惜みなく愛は奪う―有島武郎評論集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (692ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101042060

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  • 人はみな、自分以外の人々や社会情勢に歩調を合わせて生きている
    エゴを抑え、他者への迎合的な生き方を受け入れることが
    社会人としての成熟と信じられている
    有島武郎もそう信じるひとりだった
    しかし、有島武郎の「内なる個性」は、そういう妥協を認めなかった
    人間の真の成熟は
    内面と外面を一体化させることで成し遂げられるのだと
    内なる声にて有島自身に強く呼びかけたのだ
    しかしそんなものはしょせん
    性善説の前提に立つ白樺派ならではの楽観論にすぎなかった
    その後、理想の楽園を夢見る有島は
    北海道にある自分の農場をすべて小作人に無料開放して
    破産への道をたどったあげく
    愛人とふたり、密室で首吊り心中してしまった
    (相手の旦那に慰謝料せびられたらしい)

    …結局、自然主義の貧乏文士たちに対して
    コンプレックスがあったということなのかもしれない
    それはそれで他者の痛みを軽んずる態度だが
    しかし少なくとも有島が
    自然主義にあって自分に足りないものを認め
    これを掴みとろうとしたことだけは確かで
    それはつまり他者と和解し、自分自身と和解するための
    ひとつの試みには違いなかった
    理想主義のゆえに
    どうしても、己の甘さを認めることはできなかったにせよ

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