分が男性でありながらすでに女性に生成変化を遂げていて、同時に男性性を希求している、という立場であることを自覚をする。ドゥルーズは女性→男性の生成変化については言及していない。他者(友人、親、研究対象のドゥルーズとさえも)とのズレ、それによる違和感、自分の性、自分が希求することついて考える様子が、淡々とした筆致で描かれていく。静かな孤独感の中で。それが嫌に生々しい。違うっていうのは、こうも孤独なんだなぁ。

    結局主人公は、ドゥルーズの研究を進めても自分の生き方の答えは見つけることができなかった。「少女のしっぽ」を探すというヒントは見つけたが、捕まえることはできなかった。物語は終わっても主人公の研究続いていくみたい。

    めちゃくちゃ性描写が多く生々しいので、好みは分かれると思う。
    私は初めかなり戸惑ったが、そうしないと語れない何かがあったのかな、と思い、「テクストの現実に従う」ことにした。好き嫌いも二項対立である。好みではないが嫌いの枠に入れない。そのあいだに身を漂わせて、書かれていることをそのまま読む。

    正直好みではないが、哲学書を何冊か読んでから次はメタの視点で再読したい。構造を俯瞰することでわかるメッセージがあるように感じている。

  • おもしろかった。何が面白かったってとてつもない衝撃があったわけでも、特段感動があったわけでもないが、この小説でしか感じられない不思議な、ある種「放り投げだされた」感覚になる。それがまた面白いのだ。だって、小説が読者を放り出すのだから。しかし、これは、少しの哲学の知識か、著者千葉雅也の他の書籍などを読んでいると面白さは倍になる気がした。

  • 長らく積読の状態で読めていなかった、千葉雅也さんの小説デビュー作『デッドライン』を読んだ。ページをめくり始めてから、最後まで止まらなくなる。こうした小説に出会える機会は年々減っているから、初めて読書の悦びに目覚めた中学生の頃を思い出して嬉しくなる。ありていに言ってしまえば、全ての私小説は当人にしか書けない。それは当たり前にしても、『ライティングの哲学』などでも披瀝されていたように、“書く”ことを“書く”ことのメタ的な次元で実践してきた千葉さんだからこそのスタイルが、物語の形で表現されていたのは瞠目した。散文的でありながら、真正面の哲学が文学と絡み合うように、溶け合っている。思想と文学の両方を愛する読者からすれば、垂涎の物語ではないだろうか。

  • んーちょっと、not for meだったかな。全部のエピソードが点で温度を感じず、読んでいる間どこに身を置けばいいか分からなかった。調べたら哲学書の著書の方が多い人のようだ。LGBTについて理解を深めることができる、ということで手にとったけど、他で同題材を扱う作品も手にとってみよう。

  • 中盤までは、いわば、よくあるような、
    あまり熱心ではない学生風景。

    昼の間は大学で哲学の講義を受け、
    夜になると街に繰り出し顔の良い男を漁る。

    5章にある1文に、
    強烈に、人はそれぞれ「自分」を生きているということを提示される。

    そこからが怒涛だった。

    あなたは魚ではないのになぜ魚のことがわかるのか。

  • リズムはいい感じ。読みやすいと思う。でも一つだけ、なんと言うべきか、名詞句だけをポンと書いて句点をすぐ置くような書き方があって、千葉雅也らしいけど、これは気に障ったw あと町屋良平による解説がまったく分からなかった。

  • どうも同性愛もの、特に男性ものが、あまり得意ではない。なんだかなあ、と感じてしまう。
    学生生活全般の描写、特に、日常的な担当教授との会話部分と、後半の修士論文に苦しむあたりは、とてもよかった。

  • 野間文芸新人賞受賞作。ゲイで、ドゥルーズをテーマに修士論文を書く大学院生が主人公ということで、私小説的な内容と思われるが、論文やエッセイとは異なる形で著者の思想や思考、体感が表現されてるように感じられて興味深かった。

    主人公は、社会の規範(異性愛主義)とは異なる形で存在する自己の性的指向(あるいは性自認)について、矛盾を抱え、葛藤している。ドゥルーズの思想はヒントでありながらも、それと自己の中の蠢きが必ずしもマッチしない。生成変化に憧れながらも、その方向に必ずしも振り切れ(られ)ない。

    最終的に主人公は修士論文のデッドライン(締切)を突破してしまう。そこで訪れたある種の諦めと制約は、際限のなさゆえの選択のできなさを縮減し、その制約の中でこそ「動きすぎない」形での生成変化に可能性を開くことにつながっているようにも思われる。

    千葉の代表作でもある『動きすぎてはいけない』では事象や概念の「偶然性、外在性」がヒュームの思想を軸に強調されるが、僕はそれを読んだ際に、一文字も明記されていないにも関わらず「ハッテン場」的なものの隠喩を読み取った。この小説ではそうした場面が幾度も登場するが、これは偶然ではないだろう。

  • 出版されてわりとすぐ読んだけど、なんだかよくわからないしすごくひんやりしたイメージが残った。現代思想入門、勉強の哲学、センスの哲学を読み経て再読したら、実戦編のような感じでいろんなものがみえてきてすごくおもしろかった。登場人物でやだなーという人がいない。

  • 自分の中で他人とは分かり合えない諦めを持ってていたけれど、誰かと仲良くなりたかったり遊びに出かけたい矛盾したものも持ってて、それについて長いこと考えるのを放置して忘れてさえいた。魚の楽しみの話とこの話全体を通じて自分の中にあったそれらをまた思い出した。

  • 哲学を学んでいる主人公が、自身のマイノリティである性別について、荘子の話を盛り込みながらも 自分なりに分析しており面白かった。

  • 作家がゲイなだけあってリアル感がすごい。BLに落とし込んでないところもすごく印象が良くて好きだけどちょっと硬いです笑

  • 哲学者の小説としても疑問符がつく。突然三人称になるのを後書きで解説してるが苦しい

  • 小説についてではなく、主人公について。
    主人公は、男同士の肉体関係を結ぶ、相手はハッテン場で出会った男、肉体関係を持った男と付き合うことはないようだ。
    誰でもいいわけではなく、顔、身体、仕草、振る舞い、に好みがあるという。
    親友Kが、彼女ができたと伝えたとき、主人公は自分が男と付き合わないことについて、精神的には親友Kとの関係で満足してしまっていると記している、また、職人の男と付き合う可能性もあったがそこに踏み入れなかったとも。

    中学の頃、好きな女の子がいたという。
    グラビア写真で自慰もしたという。
    その女性器を気持ち悪いと思ったという。
    橋の上から魚を見て楽しそうだと思った、という話に関連して、その女性器に挿入したいというかその女と近くなり同じになって挿入したいようなことを言っていた。
    その辺りの感覚が私にはよく分からないものだから、興味深く読んだ、もう一度読まないとよく分からない。

  • 図書館で並んでて適当に手に取った。正直読んでて分からなかったし面白く無かった。話が進んでる感じがあんまりしなかったなぁ(哲学とプライベートを行ったり来たりしてたせいもあると思う)

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著者プロフィール

1978年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。
著書に『意味がない無意味』(河出書房新社、2018)、『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社、2018)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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