覇王の譜 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2022年8月29日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784101041810

作品紹介・あらすじ

「お前は一流にはなれんよ」。七年間、C級2組から這い上がれない直江大に剛力英明王座はそう言い放つ。旧友との目も眩むような格差。だが、天才少年との邂逅、“孤剣”の異名を持つ師の特訓が、燻っていた直江を覚醒させる。彼の進む道の先には運命の対局が待ち受けていた。元奨励会会員、将棋を深く知る著者が青年棋士の成長と個性あふれる棋士群像を描く。魂震わす将棋エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 最後の対局の場面は手に汗握る…
    個人的にはひとにお勧めしたいし、もうちょっと話題になってもいい作品なのでは?とも思う。

    展開が読めちゃう…というところはあれど、逆に時々冷静に読めるようになって個人的にはそんなに気にならなかった。

    "何者でもなく伸び悩んでいた将棋棋士が覚醒し、何者かに化け、トップへと至る遠い道のりへの第一歩を記した作品"(解説より)

    ライバルや師匠、弟子も全部キャラが濃く、それぞれのサイドストーリーもみたいくらい。
    また、対局の描写が丁寧だけど読みやすくて、臨場感があった。
    日本将棋連盟の政治も…
    これはフィクションだけど、いろんな連盟でこんないざこざはあるんだろうなと思ってしまった。

    将棋は小学生の時クラブ活動で齧っただけだが、やはり奥深そうで魅力的で。
    もう少し詳しくなりたいと感じた。

  • だいぶ前の新聞広告に『WEB本の雑誌「オリジナル文庫大賞」』とあったのを見て「読みたい」に入れていた将棋のお話。

    AIの進化は将棋を観るハードルを劇的に下げましたよね。
    私のような素人でも、AIが示す最善手を見ながら次の一手を待ち、優劣も知れ戦況を楽しむことが出来るようになった。
    ひと月前の棋王戦第三局など、互いに一分将棋にもつれ込む中、一手ごとに評価値が激しく揺れ動き、竜王のまさかの詰みの見落としまで重なる劇的な展開に、終局後はしばらくこちらまで放心してしまった。
    5日からは名人戦七番勝負が始まるが、どのような勝負が繰り広げられるか、今から楽しみ。

    さて物語はと言えば、かつては将来を嘱望されながら、プロになって7年、いまだC級2組に留まっている直江が主人公。
    かつてプロ棋士を目指し奨励会に所属していたという作者だけあって、『棋士は自分より弱いとみなした同業者を軽くみるところがある』とか『対局で負かし、感想戦で負かす。それで初めて相手に強さを認めさせることができる』など、観ているだけでは分からない棋士の心理がちりばめられているところがまず興味深い。
    奨励会同期で今は遥か先を行く現王座の剛力、最初に師事した三木、兄弟子にして現師匠の師村、棋界の第一人者・北神、京都の天才少年・拓未、女流を捨て奨励会から棋士を目指し直す・江籠など直江を取り巻く面々がそれぞれ個性溢れて魅力的。
    話はやや詰め込み過ぎで、描写も力が入り過ぎのところもあって、テンポもあまり良くないように思えるのだが、それでもずんずんと読ませる。
    何度か描かれる対局の場面もそれぞれ勝負の機微がよく描かれているが、最後の“蒼天戦”における剛力玉への詰み筋と三木が遺した詰将棋「早春の譜」第百番「命」が繋がっていく場面が白眉。
    今日紡がれる局面は、これまでの数多の時間が積み重なって出来た結果の、それぞれが奇跡的な局面であることを描き切っているように思えた。

  • 将棋モノには目がないため、本屋で見かけて即購入。
    シンプルながらも迫力ある作品名と、重厚感漂う表紙のイラスト。押し寄せる期待のままにページを捲り始めた。

    将棋を題材にした作品はいくつか読んできたが、その中でも驚異的な熱量を感じた作品だった。
    特に棋譜や図面がないにもかかわらず、ここまで対局者の心象や局面の難解さを表現できるのは単純に凄い。盤上のせめぎ合いでは喉元に切っ先を突きつけられたような、常にはらはらとした気持ちで読み進めることとなった。
    才能人ながらもここ一番で力を出せないプロ棋士・直江大と、直江と同年代でありながらすでにタイトルホルダーの若き天才・剛力英明。その他にも天才小学生・高遠や『孤剣』の異名を持つ直江の師匠・師村、当代最強の女流棋士・江籠と、個性豊かな登場人物も光っており、そんな棋士たちとの出会いを経て直江が成長する過程も非常に読み応えがあった。

    著者の橋本氏は奨励会に所属していた経歴の持ち主とのことで、将棋の世界に身を浸した者にしかわからない過酷さ・壮絶さの表現力にただただ脱帽。
    藤井壮太竜王・名人のご活躍により盛り上がりを見せ続ける将棋界。そんな勝負師たちの世界に興味を持った方にはぜひ読んでほしい。

  • 落ち目の将棋棋士の再生への道のり。
    最近あまり知らないくせに将棋の話を選ぶ様になってる。3月のライオンで知ってる程度。
    はじめ、生意気な拓未がメインとなり直江が支えていくものだと思っていたら直江の再起の話に。
    中々将棋用語がついていけずわからない所もあるがそれにしても熱い展開でそれも関係なしに楽しめた。
    剛力ははじめは小物感があり嫌な奴だったが棋聖戦から、黒いなりに大物に変貌して印象が良い方へと変わっていった。簡単に仲良くならず当人同士しかわからない関係性が男らしく、いかにも勝負師だ。
    最後の一番の終了後、互いの心理描写が細かく出し切った感が迫ってきたが、やはり続編も期待したくなる作品だった。
    作者さんはあまり作品を出してないらしいが是非期待したい。

  • 読書記録 2023.7

    #覇王の譜

    凄い作品に出会った。
    本物の将棋を知っているから、対局の一手一手の描写が刃物で切り付けるように鋭い。
    主人公も劇的な覚醒でなく、周囲との関係の中で、傷つきつつも成長し、自分の将棋の凄みを増していくところがいい。

    #読書好きな人と繋がりたい
    #読了

  • 順位戦で昇級を逃す所からのスタート。
    天才小学生との一局、好敵手との訣別、AI将棋との出会い……。なんというか、ドラマが散りばめられている。

    でも、将棋小説において人間ドラマは、盤上で展開される。

    最後の蒼天戦。
    主人公直江を囲んできた登場人物たちが、総出で、対局を見守る。
    そして、「秒読み」。
    棋士にとって、その体感時間ってどのくらいのものなのだろう。

    語りで展開される秒読みと、読み手がなぞっていく秒読みと、直江の今が、なんとなく重なったように思えて、手に汗を握った。

  • ストーリーは、特定の業界を紹介するエンタメの定石通りだと思う。特徴は、スピーディーに読ませる、その流れの作り方が凄いということか。

  • Amazonの紹介より
    「WEB本の雑誌」オリジナル文庫大賞受賞作!
    王座としてトップ棋士の一員となった旧友。
    一方こちらはデビュー以来7年間、最底辺。
    「お前は一流にはなれんよ」。 プロになって7年、C級2組に留まっている直江大に、奨励会同期の剛力英明・現王座は、そう言い放った。旧友との間に開いた目も眩むような格差。だが、京都の天才少年・高遠拓未との邂逅、棋界の第一人者・北神仁との対局、そして現在の師である〝孤剣〟師村柊一郎の猛特訓が、〝賞味期限が切れたはずの元天才棋士〟を覚醒させる。そして史上空前の逆襲の先には、運命の一局が待ち受けていた──。将棋を深く知る小説家がひとりの青年の成長と個性あふれる棋士群像を描く。最も鋭利で、最も熱い、将棋エンターテインメント。解説・西上心太



    今まで色んな将棋をテーマにした作品を読んできましたが、他の作品と違うのは、経験者だからこそ将棋における熱意や棋士の苦悩などが、詳細に描かれている印象でした。
    さらに泥臭さ・男臭さといった野心が漂っていて、一味違った空気感でした。

    あまり将棋の知識はなかったでのすが、知らない自分にとっても楽しめました。ただ、一つ一つ将棋を打つとき、文章だけで将棋の動きが描かれているので、なかなか魅力の半分しか味わえなかったなと思いました。
    それでも対局のシーンでは、より丁寧に描かれているので緊張感がとても伝わりました。

    静かな行動である分、相手との心理戦に躍動感があって引きこまれました。

  • 『盤上の向日葵』に続く2冊目の将棋小説。盤上の向日葵が将棋をモチーフにしているが真剣師の生き様を描いているものに対し、こちらは、元奨励会員の作者が描く将棋棋士。
    ストーリーとしては、天才といわれた棋士が奨励会同期に敗れたことをきっかけに、一人はタイトルホルダーへ。もう一人は下位で燻る棋士へと。
    その彼との繋がりを断ち、少年天才棋士や師匠、序列一位の棋士との研究会などを経ることによって実力を高めていくことに。
    終盤のタイトル戦の挑決で主人公を負けさせるところなどは、驚いたが、百折不撓を表しており、主人公が強くなっていくところを描いているのかなと感じた。
    元奨励会の先生が描いているだけあって、棋士の先生たちがこのような感情や思考で将棋を指しているのか?と想像できてとっても臨場感が出ており良かった。

  • 『小説現代2024年11月号』が将棋特集で、将棋をテーマにした本が色々と紹介されていた中でまだ読んでなかったのがこれ。

    著者は元奨励会員。
    藤井聡太は天才と言われるが、観る将の私にしたらそもそもプロ棋士は全員天才だし、それ以前の奨励会に入れる時点でものすごいことという認識。

    少し前に読んだ将棋小説はこれって誰々さんだよねと丸わかりの、それはそれで面白いけど小説か?という感じだったけど、こちらはちゃんと小説になってて物語としても面白かった。

    読みながら何となくギタシンこと佐藤慎一六段が思い浮かんで…昇給見たいなぁ。

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著者プロフィール

1999年、中学生将棋王将戦で優勝。同年、奨励会に入会するも2003年に1級で退会。2011年『サラの柔らかな香車』で第24回小説すばる新人賞を受賞。小説家、ライター。

「2018年 『奨励会 ~将棋プロ棋士への細い道~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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