小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101042046

感想・レビュー・書評

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  • 2022/02/04再読する

  • 彼の年譜からかかわりがあった人物だけをならべても、新渡戸稲造、内村鑑三、志賀直哉、武者小路実篤、里見弴、与謝野晶子と時代を感じさせる。32歳で信仰を捨てたころから思想的、精神的に変調をきたし、警察から危険人物としてマークされる。38歳で父と妻を失い、創作活動に専念、彼の代表作はこのころ発表されているが、執筆期間は短く、45歳で人妻の波多野秋子と心中というエンディング。
    本作は、彼の代表短編作だが、とにかく筆力に圧倒される。当時の文豪と称される作家の筆力と想像力のすごさが堪能できます。

  • うう、読みにくい。純文学。
    小さき者への方がまだわかる。
    作者は考えすぎなのではないか。
    インターネットもなにもない、自己に対し、内省的になり尽くせる時代の作品。


    言葉の美しさ、有島武郎を知るにはよい作品

  •  幼い子ども達や「君」への切々とした語りかけの文体からは作家の繊細さや情の深さを、また『生まれ出づる悩み』における漁船の転覆場面の描写の緻密さからは作家の観察眼の鋭さ(或いは想像力の豊かさ)をそれぞれ感じさせる。
     そこまで大きな起伏はなく、全体的に落ち着いた印象の文章ではあるものの、両篇とも最終節に差し掛かると途端に熱量が増した感覚を覚え、力強くはあるものの同時にこれまでの雰囲気と比べこの最終節のみやや「浮いた」ような、ある意味でアンバランスな不思議な印象を抱く作品だった。

  • 本文より。
    それは今は乾いてしまった。大空をわたる雲の一片となっているか、谷河の水の一滴となってい るか、太洋の泡の一つとなっているか、(中略)然しその熱い涙はともかくもお前たちだけの尊い所有物なのだ。

  • 時間がかかった。妄想を確信的に進めていく苦しい話。人間の生も悩みも、もっとシンプルな所に行きつくと思う。正しく生きれば。正しい道をあえて見つめない作者と主人公の懊悩。苦しい。

    10/10/1

  • 『君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし…僕はただそう心から祈る』


    高校のときに授業で扱って、これがずっと頭の片隅においてあった。だから、読んでみようと決心して読んでみたけれど、薄い文庫本にもかかわらず、すごく読みづらかった。

    有島本人ぽい「青年」と、絵の才能がありながらも、貧困というやむをえない事情で漁師として逞しくもときに悩ましげに生きていく「君」の話。

    ただ、漁師の生活の場面が描かれているときに、これは、どのくらいリアリティがあるんだろう、とふと考えてしまった。というか、考えてしまうくらい、リアリティが若干欠けている気がした。

    「小さきものへ」はすごく読みやすくて、愛情に溢れてる文章ですごく読んでいて、幸福な気分になれた。親から子へ受け継がれていく愛っていいなぁと、少し、胸にぐっときた。

  • よむよむ第51回

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