銀花の蔵 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2022年10月28日発売)
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感想 : 17
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  • 本 ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101043517

作品紹介・あらすじ

私は、この醬油蔵の当主になる! 大阪万博前夜。父の実家である奈良の由緒ある醬油蔵で暮らすことになった少女、銀花。蔵を切り盛りする祖母の多鶴子ら一家に馴染もうとするが、母の盗癖、祖母と父の不仲、自らの出生に関する真実に悩む。やがて成長し蔵を継ぐため奮闘する銀花は、一族の秘められた過去を知ることに――。家業に身を捧げ、新たな家族を築く女性の半生を力強く描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 醤油蔵を守るために奮闘した銀花の半生を描いた大河小説。

    複雑な家庭事情は挟まれているけれど、ドロドロ感は今までに読んできた遠田潤子作品にしては薄かった。
    基本は波乱万丈な女性の奮闘ストーリー。でも、ところどころちょっとしたミステリー要素があって面白い。物語の序章で蔵から子どもの頭蓋骨が出てくる時点で“何事??”と引き込まれる。いろいろな事件が次々に起こるからそんなに飽きずに読めた。

    夢を追いかけてしまい家業が身に入らない父と、盗癖のある内気な母に振り回される子どもの銀花がとても健気。(子どものころだけでなく、大人になってからも周囲の人にかなり翻弄されてしまうのだけど)
    生きていくうえで避けられない身近な人の死も、いろいろな形で描かれている。突然の別れや、ある程度の心の準備期間のあった別れ。それらとどう向き合ってどう立ち直るのか、銀花の姿に教えられる。
    たくさん泣いて、怒って、落ち込んで。それでも何度でも前を向く銀花。こんなことを言ったら時代錯誤?になってしまうかもしれないけれど、やっぱり女性は強いのかな。


    「生きてる限り…たぶん、かわいそうは続くんやよ」

  • 遠田潤子『銀花の蔵』新潮文庫。

    数奇な運命を背負った女性の半生記という感じでストーリーは展開するのだが、その実は主人公の女性が醤油蔵を守り続ける一族の業と宿命を乗り越えて、本当の家族を造る姿を描いた何とも重厚な物語であった。

    失念していた。遠田潤子の小説は一筋縄ではいかないのだ。

    画家を夢見ていた父親の尚孝が実家の醤油蔵を継ぐことになり、父親と母親の美乃里と3人で大阪から奈良に引っ越し、新たな環境の中で暮らすことになった娘の銀花。意地悪な父親の妹で銀花の一つ年上の桜子、母親の盗癖、祖母の多鶴子と父親の不仲、自らの出生の秘密に悩みながらも銀花は成長していく。しかし、銀花が中学3年生になった時、父と醤油蔵の杜氏とが事故死する。

    少しずつ壊れていく母親、銀花をなかなか受け入れない多鶴子。醤油蔵を継ぐために奮闘する銀花であったが、運命の歯車は思わぬ方向へと銀花を誘う。思わぬ形で一族の秘密を知ることになった銀花は……

    本体価格800円
    ★★★★★

  • 面白かった!醤油蔵を継いだ銀花の一代記。家族の再生の物語。ミステリー要素もあり。
    どんな困難でもとにかく健気で前向きな銀花に好感が持てます。

  • 面白かったです。最初、読み始めた時は、ミステリー好きの私が、なぜこの本を買ってしまったのか、後悔しましたが、中盤に差し掛かってきたらどんどん面白くなってきました。

    父親がいなくなってしまったところから、急かされるように次を求めて読み進めていった感じです。銀花の人生が、非常にドラマチックで、不幸が次々と襲ってくるので、何処で、休憩を挟もうか、悩みながら読んだくらいです。

    話は主人公の銀花を中心にか語られていきますが、過去を振り返る場面などが印象深かったです。彼女以外の視点で語られる事実が、銀花視点からの事実と違っていて、それを擦り合わせて、分かる真実の残酷さに何度も心揺さぶられました。

    そして、最後。幸せな気持ちで終わりました。何よりも、彼女を取り巻く家族の形が好きだなと思いました。

  • 醤油蔵の跡取り息子をお父さんに持つ、銀花。
    銀花の複雑な生い立ち、彼女が当主になるまでの醤油蔵の存続。家族の紆余曲折が描かれています。

    初めての作家さんでした。
    めちゃくちゃ,良かった
    時は、1960年代。大阪万博へ行くシーンがありました。
    生まれてきたこと、育った環境に抗えなさ。彼女には、次々に試練が、、
    電車の中で読んでいて、ほろっと涙がこぼれました。

    家族とは、血族とは?
    深く考えさせられる一冊でした。
    遠田さん、もっと読みたいです!
    おすすめあれば,是非!




    ネタバレあり備忘録


    銀花ちゃんお母さんの窃盗障害。
    お父さんの画家として生きたいという苦悩。義母の長年言えなかった子供の生い立ちの苦しみ。
    銀花ちゃん、剛くん、あなた達の苦悩が痛いほどに伝わる。

  • 奈良、醤油蔵を継いだ女の子。父は絵描きで、才能はなく、経営の才能にも恵まれず早く死去。母は手癖が悪く盗んでしまう病気。そして、父とは血が繋がっていない事を知る。幼馴染は母の万引きが原因で人殺しになってしまう。
    不幸の大集団の中で醤油蔵を継いで生きていく。
    面白いけど、作りすぎじゃなかろうか。

  • 久々に、夢中になって読みました。家族のそれぞれの思い。想い。一人一人の生き様。
    これからも重いしがらみを背負って行くが、前に進んで行く強さと意志。
    羨ましいです。

  • 202211/生い立ちやキャラ設定含め毎回一気に読まさる。今迄の遠田作品とはちょっとテイストが違う気がするが、やっぱり遠田潤子ワールドではある…。

  • 家族という、一度なった形はその時々で無情で疎ましく逃れ難い。
    家族という世界から、自分をつくりあげ、自分の世界を立ち上がらせていくような物語。

  • よくあるような一人の女性の波瀾万丈ながら最後はハッピーエンド的ストーリーかと思ったら、ほんのりとミステリーの要素もあり、いい意味で期待を裏切られた。
    毒親って、虐待とか分かりやすく酷いことをする親だけではなく、色々なタイプがあるんだなぁ、と思った。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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