惜みなく愛は奪う 有島武郎評論集 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2000年4月10日発売)
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  • 本 ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101042060

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  • 人はみな、自分以外の人々や社会情勢に歩調を合わせて生きている
    エゴを抑え、他者への迎合的な生き方を受け入れることが
    社会人としての成熟と信じられている
    有島武郎もそう信じるひとりだった
    しかし、有島武郎の「内なる個性」は、そういう妥協を認めなかった
    人間の真の成熟は
    内面と外面を一体化させることで成し遂げられるのだと
    内なる声にて有島自身に強く呼びかけたのだ
    しかしそんなものはしょせん
    性善説の前提に立つ白樺派ならではの楽観論にすぎなかった
    その後、理想の楽園を夢見る有島は
    北海道にある自分の農場をすべて小作人に無料開放して
    破産への道をたどったあげく
    愛人とふたり、密室で首吊り心中してしまった
    (相手の旦那に慰謝料せびられたらしい)

    …結局、自然主義の貧乏文士たちに対して
    コンプレックスがあったということなのかもしれない
    それはそれで他者の痛みを軽んずる態度だが
    しかし少なくとも有島が
    自然主義にあって自分に足りないものを認め
    これを掴みとろうとしたことだけは確かで
    それはつまり他者と和解し、自分自身と和解するための
    ひとつの試みには違いなかった
    理想主義のゆえに
    どうしても、己の甘さを認めることはできなかったにせよ

  • キリスト教を棄てた著者が書いた実存主義的宣言。むずかしいが分かるところもある

  • さっぱり分からなかった。いや、言わんとすることが分からないわけではないけど、抽象的すぎで、尚且つ一面的であまり共感できるものではなかった。

  • あ-2-3

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著者プロフィール

1878年、東京生まれ。札幌農学校卒業。アメリカ留学を経て、東北帝国大学農科大学(札幌)で教鞭をとるほか、勤労青少年への教育など社会活動にも取り組む。この時期、雑誌『白樺』同人となり、小説や美術評論などを発表。
大学退職後、東京を拠点に執筆活動に専念。1917年、北海道ニセコを舞台とした小説『カインの末裔』が出世作となる。以降、『生れ出づる悩み』『或る女』などで大正期の文壇において人気作家となる。
1922年、現在のニセコに所有した農場を「相互扶助」の精神に基づき無償解放。1923年、軽井沢で自ら命を絶つ。

「2024年 『一房の葡萄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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