日本の伝説 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101047027

感想・レビュー・書評

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  • 柳田国男さんの「日本の伝説」集ですね。
    「日本の昔話」の姉妹篇ともいえる作品です。
    全部で10話紹介されています。それに柳田さんからの児童にメッセージが添えられています。
    昔話と伝説とは違う分野の作品との事でした。
    昔話は『むかしむかしあるところにおじいさんがいました…』特定の場所や人物が無く、わりとどこの地域にも似たような話があります。
    伝説は地域に根差して、場所も人物もある程特定出来て歴史的に伝承で語られています。
    解説者によると「昔話と伝説とをごちゃにしてしまって「民話」といったりしているが、「民話」という語は、その用語自身は、学問上のことばではない。昔話と伝説とから材料をとって、別の形に物を創り出してしまったものだ。」
    柳田さんの功績でそうした区別がなされてきた背景があることを明らかにされています。
    ですから、「日本の昔話」はわかりやすく話しかける読みやすい文章でしたが、「日本の伝説」は細かい字で切々と語りかける文章で綴られています。
    「昔話」「伝説」「民話」何れも興味ある文学なので色々読んでいきたいですね。

  • 巻頭の「世におくる言葉」、「はしがき」に感動した。ひらがなをたっぷり使って活字でも流れるような文面。であります口調がこんなに柔らかいものになれるとは。ゆったりとやさしい声で語られる高いのぞみに、この国の伝説と昔話とへの心底からの愛着があふれる。

    “ 伝説と昔話とはどうちがうか。それに答えるならば、昔話は動物のごとく、伝説は植物のようなものであります。昔話はほうぼうをとびあるくから、どこに行ってもおなじ姿を見かけることができますが、伝説はあるひとつの土地に根を生やしていて、そうしてつねに成長してゆくのであります。雀や頬白はみな同じ顔をしていますが、梅や椿は一本一本に枝ぶりが変わっているので、見覚えがあります。かわいい昔話の小鳥は、多くの伝説の森、草叢のなかで巣立ちますが、同時に香りの高いいろいろの伝説の種子や花粉を、遠くまではこんでいるのも彼らであります。自然を愛する人たちは、常にこの二つの種類の昔の、配合と調和とをおもしろがりますが、学問はこれを二つに分けて考えてみようとするのがはじめであります。”

  • 昭和初期、すでに民間伝承は失われつつあった

  • かつては人々の身近に伝えられ、民間信仰と結びついて生活の一部となっていた伝説。「咳のおば様」「神いくさ」など、今では忘れ去られようとしている伝説を、民俗学の先駆者が全国で採集し、美しく平易な文章で残した名著。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB00157319

  • 日本の昔話が収集物としたら、この日本の伝説は収集物の分類と整理、紐づけの作業の賜物だと思う。
    ただの昔話と伝説を分かつもの。それは動物と植物を分かつそれであるという。こういう考察を変な定義づけではなく口語として自分のことばで語れるところに彼の学者としての矜持と確かな知性がうかがえる。考えるという行為を徒手空拳で挑み続けた人間に他ならない。
    伝説の方が確かに昔話よりもどこか静的で神聖ささえ与える感じがする。けれど伝説も昔話とともに生きている。昔話がある種の伝説にもなれば、伝説から様々なバリエーションの昔話が拡がっている。
    しかもそれらは、決して日本というだけでなく、どこか遠い時代の別の場所にも水脈のように通じているように思えてならない。驚き清水はモーセが荒野で杖をついて水を与えたことに似ている(しかもモーセはやはり年老いた老人的なイメージである)。
    国境の決め方や聖なる力のあるものにあやかる箸や袂石。それらが老婆や水辺、ひいては山という存在につながっているのは単なる偶然だろうか。
    そしてこうした伝説の数々は大人ではなく児童の友人として傍らに存在し続けていた。伝説と昔話の違いは子どもと大人の違いのそれではないかとさえ思える。誰もが子どもであり、誰もが最初から大人ではなかった。
    ここで想像力でがっちりと紐づけるのではなく、収集されたデータに基づいて考察をとめるあたり、ほんとうに堅実な学者肌のひとだったのだと思う。

  • 角川文庫版
    昔の人の日本語は綺麗
    これが子供向けに書かれたとは、昔の子供は難しい本を読んだものだと感心する

  • 昔話系は結構読んでるので、知ってるエピソードが多くて興味深かったけど、文体は多少読みづらいかも。
    アラビアンナイトとの相似点もあったりして、おもしろかったです。

  • 日本各地に伝わる、不思議な言い伝え。それらを分かりやすい文体で比較考察した一冊です。
    何故人々は、石や湖、山を畏れ、大切にしてきたのか。各地に伝わる様々な伝説は、どのようにして生まれてきたのか。これらの伝説が衰え、だんだんと失われつつある今、この本は改めて私たちに"伝説”の面白さを教えてくれます。
    章も豊富でさくさく読める、学問の書。

  • 民俗学の講義を受けているような感じ。

  •  “伝説と昔話とはどう違うか。それに答えるならば、昔話は動物の如く、伝説は植物のようなものであります。昔話は方々を飛びあるくから、どこに行っても同じ姿を見かけることが出来ますが、伝説はある一つの土地に根を生やしていて、そうして常に成長していくのであります。” と著者の柳田国男氏はこの本の冒頭で述べています。以前同著者の作品「日本の昔話」を読んだことがありますが、実際に面白味があるのは「昔話」の方で、そういう事があったと記載されているのが「伝説」という感じです。解説でも昔話は言語の形式を外しては語れない言語芸術のようなものであると書かれている一方、伝説は伝える内容が大事なのであって、その伝え方はどういう形でも一向に差し支えないと説明されています。
     この昔話や伝説ですが、現在はあまり聞かれなくなったように感じます。小さい頃に母親ないしは祖母などから聞いた記憶というものは大人になっても印象として残ると言われていますが、自分自身、有名なおとぎ話は記憶に残っていても、生まれ育った土地の「昔話」や「伝説」については全く記憶にありませんでした。幼少期に語り継がれることで残されていったものが消えかかっているのかとも思います。この本を読んで初めて自分の身近にある「伝説」というものにふれた感じがします。伝説や昔話はその土地の風土などとも密接に結び付いているものだと改めて感じましたが、自分たちの世代は生まれ育った土地との関係性が極めて薄くなっているようにも思いました。

    追記:生まれ育った土地の「昔話」や「伝説」については全く記憶にありませんと書きましたが、レビュー記載後思い起こしてみたら、小さい頃によく祖父に連れられ近くの夜泣き石がある城跡や、狸伝説が残っている寺に行ったことを思い出しました。

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著者プロフィール

民俗学者・官僚。明治憲法下で農務官僚、貴族院書記官長、終戦後から廃止になるまで最後の枢密顧問官などを務めた。1949年日本学士院会員、1951年文化勲章受章。1962年勲一等旭日大綬章。

「2021年 『新嘗研究 第七輯―三笠宮崇仁親王殿下に捧ぐ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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