- 本 ・本 (459ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101044026
感想・レビュー・書評
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利休と秀吉、ともに茶の世界・武士の世界で頂点を極めた2人の愛憎劇ともいおうか…
下賤な生まれからくる秀吉の「ご気分次第」という宿痾が年を重ねるごとに捻ねていくさまがある意味哀れを誘う。
[茶は湯を沸かして飲むまで]と透徹し切ったような利休でさえも生きる術はその宿痾に振り回されなければならなかったことも淋しい。
結局、利休は腹を切ったことによって自身の世界を護り秀吉は自身の唯一均衡した世界を喪ったのだ…と感じた。 -
もってまわったふうの文体が好きです。言葉は、ストーリーのないところで言葉自身が劇的になる潜在力を秘めていると思います。その点でこの文体は、確実に作品構築に大きな一役を買っていると感じました。
これだけ秀吉と利休の人間性がクローズアップされていると、ほんの感情の揺らぎやタイミングによっては歴史に“もしも”があったかも!とさえ思ってしまいます。でも、やっぱりこの結末は必定なわけです。そこに、2人の複雑な感情のもつれを超えて、抗いがたい巡りあわせの波を感じました。 -
なぜ利休は死ななければならなかったのか?と興味を惹かれて手に取った作品。
写実的な作風で知られる作者だけあり、丁寧な情景・人物描写は当事者の間で覗き見ているような臨場感がある。日本語がとても美しいと感じた。
(レベルが高く、とても再現はできない…)
そうして直喩比喩を交えて丁寧に抉り出された個々の性格と情勢の変化を感じ取るごとに、彼らをやむを得ない結論に追い込んでいく。見事な納得感をくれる。
描写の妙によるダイナミックさが清々しい作品としておすすめしたい。 -
高校の現国、英協の添削で『秀吉と利休』に
初めて触れた。
おそらくP25「もとより利休は」からはじまる
含蓄ある心理描写の箇所だったように思う。
その時から数十年、「秀吉と利休」「野上彌生子」
のことはずっと頭の片隅にあった。
最近になってふと『秀吉と利休』を読もうとなった。
そういう歳になったのかも知れない。
スタンダールの『赤と黒』、
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』
を読み始めたときに似て、重厚感に圧倒された。
野上彌生子のことは全然知らなかった。
何かで読んだが、
「漱石から受けた
『漫然として年をとるべからず
文学者として年をとるべし』
という言葉を『生涯の御守り』」としたという。
「漫然として年をとるべからず
文学者として年をとるべし」
か、好きな言葉だ。
生き方すべてが重層的なのだと思う。
こういう文章はそうは書けない。
宮下英樹の漫画『センゴク』を読んでいるので
「山崎の合戦」とか、いたるところで補助的に
描写が頭に浮かぶ。
いろんなところで拮抗した心理、状況が描かれるが
P122「五」からはじまる紀三郎のわだかまり描写は
秀逸だ。
秀吉と利休という日本の歴史の一つの
極みを取り上げている時点で究極だろうが、
紀三郎のこの箇所も日本人の心理という点で
日本文学の一つの頂点だと思う。 -
小説でありながら、史実がそうであったかのように錯覚させられる。緻密で説得力に富む素晴らしい内容だった。平易な文章ながらそれの積み重ねで人物の心の動きが細やかに描かれていて、とても面白かった。
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この題材を作家が選ぶ理由は何だろうか?
本作を読みつつ考えたが纏まらず。がホモセクシャルな関係性に何かを見出しているような気が。
その意味で本作の掘り下げは少々物足りないか。
利休を死に至らしめる筋があっさりし過ぎかなぁ。
あと歴史ものとしての言葉遣いに幾つか違和感を覚える箇所あり。
悪くはないが、、、というのが正直なところ。 -
命をとりあげた秀吉は何も奪い取ることができず、守るべきものを守った利休は命をくれてやった。読者は無論、秀吉と利休の心理戦の結末は知っていてこの本に臨むわけである。決裂に至る過程を追う、糸一本の緊張をはらんだ文章が、いや見事。
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最初は入り込めなくて読み進めるのが大変だったが、後半にかけての盛り上がりは素晴らしかった。面白かった。字が小さいのが難点。
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大河ドラマ「江」で、主人公よりも秀吉と利休の関係性のほうが気になったので。と、いったら、母に勧められた一冊。もう絶版で、家の本棚にあったのがラッキー。
むかしの新潮文庫は字が小さかったのだなぁ・・・。 -
2010年10月28日読了。秀吉と利休の波乱の関係を書くのかと思ったけど、わりと日常描写が多くて新鮮な感じ。利休が秀吉にとって茶人としてだけではなく、ブレーンというか秘書のようなことをしていたことが描写されてる。女性作家らしく料理の描写が細かく美味しそうだった。
野上弥生子の作品






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