或る女 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.75
  • (32)
  • (41)
  • (58)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 483
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101042053

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 水村美苗さんが影響を受けた本だったか好きな本だったかで挙げていらしたので読まねば!と思って積んであった本をやっと。
    前篇は、なかなかストーリーがすすまない感じで人間関係もつかみにくく、主人公に共感できることもなく、読みとおせないかもと思ったけれど、後編に入ったら突如おもしろくなってきて、いったいどうなるんだろうと引き込まれていった。のだが、だんだんおもしろいを通りこしてホラーかと思うおそろしさになっていき、ラストのほうではまさにこわくてふるえた。
    主人公葉子の狂気がこわい……。これはいったいどこからくるものなんだろう……。いわゆる業とか性とか……? この時代の閉鎖的な社会からはみだしてしまう個性……?
    救われない者は絶対に救われないというような人生の無常みたいなものを感じるような。
    しかし、やはり文章はすごいかも、と。
    狂気の描写とか自然描写とか読んでて戦慄するような、凄みがあるというか。
    ほんと、おそろしかった……。

  • 読み応えたっぷり。

    和製スカーレット・オハラな女性、早月葉子の奔放で激情に身を委ねた人生を綴った大作。

    婚約者の待つアメリカへと渡る船の中で、イケメン事務長に惚れてしまい、そのまま帰国。
    このときの葉子の揺れ動く心が、海に揺られる船という舞台に絶妙にマッチしてて、その生々しい感情が読者にストレートに伝わってくる。

    その表現力、内容の濃さ。感服です。

    あぁ、女ってなんて馬鹿な生き物。
    そう思わせる作品。

    いつの時代も同じ(なのかな?

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「女ってなんて馬鹿な生き物」
      私は、そうはならないよ。って言う反面教師になるのかな?
      馬鹿でどうしようもないのは、男も同じですよ。
      「女ってなんて馬鹿な生き物」
      私は、そうはならないよ。って言う反面教師になるのかな?
      馬鹿でどうしようもないのは、男も同じですよ。
      2012/06/25
    • cecilさん
      >nyancomaruさん
      反面教師・・・女性が愚かになれるのはそれだけ相手を信じてるから出来るのだと思うのです。だから、私は葉子が必ずしも...
      >nyancomaruさん
      反面教師・・・女性が愚かになれるのはそれだけ相手を信じてるから出来るのだと思うのです。だから、私は葉子が必ずしも不幸だとは思えないんですよね><
      2012/06/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「それだけ相手を信じてるから」
      んーー男は、それを利用するのか、、、嫌ですね。
      幸不幸は、本人次第かも知れませんが、傍から見て可哀相に思える...
      「それだけ相手を信じてるから」
      んーー男は、それを利用するのか、、、嫌ですね。
      幸不幸は、本人次第かも知れませんが、傍から見て可哀相に思えるような事にならないようにしたい(何だか反省しちゃいました)。
      2012/06/26
  • 『或る女』とはまさしく有島本人のことだ。日本にもアメリカにも帰ることができなくなった女。船に揺られ、海、すなわち「あいだ」を漂うことしかできなくなった女。それはブルジョアジーがプロレタリア文学を書くこと、日本人がキリスト者になること、その不可能な可能性が有島の揺れだった。『或る女』にジェンダーを観るなんて馬鹿馬鹿しい。それこそ、しらける。

  • 記録

  •  これは、「物語」の教科書です。

     一人の女が燃えるような恋をして、その時負った火傷の燻りに苦しみながら、やがて尽きていくまでの話。
    虚構と現実の混ざり具合、心理戦、その辺りの描写が本当に素晴らしい。

     上げるだけ上げて、後は容赦なく叩き落としていく感じがたまらないですね。一瞬だけ同情しかけても、次のページにはもう「仕方ねえよなあ」ってなってる。なかなかえげつないですね、有島先生。

  • 明治期の不倫小説。男を翻弄し男の人生を狂わせる或る女の話。実の娘と二人の妹がおり、家族思いではあるが、強い男との快楽に溺れ、男を凋落し、金を巻き上げることも厭わない。最期は金策尽き、病死。時代は日露戦争前夜の1902年ごろ。注釈を入れて600ページもあり、また文庫本でありながら、1ページ18行という構成で、かつ、ほとんど段落分けがなく、ぎっしり文字が詰まっている。読むのに10日以上もかかってしまったが、読み応え十分。

    <登場人物>
    早月葉子 主人公。25-26歳。木村との結婚に向け、アメリカへ旅立つ準備から物語は始まる。鎌倉丸船内で倉地と出会い、肉欲に溺れる。病気を理由にアメリカ上陸を拒否、同船でそのまま日本に帰国し、倉地と同居する。この破廉恥行為は新聞沙汰になるが、マスコミの犠牲者であると主張する。二人の男の金で贅沢な暮らしを送るが、最後は金策が尽き、病死。
    早月愛子 上の妹 16-17歳。姉に反発している。
    早月貞代 下の妹 13-14歳。終盤、病気にかかる。
    早月定子 葉子の娘。乳母に預けている。4-5歳か?
    木村貞一 フィアンセ。アメリカ在住。ビジネスの成否で浮き沈みが激しい。金ができた時は葉子に仕送る。最後まで葉子を信じていた。
    木部孤きょう:葉子の最初の夫。冒頭、葉子と木部は汽車の中で再会する。
    古藤義一 木村の友人であり、葉子に対する警告者
    倉地三吉 鎌倉丸事務長。肉体派。葉子と肉体関係を結ぶ。葉子を囲い、妻子とは離縁する。葉子との不倫が新聞沙汰となり、それが原因でクビになる。海外で得た人脈を通じ、日本の情報をロシアに売り、大金を稼ぐ。最後は官憲に追われ、逃走。葉子への仕送りも途絶える。
    岡義夫  葉子に憧れる青年。葉子を姉と見ている。葉子には馬鹿にされている。愛子といい仲になりかける。
    田川博士 名士。鎌倉丸に乗船
    田川婦人 鎌倉丸に乗船。葉子と倉地の不倫に気づき、新聞社に情報を売る。


    2013.03.24 借りる。
    2013.04.22 読了
    2013.08.14 ブログ記事公開

  • 今年は有島武郎生誕140年。クリスト教徒のくせに不倫をした上、心中自殺を遂げた人であります。故に内村鑑三は激怒しました。享年45。
    『或る女』は彼の作品中でも代表作と目されます。ドナルド・キーン氏も絶賛してました。
    主人公の「或る女」こと早月葉子にはモデルがあり、それは国木田独歩の前妻である佐々城信子であります。独歩自身は「木部孤笻」として登場します。

    葉子は十代で木部孤笻と恋に落ち、周囲の反対を押し切り結婚、一女(定子)を儲けますが、すぐに木部孤笻に失望して逃げてしまふ。そして両親亡きあとに、米国の木村なる実業家の元へ嫁ぐことになります。しかしこれは生活の為で、葉子には木村に対する愛情はなかつたのであります。
    米国行きの船旅中に、今度は船の事務長である倉地と恋に落ちます。しかし彼には妻子がゐました。それを承知で不倫の恋に陥る葉子。米国に上陸するものの、もう木村には完全に関心はなく、病気を理由に日本に帰つてしまふのです。酷い奴だ。

    日本では倉地との事実上の夫婦生活を始め、妹の愛子と貞世をも呼び寄せます。しかし倉地は新聞記事で不倫を暴かれ、醜聞で職を失ひます。やむなく彼は裏のヤバイ仕事に手を染めるのですが......
    一方木村は葉子を諦めきれず、手紙と送金を継続します。葉子は木村と結婚する気は皆無なのに、金だけは送らせてゐました。やはり酷い奴。

    葉子は次第に倉地の自分に対する愛情を疑ふやうになります。美しく成長する妹の愛子や貞世にも嫉妬してしまふ。倉地のみならず木村の友人・古藤や、船旅中に知り合つた青年・岡にも、愛子との関係を疑ふのでした。ちなみに古藤は葉子からバカにされてゐますが、常に本質を見抜いてゐるのが古藤でした。古藤のモデルは有島本人らしく、好い男に描かれてゐます。
    嫉妬から貞世に辛く当るやうになり、それが一因で貞世は腸チフスを患ひます。葉子は後悔し、必死の看病をしますが、自らも病に倒れます。

    その後の葉子は段々と被害妄想が酷くなり、常人とは思へぬ言動を繰り返すやうになります。周囲の人間も次第に遠ざかり、それがますます葉子に疑心暗鬼を生じさせます。美しかつた葉子も、すつかり痩せこけて窶れてしまふ。かつての妖艶さは見る影もない......

    モデル小説といふことで、発表当時はあまり評価されなかつたやうです。通俗文学と見做されたのですね。小説の後半は事実とはかけ離れ、あまりの相違に佐々城信子は激怒したとか。うむ、さうだらうなあ。
    しかし徹底したリアリズムに支へられた本作は、ヒロインの悲劇(まあ、自滅といふか自業自得なのだが)を感情を交へる事無くハードボイルドに描ききつた佳作と申せませう。使用単語や言ひまわしに独特なものがある為、現代読者にはとつつきにくいかも知れませんが、そんなことも忘れるほど迫力に満ちた一作であります。

    デハデハ、今夜はこれでご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-741.html

  • とにかく長い長編作品。
    葉子が美貌で生きていったが、妹と住むようになり夫からも見放され、破滅していくお話。
    心理描写はすごいと思う。

  • 葉子はとんでもない女だけど、世の女性は少なからず葉子に憧れる部分があると思う

  • 安定を得るたび、心おどる体験を思い出しては
    なにもかも台無しにせずいられない
    どうしようもない女であるが
    元をたどれば、その美貌ゆえに
    精神の不実を疑われがちな幼少時代を送った恨み
    そいつを晴らしたいとする怨念が捨てきれないわけだ
    羨望のあまり足を引っ張ってくる連中に
    目にもの見せてやりたいのだ
    しかし結局はその場の快楽に身をゆだね
    流されるばかりの人生だった
    やくざな船員の情婦になってそれを隠しつつ
    アメリカに働く許婚をだましてカネを引き出すという
    ろくでもない綱渡りも
    みずからの美貌のみを担保とする
    いきあたりばったりにすぎなかった
    しかしやがて自分より若い妹たちを迎え入れたとき
    それへの対抗心と、情人への猜疑心で
    彼女の心は徐々にこわれてゆく
    「本当の自分」なんて、刹那の存在にすぎない
    だとすれば人の最後に残るものは…

全48件中 1 - 10件を表示

或る女 (新潮文庫)のその他の作品

有島武郎の作品

或る女 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする