小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101042046

感想・レビュー・書評

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  • 《小さき者へ》
    知らない間に私たちは離れられないものになってしまっていたのだ。五人の親子はどんどん押寄せて来る寒さの前に、小さく固まって身を護ろうとする雑草の株のように、互により添って暖みを分ち合おうとしていたのだ。然し北国の寒さは私たち五人の暖みでは間に合わない程寒かった。


    母上は血の涙を泣きながら、死んでもお前たちには会わない決心を翻さなかった。それは病菌をお前たちに伝えるのを恐れたばかりではない。又お前たちを見る事によって自分の心の破れるのを恐れたばかりではない。お前たちの清い心に残酷な死の姿を見せて、お前たちの一生をいやが上に暗くする事を恐れ、お前たちの伸び伸びて行かなければならぬ霊魂に少しでも大きな傷を残る事を恐れたのだ。

  • 有島武郎の代表作。北海道の貧しい漁村に生まれた‘君’は画の才能に気づきながらも、漁夫として家族を捨ててまでその道に進むことができず、命を懸けてまでも採ってきた魚を陸の人間に買い叩かれる弱い立場にある。生まれながらにして断ち切ることが出来ないものが、個人の才能や能力、関心、夢といったもの凌駕し、結局は耐えるしかない不条理を描いている。<br /><br />昨今、格差社会などという言葉が巷に囁かれ、資本主義負の側面として、社会に対していたずらに警戒心をあおっている。この小説が書かれたのは20世紀の初頭であるが、まだまだ、日本に本格的な資本主義が根付く段階ではない時代にもかかわらず、むしろ現代の格差以上に克服し得ない格差が小説の中には画かれている。少なくとも現代においては、少なくとも小説に画かれた時代と比較すると、努力をした者、才能のある者が報われるとチャンスが多いのではないだろうか。現代の格差論議に対して有島武郎がどう考えるか興味深い。

  • 小さき者へ:幼いときに母親を亡くした子の父親の手紙 
    "お前たちは遠慮なく私を踏台にして、高い遠い所に私を乗り越えて進まなければ間違っているのだ"  my mother was saying some thing similar to this in these 4-5 years. what if my mother was too high up and seemed impossible to go any further? does it have to be the social states or income based thing? i hope not..
    生まれいずる悩み:絵描き/漁師の青年と本書きのはなし
    君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春がほほえめよかし‥‥僕はただそう心から祈る。

    タイトル買いをしてちょっと読んでから あ、何回かよんだことあるじゃん、と。

  • このようなロマンチシズムを持ったナイーブな男は欲深く生ききれないのですね。
    「君」へ向けた彼のまなざしは、あまりに感動的で、誰もが「君」に魅せられずにはいられないと思いました。
    「君」が登場するシーンに、胸が高まります。

  • 妻を失い、新しく芸術に生きようとする作家の覚悟と、残された小さき者たちに歴史の未来をたくそうとする父性愛にあふれたある夜の感想を綴る「小さき者へ」。
    ”君”という語りかけで、すぐれた画才をもちながらも貧しさゆえに漁夫として生きなければならず、烈しい労働と不屈な芸術的意欲の相克の間で逞しく生きる若者によせた限りない人間愛の書「生まれ出ずる悩み」の二編を収める。
    (裏表紙より引用)

    なんとなく薄っぺらかったので手に取った一冊。初・有島武郎です。
    解説によると、「有島の作品にはセンチメンタルなものと執拗残酷なものがある」そうで、これは前者のセンチメンタルな方らしいです。また、このように「人としての有島武郎を直接にあらわしている単純な作品」はそう多くないそうです。

    作品の感想ですが、「小さき者へ」は、自分が小説家で同じ境遇にあったらこんな作品を書くのかな〜とか親が小説家だったらこんな作品を書くのかな〜と思いました。
    あまりそれ以上の感銘は受けなかった・・かも

    「生まれ出づる悩み」は、”君”という語りかけに違和感があるというか、新鮮というか・・・。しかしそこに人間愛を感じました。
    ここまで自分の人生を気にかけてくれる人がいたらいいな、と思いました笑
    ”君”の悩みは、時代やその重要度の差異はあれ、私にとってもも人事じゃないです。
    絵を描きたかったんだね。”君”ほど切羽詰ってはいないけれどしたいことが諸事情によって思うように出来ないというのは歯痒いです。


    まぁそれなりには面白かったんだけどそこまで残らなかったなあー
    「執拗残虐」な方の有島武郎を読んでみたいとは思います。

  • いいんだけど…。
    なんだか最近読書そのものを楽しめない。

  • 生れ出づる悩みをAudio Bookで読みました。
    本棚に10年くらいはいっていたとおもうけれど、読んでいなかったことにまず驚きました。
    こんなに面白い内容だったんだーというのが素直な感想です。
    絵の才能にあふれた青年との出会い、そして海の潮の匂いつつまれて送られてきた
    スケッチブックから作者が「君へ」と語りながらつづっていく青年の日々の暮らし。
    波があれくるう様子や、妹との互いを思いやるやりとり、夢をあきらめて家にもどってきてしまったことの
    人知れない後悔。漁師でありながら、スケッチブックをかかえ絵をかく青年への冷やかし。
    絵の具すら買えず、スケッチだけで描き出す山。切なくて、苦しくて、でも何かに必死にとりくむことの
    美しさを思い出させる名作だとおもいます。

  • 原点。
    触れる掌の優しさ、力強さ、無力、命、脈動、静かな覚悟、繋いでくもの、決意。
    たくさんの人に対する感情が詰まってます。
    もう読むたび泣いてしまうからそろそろ封印したい。

  • 「小さき者へ」は、有島武郎の妻をなくした失望と母を亡くした子供たちへの哀れみから始まって、徐々にそれが、母を亡くした者だからこそわかる痛みについて、生きる希望について、と進んでいく。昔、冒頭だけ読んだときよりも明るい光のさす文章だった。それにしても、隔離されてから子供たちに会うことを必死に拒んだ母。すごい。

  • 心が揺さぶられる。
    文章が好き。
    背中を押される感じ。

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