- 新潮社 (2024年2月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784101049519
作品紹介・あらすじ
誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望【のぞむ】。行方を追う兄の誠実【まさみ】は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望【のぞむ】はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなるーー。痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望【きぼう】」を探す優しいエールに満ちた物語。文庫化にあたり、書下ろし短篇を収録。
みんなの感想まとめ
失踪した弟を探す兄の物語は、希望と誠実という二人のキャラクターを通じて、愛や期待、そして自己理解を深める旅を描いています。兄は弟の行方を追う中で、彼の知られざる一面や自らの生き方を見つめ直すことになり...
感想・レビュー・書評
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寺地はるなさんは、人間の心の機微の表現がうまいといつも思う。ひとつの思いのあとの細かい表現や、自然描写もとてもすてきだった。
タイトルの「希望」を“きぼう„と読むか“のぞむ„と読むかで、タイトルから受ける印象がかなり違うと思う。どちらとも取れる読み方に、この小説のすべてが表現されているように感じた。
あらすじは、突然失踪した「律儀で几帳面」な弟の希望(のぞむ)を探すことになった兄の誠実(まさみ)が、弟の知り合いを訪ね歩くうちに弟の様々な顔を知っていく。そして誠実自身も自分の感情と向き合っていく。また過去に希望(のぞむ)と関わった人たちも過去に想いを馳せ、今の自分と向きあう······。といった感じ。
ことなかれ主義の兄と、相手の要求をすべて受け入れてしまう弟。家庭の影響で培われたものから、捜す兄と逃げた弟が新しく踏み出すまでの物語。自分自身がどんな人間かということを改めて考え、これからどうありたいかを考えるきっかけにもなる小説だった。
文庫化にあたり書き下ろされた短編は、希望のその後がわかり、穏やかで安心できる作品だった。
〈目次〉
柳瀬誠実と弟の話 1
山田由乃の話 もしくはコニー・アイランドの踊り子
柳瀬誠実と弟の話 2
柳瀬誠実自身についての話
柳瀬誠実と弟の話 3
有沢慧の話 あるいは花盛りの庭
柳瀬誠実と弟の話 4
シロツメクサと小平敦子の話
小平実花子の話と檸檬ドロップ
柳瀬誠実と弟の話 5
重田くみ子の話 または箱の中
柳瀬誠実と弟の話 6
光
解説 山中真理
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突然失踪した弟・希望ノゾミのゆくえを追う兄・誠実マサミ。希望のゆくえ、ね。
希望を捜し、彼と接点があった人とを訪ね歩く中で、自分が知らない弟の姿に出くわし、そして、弟と過ごした記憶をたどるうちに、誠実もまた自らの生き方を省みざるを得なくなっていく、みたいなお話。
現実を『見ずに済まそうとしてきた』誠実は、なんとなく誰しもそういうところはあるよなという感じで、読んでいてちょっとだけ胸が痛かったが、あのラストで浮かばれたのか、どうかな。
一方、自ら『空っぽなので』という希望の姿は、彼の失踪の謎から始まった話としては身も蓋もない。文庫のために書き下ろされた話でなんとか丸め込んだという印象。
好きな作者さんだし、うまく作られた話だとも思ったが、今回はあまり刺さってこなかった。 -
誠実は、失踪した弟希望の行方を追い掛け、様々な人から弟の人となりを聞いていく。
誠実は希望が人生を余裕で渡り歩いているよう感じていたが、希望の内面を知る。
それが誠実の考え方にめ変化を与える。
なかなか難しい話だと思った。
劇的な展開はなく、強い衝撃も感動もないけど、同じ境遇にある人や、他人に寄り添える人、読解力がある人は、きっと共感するのだろうと思った。 -
希望って、名前やったんか~と。
希望という名の弟を探す誠実と言う名の兄。いい人だと言われる希望、とりとめのない兄誠実・・そんな誠実とともに希望がどんな人だったのかと思いながら読んだ。
いくつか、残る言葉。「いい人でした悪い人でしたと、そんな単純な分類に落とし込んで、彼のことをわかったような気にはなりたくない」「柳瀬さんは柳瀬さんでした」 「他人が欲しがっているものを、ひたすら差し出し続ける人間はきっとどんどん心からっぽになっていく。自分の意見じゃなくて相手の言って欲しいことを勝手に汲み取って口にするような他人の欲求を際限なく受け止めようとする奴は苦し過ぎる」
本質すぎる。
もし希望と出会っていたら頼ってしまいそう。最後ちゃんと自分を持ってる希望になったし、誠実もとき放たれた
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読み進めるほど、心が締め付けられていく。登場人物の抱える課題が次々と浮き彫りになると同時に、その痛みや葛藤が自分自身にも突き刺さってくる。
人間には誰しも、良い面と悪い面がある。本来は混ざり合っているはずなのに、それを二極化させてしまうこと自体が、苦しみを生んでいる。自分にはグレーを許せるのに、なぜか他人には理想像を押し付けてしまう。それも無意識に。
芦田愛菜さんが、「その人自身を信じているのではなくて、『自分が理想とする、その人の人物像みたいなものに期待してしまっているのかな』と感じて〜(略)」と語っていたけれど、この小説はまさにそれを物語に落とし込んだようだ。
相手に期待してしまうことは、結局自分自身の可能性まで狭めてしまうのかもしれない。
この小説は、読む人によってまったく違う表情を見せると思う。そして、それぞれの感想の中に、その人の本質が隠れているように感じた。
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図書館に早くから予約しておいたので、早目に借りられた。ありがたい。
一気読みだった。
本当に上手い作家さんだなぁ。
なのに解説がぶち壊し。
文庫版の解説を、私は先に読んでしまうことがあるが、本書ではそうしなくて本当に良かったと思うし、これから本書を読む方は先に解説を読まない方がいいと思う。
時々、「まだ本文を読んでいない人は、ここから先は読まないでくれ」と、ちゃんと断り書きのある解説は今までいくつか目にしたことはある。
しかし本書の解説は、「この解説を先に読んでいる読者のために、ここでは詳しく書かないでおくが、」(290ページ)と書いてあるので安心して読んでしまう。
しかしがっつりネタバレ級に詳しく書いちゃっているではないか!
騙されて落とし穴に突き落とされた感じ。
私は後から読んだから助かったけれど、それでも酷く憤慨している。
ダメだって、本当にこの解説!
【追記 以前にもぶち壊し解説があり、レビューにも書いたはずなので探した。
『フォルトゥナの瞳』(百田尚樹著)だったことが判明。どちらも書店員さんによる解説。
やはり解説は、小説家かプロの書評家じゃないとダメだと思う。】
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暗いお話…
失踪した弟を探す兄も暗いし、
母親も嫌な感じ…
登場人物もみんな変わってる感じ…
だけど、わたしはこの小説嫌いじゃなかったな。
不思議な主人公をめぐって、
いろんな人出てきたけど、
現実離れしてるような、かといって、失踪とか、意外とよくある話のような気もするし。
だけど、わたしの周りでは起きませんように… -
寺地さんの小説は難しい
難しいのにすごく気になる
捉え所がないのに自分の気持ちの深い所がザワザワする…なんとも言えないこの気持ちを表現するのも難しく「ザワザワ」が的確なのかもよくわからない(^^;
生きづらい…そんな思いを抱えた人達が生きていく術、そしてその未来に少しでも光を見つける…紛れもなく誠実も希望も手探りで自分の人生を生きているのだろう。
傷付いたり居場所を無くしたり放浪したり迷いながら生きていく2人から寺地さんが何を描こうとしたのかどこに着地点を持っていこうとしたのか…その答えは分からない。
寺地さんの小説はいつもそんな気がする!
答えは「あなたの解釈です」と言わんばかり。
そして自分ではいつもコレ!って言葉で表現出来るような答えは出ないけど、自分が日頃感じてる思いや上手く表現出来ない心の中のモヤモヤを描いてくれている…だから惹かれる。
なんとなく気になって手に取る作家さん!
また他の小説も読んでみよう
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みんな、見えてる部分なんて、その人のほんの一部だよね。
家族だってそう。
そういう意味で、ただ事実として、人は基本的に孤独だ。
この本に出てくる親子関係はどれも歪んでいて、読んでいてちょっと苦しくなった。
世の中、そう「毒親」ばかりじゃないと信じたい。 -
最初は登場人物が誰も好きになれなくて、それでいて胸がざわついて私も誠実と同化して希望を追い求めてしまった。いい人じゃない事、立派じゃない事の方がむしろ当たり前なんだって最後には着地出来ました。オリジナルのラストも良いし、文庫化で新たに付け加えられた部分も良かった。何も重すぎる荷物を背負わなくてもいいんだよと言ってもらえた気がします。
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少し困った両親に育てられた兄弟のどちらが幸せだったのか
姿を隠すことで弟は何か救われたのか
失踪した弟を探すことで兄は何か救われたのか
終始澱んでいる感じですっきりしなかった
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自分は空っぽの箱。他人の気持ちに沿うように生きている。
自分って何だろう。他人が自分に求める姿、それに応えようとする自分、でも本当の自分は違うかも知れない。自分って、周りから見える自分も、自分自身での評価も合わせて自分のはず。だから一言で、どんな人なんて片付けられない。
空箱に何かを詰めるのは自分であり、周りの人でもあるのでは。 -
これはすごい。
寺地はるなさんのこの作品は、読めば読むほど自分の心がざわついてくる。
この物語の章の展開も秀逸だ。
大きな警察沙汰の事件があるわけではないのに、重大なことが少しずつ見えてくる重厚なミステリー小説のような展開で、章を読み終える毎に自分がハッとさせられることに気付かされる。
自分の奥底にある何かを突きつけられるようでいて不安になりつつ、自分以外に対しての距離感のようなものをつい測り直すような気分になった。
読後、不快感とも清涼感ともいえない、なんにも表現できない感覚が続いている。
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世間体ばかり気にして、経歴や見た目をひたすら磨いている自分が苦しくなる
でも中身を磨きたい、評価されたいとがむしゃらになってることもまた幸せではないかと思えた。
期待に応えたいと過剰に合わせてしまう弟と重ね合わせてしまった。いつしかそんな自分に慣れてしまったが、私も彼のように変わりたい -
希望の失踪を追った兄の誠実。弟の人間関係をたどることで誠実自身にも向き合っていくのがよかった。
それにしても、これにでてくる母親、父親が怖い考えを持った人ばかりで気分が悪かった。
希望と誠実、どちらも幸せになってほしいなぁ。 -
読み進めるにつれて、今まで読んだ寺地さんとは
ちょっと違うな、重い内容だなと思ったのだけど
読み終えてみると やっぱり寺地さんらしい作品だったと思える、一言では言い表わせない作品でした。 -
子供の頃から自分に向けられる期待にそうよう生きてきた。誰かに何を頼まれても「いいですよ」と言う。でも、自分の心の中は空っぽ…。悲しい人だな。でも、これから少しずつ「自分」を形作っていってほしい。
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付けも付けたり、兄弟の名前が、兄が誠実(まさみ)で、弟が希望(のぞむ)。これだけで、タイトルの意味がガラッと変わります。
しかも、こんな素敵な名前を付けた両親がまた、なんというか…この父親の酷さはかなり腹が立つ。
というか、それ以外にも、いろいろな家族関係が語られ。最近よく聞く「毒親」という言葉が浮かびます。個人的には、毒親って言葉、嫌いですが。
自分も親でもあるので感じるけれど。。。親も人の子、誰かに育てられた時期があり、誰しも育った環境での接した人の影響は受けると思う。でも、生まれながらの性格も絶対あるし。
例えば、両親が同じように接して育てたつもりでも、兄弟姉妹で、性格が同じになるわけじゃない。
自分自身も、弟とは全然性格違うし、でも似てるところもあるのかもしれない。今思えば、父はザ・昭和の父親だったなあと思う。けれどそれも、何十年経つと、笑い話になってたりする。
寺地はるなさんの作品は、まだ3作しか読んでないけれど、とても読みやすい優しい文体ながら、『自分と他人とは違うということ。人それぞれの生きづらさ、その形も種類も違うということ。でも、それを抱えて生きていって良いのだ』ということが主軸になっている気がします。
やっぱり自己肯定感が低いのって良くないなって思う。(特に日本人はその傾向強いよね)
私は私が好きで(笑ってもいいです)それは別に、自信があるとかそういうことじゃなくって、だって、自分は自分の人生しか歩けないし、自分を一番愛してあげられるのは自分じゃん、と思うからなのです。
基本、ミステリー派なので、グイグイと謎解きを楽しみ、本の中に没頭するのが好きな私ですが、そういった作品の合間に、時々差し込むように、寺地はるなさんの作品、これからも読んでいきたいなあ~と思いました。心がふんわりとリセットされる気持ちがします。 -
小説って、人間関係の温かな爽やかな部分に救われるものと、人のいやな部分・負の感情にひたすら共感できるものと2種類あるように私は思っているのですが、これは後者の小説。
タイトルの「希望」は人名です。ゆくえをくらました弟を、兄視点(毒親と不倫妻)、弟の周りの人(斜に構えている同僚)の目線から描いていくもの。
最後に彼の空っぽだった箱がなにかで満たされますように。 -
今回は正直合わなかった…。
登場する親が毒親ばかり。他にも人を見下す男とか、読みながら嫌悪感が増すばかりで、しんどくなってしまいました。
だけど、こういう親もいるのだろうなと…。
親に価値観や生き方を押し付けられ、劣等感を植えつけられ、そんな親のもとで育った子どもは自己肯定感が極端に低くなったり、過剰に人の顔色をうかがうようになってしまう。
何て窮屈でしんどい人生なんだろう…。
毒親のもとで育った誠実は、見てみぬふりに慣れてしまった大人になる。
そして今、失踪した弟がどんな人間だったのか知らないことに改めて気づく。
弟を知る人に話を聞けば聞くほどますます混乱してしまう…。
『実像とはなんだろう。自分の思う自分こそが実像なのか。人はそんなにも正しく自分の実像をとらえられるものだろうか。外見すら鏡や写真や映像を通してでなければ確認できないのに。』
確かにその人を一言で表すなんて難しい。
みんな幾つもの一面を持っていて当たり前。
最後まで読み終えましたが、個人的に消化不良気味でした。
今回は私には響かなかったけど、寺地さんの作品は自分では言葉に出来ないモヤモヤした気持ちを言語化してくれる。
無自覚な気持ちを掬い上げてくれるのでハッとさせられることも多くて好きな作家さんの一人です。
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著者プロフィール
寺地はるなの作品
