聖者のかけら (新潮文庫)

  • 新潮社 (2023年11月29日発売)
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  • 本 ・本 (736ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101047614

作品紹介・あらすじ

聖フランチェスコの遺体はどこに消えてしまったのか──。特異な能力を有する修道士ベネディクトと、金の亡者たる助祭ピエトロは、使命を帯びて訪れたアッシジで、大いなる謎に遭遇する。ふたりはさまざまな人々と出会いながら、その核心に迫ってゆく。そして物語は驚愕のラストへ。神と聖人に篤き祈りが捧げられた中世イタリア。絶賛を浴びた冒険譚にして信仰の根源を問う本格歴史ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 待ってましたの文庫化。ハードカバーで買って読んだけど、また読もう。

    中世イタリアを舞台にした本格歴史ミステリにしてビルドゥングス・ロマン(良質で胸熱な青春小説と言い換えていい)でもある傑作。ミステリファンじゃなくても歴史に詳しくなくても読めるから、若い人にぜひとも手にとってほしい一冊。

  • なんやらのかけら、という言い方が好きではないので、題名だけで避けていたが、言語学バーリトゥードの文章が楽しすぎたので、同じ著者の長編本を読んでみたくて。
    ガッツリ1252年ローマ辺りのキリスト教会の内紛やら聖遺物の謂れやら史実が詳細に満載。歴史ミステリーとされるが、四方八方危機迫るというよりは、一本線をたぐったら解決したというかんじ。ベネディクトがとんでもなく面倒くさい。純粋な修道士ほど考え方が単純すぎて身近にいてほしくないものだ。ピエトロの常に清濁併せ吞む度胸が常に男らしい。

  • 川添さんの本だ、と思って読み始めた。
    だから、内容面について特段知識もなく、中世イタリアへの関心が特にあったわけでもない。
    さらに言えば、ミステリもそれほど好きではない。

    が、一ページ目から、中世イタリアの世界に拉しさられる。
    とても面白いのだ。
    今年の一番の収穫本だったかもしれない。

    物語はアッジシのフランチェスコの遺体が消えたという騒ぎから始まり、謎解きが始まっていく。
    イタリアの修道院の雰囲気、各会の相互や法王庁との関係、何より聖遺物に対する一般の人々をも巻き込んだ熱狂的な信仰。
    そういったものが描かれていくのだが、知識ゼロでも全く問題なく理解できるように書かれている。
    アッジシのフランチェスコと言えば、絵画の題材によくなっているし、小鳥に説法をするフランチェスコは音楽にもなっている。
    その程度の知識があれば、十分楽しく読める。

    人物たちも魅力的だ。
    主人公は二人。
    小さい時に家族を失い、聖女ジャコマの下で育てられ、長じてセッテラーネ村で助祭師をしているピエトロ。
    大貴族の家の双子の次男として生まれ、将来はどこかの修道院長になるべく育てられたベネディクトは、世間知らずで純朴な美青年。
    現実的で世の中の悪をも許容するピエトロは、知識と勇気で事態を動かしていく。
    モンテ=ファビオ修道院の修道僧ベネディクトは、子供のころから自分が「呪われている」と思い込み、戒律を守ることにだけ頑なになっている。
    ベネディクトが院長の命でピエトロのもとに派遣されることで、物語がはじまっていく。

    ベネディクトは、自分の苦しみばかりにかかずらわっていて、いわゆる謎解きの本筋になかなか関わらないかのように見える。
    だが、彼が「呪われている」と思いこむに至った特異体質が、後半謎解きに大きな役割を果たすことになる。
    すごい構想力だと思った。

    また、ベネディクトの悩みは、宗教小説として読んでも読みごたえがある。
    自分の信仰は間違っているのか、救いは得られるのかといった問いへの答えは、神は決して示しはしない。
    なんとなく、遠藤周作「沈黙」を思い出した。
    ベネディクトの葛藤は、フランチェスコを追うレオーネ、エリア・ポンバローネといった人々の思い、苦しみにも重なっていく。
    自分自身はキリスト教との縁はないけれど、どういう宗教なのかを考えるきっかけにもなった。

  • 最高にスリリングなミステリー!
    キリスト教内の複雑さや歴史について凄く勉強になりました。
    登場人物も魅力的で、主人公のベネディクトが精神的に成長していく様子にも心動かされました。

  • ミステリーとしてかなり面白いが、やはり宗教の部分にとっつきにくさがある。
    しかし、人物像の細かさや投げかけられる問いのわたしたちへの親和性が物語へ繋いでくれる良作。

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著者プロフィール

作家(言語学)
1973年生まれ。九州大学文学部言語学科卒、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、2012年から2016年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。主な著書は『白と黒のとびら』(東京大学出版会、2013年)、『精霊の箱(上・下)』(東京大学出版会、2016年)、『自動人形の城』(東京大学出版会、2017年)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(朝日出版社、2017年)、『コンピュータ、どうやってつくったんですか? 』(東京書籍、2018年)、『数の女王』(東京書籍、2019年)、『聖者のかけら』(新潮社、2019年)、『ヒトのコトバ 機械の言葉』(角川新書、2020年)、『ふだん使いの言語学』(新潮選書、2021年)、『論理と言葉の練習ノート』(東京図書、2021年)、『世にもあいまいなことばの秘密』(筑摩プリマ―新書、2023年)。

「2024年 『言語学バーリ・トゥード Round 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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