画家とモデル 宿命の出会い [] (新潮文庫)

  • 新潮社 (2023年2月25日発売)
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  • 本 ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101045313

作品紹介・あらすじ

生涯独身を貫き、人知れず青年のヌードを描いたイギリス屈指の肖像画家サージェント。身分違いの女公爵への恋文を絵に潜ませた宮廷画家ゴヤ。遺伝性疾患のために「半人半獣」と蔑まれた少女を描いたイタリアの画家フォンターナ。15年にわたり人妻と密会して描き続けたリアリズムの巨匠ワイエス……。不世出の画家たちが画布に刻みつけた、モデルとの濃厚にして深淵なる関係を読み解いた論集。

感想・レビュー・書評

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  • 絵画に興味がない人でも楽しめるように、絵と歴史的解説がセットでドラマチックに描かれている。ボリュームも多過ぎず、隙間時間にストレスなくサクッと歴史の勉強もできるお手軽本。短編解説集のようになっているが、気になってしまってトントントンと次々読み進めてしまう。新たなジャンル発掘を目論んでいる人に是非読んでほしいオススメ本。

  •  展覧会場などで肖像画を見て、一体何を思うだろう。
     画家の画法や技量の巧拙はもちろん考えるとして、モデルの表情、姿勢、着衣などから、この人物は一体誰なのだろう、画家とはどういった関係にあるのだろうといったことを推し量ろうとするだろうか。

     本書は、『怖い絵』で有名な著者が、画家とモデルの関係を巡るエピソード18編の文章をまとめたものである。
     ゴヤ、ベラスケス、レンブラントといった大画家から、モデルと言えばすぐ連想されるシャガール、モディリアーニも紹介されているが、あまり観ることのない画家たちも取り上げられている。一編一編のエピソードを通して、この絵にはそういう背景があったのか、モデルとはそのような関係があったのかということなどを知ることができて、とても興味深かった。

     マネの絵に描かれたことでも有名なベルト・モリゾ、強烈な差し色と曲線が特徴的なタマラ・ド・レンピッカ、長年にわたり密かに一人の女性 ”ヘルガ” を描き続けたワイエスに関するものなどは、実にドラマティックだ。

     一番印象に残ったのは、多毛症に生まれた少女、トニーナ(アント二エッタ・ゴンザレス)をフォンターナが描いた一枚の絵に関する文章。多毛症の人間が半獣半人の存在として見世物の扱いを受けたことは文化史の本などで取り上げられており、この絵も挿入図版として見たことがあった。著者はこう語る。「二人の会話がどの程度通じたのかもわからない。しかし本作を見れば言葉はいらない。彼女たちの心は触れ合ったのだ。この人は優しい。この子は可愛らしいーそれが互いの結論だった。そうでなければどうしてこのような愛らしい肖像が生まれるだろうか」。絵に描かれている、つぶらな瞳、思春期の少女らしいはにかみを漂わせた小さな赤い唇、ふっくらとしたやわらかな手を描写した上で、こう結論する、「画家とモデルがいっしょに創り上げた、幸せな一枚」。そうであったことを祈りたい。

  • ロックスターとミューズとの物語はやっぱり胸にグッとくる。解説文もよき。

  • 「画家とモデル」と言われると、あとがきや解説にもあった通り、男性画家と美人モデルを想像しがちだが、それだけに留まらないのが中野先生。
    勿論、妻に隠したまま愛人を描き続けたなんていう某有名画家の話もあるが、個人的に印象的だったのは、ある女性画家の話。
    多毛症の少女をあんなに愛くるしく、そして慈愛に満ちた視線で描いた絵に持っていかれた。
    彼女に対する当時の世間での価値観や評価をものともせずに。
    絵の背景を知った方がよりその絵に入り込めるのは、確かにその通りだとは思うが、説明されなくても伝わってくるものも確かにあると思う。
    この絵はまさに、そうだと思う。
    説明不要の愛。

    他にも画家とその絵のモデルに関する様々なエピソードが盛りだくさん。
    ベタなものから、変わったものまで。
    中野先生節は今回も健在で、読みやすく勉強にもなる一冊でした。
    本編中には実物が掲載されていない絵のエピソードも多数出てくるので、ぜひ画像検索しながら読むといいかと。

  • 晩年に得た真のミューズ
    「飛んでいってしまった」
    母として画家として
    守りぬいた秘密
    レンピッカ色に染める
    愛する母をマリアに
    大王と「ちびの閣下」
    伯爵の御曹司とダンサー
    野蛮な時代の絶対君主に仕えて
    愛のテーマ
    過酷な運命の少女をみつめて
    真横から捉えた武人の鼻
    破産型の芸術家に全てを捧げて
    妹の顔のオイディプス
    宗教改革家との共闘関係
    画家の楽しみを照り返す
    呪われた三位一体
    「世紀の密会」
    あとがき
    主要参考文献

  • アントニエッタ・ゴンザレスの肖像と画家が好き。

  • 面白かった。
    絵画を観る眼がまた少し広がった気がする。
    モデルと言っても単純ではありません。
    娘や略奪婚や、そして…
    シャガールやレンピッカやベラスケスなど、
    その良さを再認識できたけど、
    フォンターナって知らなかった。
    少女の絵、そのストーリー。ちょっと感動した。

  • おもしろかった!お風呂で読んだからしわしわ

  • タイトル通り、画家とモデルの「運命の出会い」が書かれた本。サージェントの話が良かった。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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