希望のゆくえ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2024年2月28日発売)
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  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101049519

作品紹介・あらすじ

誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望【のぞむ】。行方を追う兄の誠実【まさみ】は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望【のぞむ】はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなるーー。痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望【きぼう】」を探す優しいエールに満ちた物語。文庫化にあたり、書下ろし短篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 突然失踪した弟・希望ノゾミのゆくえを追う兄・誠実マサミ。希望のゆくえ、ね。

    希望を捜し、彼と接点があった人とを訪ね歩く中で、自分が知らない弟の姿に出くわし、そして、弟と過ごした記憶をたどるうちに、誠実もまた自らの生き方を省みざるを得なくなっていく、みたいなお話。
    現実を『見ずに済まそうとしてきた』誠実は、なんとなく誰しもそういうところはあるよなという感じで、読んでいてちょっとだけ胸が痛かったが、あのラストで浮かばれたのか、どうかな。
    一方、自ら『空っぽなので』という希望の姿は、彼の失踪の謎から始まった話としては身も蓋もない。文庫のために書き下ろされた話でなんとか丸め込んだという印象。
    好きな作者さんだし、うまく作られた話だとも思ったが、今回はあまり刺さってこなかった。

  • 図書館に早くから予約しておいたので、早目に借りられた。ありがたい。

    一気読みだった。
    本当に上手い作家さんだなぁ。

    なのに解説がぶち壊し。
    文庫版の解説を、私は先に読んでしまうことがあるが、本書ではそうしなくて本当に良かったと思うし、これから本書を読む方は先に解説を読まない方がいいと思う。

    時々、「まだ本文を読んでいない人は、ここから先は読まないでくれ」と、ちゃんと断り書きのある解説は今までいくつか目にしたことはある。
    しかし本書の解説は、「この解説を先に読んでいる読者のために、ここでは詳しく書かないでおくが、」(290ページ)と書いてあるので安心して読んでしまう。
    しかしがっつりネタバレ級に詳しく書いちゃっているではないか!
    騙されて落とし穴に突き落とされた感じ。
    私は後から読んだから助かったけれど、それでも酷く憤慨している。
    ダメだって、本当にこの解説!

    【追記 以前にもぶち壊し解説があり、レビューにも書いたはずなので探した。
    『フォルトゥナの瞳』(百田尚樹著)だったことが判明。どちらも書店員さんによる解説。
    やはり解説は、小説家かプロの書評家じゃないとダメだと思う。】

  • 暗いお話…
    失踪した弟を探す兄も暗いし、
    母親も嫌な感じ…
    登場人物もみんな変わってる感じ…

    だけど、わたしはこの小説嫌いじゃなかったな。

    不思議な主人公をめぐって、
    いろんな人出てきたけど、
    現実離れしてるような、かといって、失踪とか、意外とよくある話のような気もするし。

    だけど、わたしの周りでは起きませんように…

  • みんな、見えてる部分なんて、その人のほんの一部だよね。
    家族だってそう。
    そういう意味で、ただ事実として、人は基本的に孤独だ。

    この本に出てくる親子関係はどれも歪んでいて、読んでいてちょっと苦しくなった。
    世の中、そう「毒親」ばかりじゃないと信じたい。

  • 寺地さんの小説は難しい
    難しいのにすごく気になる
    捉え所がないのに自分の気持ちの深い所がザワザワする…なんとも言えないこの気持ちを表現するのも難しく「ザワザワ」が的確なのかもよくわからない(^^;
    生きづらい…そんな思いを抱えた人達が生きていく術、そしてその未来に少しでも光を見つける…紛れもなく誠実も希望も手探りで自分の人生を生きているのだろう。
    傷付いたり居場所を無くしたり放浪したり迷いながら生きていく2人から寺地さんが何を描こうとしたのかどこに着地点を持っていこうとしたのか…その答えは分からない。
    寺地さんの小説はいつもそんな気がする!
    答えは「あなたの解釈です」と言わんばかり。
    そして自分ではいつもコレ!って言葉で表現出来るような答えは出ないけど、自分が日頃感じてる思いや上手く表現出来ない心の中のモヤモヤを描いてくれている…だから惹かれる。
    なんとなく気になって手に取る作家さん!
    また他の小説も読んでみよう

  • 最初は登場人物が誰も好きになれなくて、それでいて胸がざわついて私も誠実と同化して希望を追い求めてしまった。いい人じゃない事、立派じゃない事の方がむしろ当たり前なんだって最後には着地出来ました。オリジナルのラストも良いし、文庫化で新たに付け加えられた部分も良かった。何も重すぎる荷物を背負わなくてもいいんだよと言ってもらえた気がします。

  • 自分は空っぽの箱。他人の気持ちに沿うように生きている。
    自分って何だろう。他人が自分に求める姿、それに応えようとする自分、でも本当の自分は違うかも知れない。自分って、周りから見える自分も、自分自身での評価も合わせて自分のはず。だから一言で、どんな人なんて片付けられない。
    空箱に何かを詰めるのは自分であり、周りの人でもあるのでは。

  • 世間体ばかり気にして、経歴や見た目をひたすら磨いている自分が苦しくなる
    でも中身を磨きたい、評価されたいとがむしゃらになってることもまた幸せではないかと思えた。

    期待に応えたいと過剰に合わせてしまう弟と重ね合わせてしまった。いつしかそんな自分に慣れてしまったが、私も彼のように変わりたい

  • 子供の頃から自分に向けられる期待にそうよう生きてきた。誰かに何を頼まれても「いいですよ」と言う。でも、自分の心の中は空っぽ…。悲しい人だな。でも、これから少しずつ「自分」を形作っていってほしい。

  • 付けも付けたり、兄弟の名前が、兄が誠実(まさみ)で、弟が希望(のぞむ)。これだけで、タイトルの意味がガラッと変わります。
    しかも、こんな素敵な名前を付けた両親がまた、なんというか…この父親の酷さはかなり腹が立つ。
    というか、それ以外にも、いろいろな家族関係が語られ。最近よく聞く「毒親」という言葉が浮かびます。個人的には、毒親って言葉、嫌いですが。

    自分も親でもあるので感じるけれど。。。親も人の子、誰かに育てられた時期があり、誰しも育った環境での接した人の影響は受けると思う。でも、生まれながらの性格も絶対あるし。
    例えば、両親が同じように接して育てたつもりでも、兄弟姉妹で、性格が同じになるわけじゃない。
    自分自身も、弟とは全然性格違うし、でも似てるところもあるのかもしれない。今思えば、父はザ・昭和の父親だったなあと思う。けれどそれも、何十年経つと、笑い話になってたりする。

    寺地はるなさんの作品は、まだ3作しか読んでないけれど、とても読みやすい優しい文体ながら、『自分と他人とは違うということ。人それぞれの生きづらさ、その形も種類も違うということ。でも、それを抱えて生きていって良いのだ』ということが主軸になっている気がします。
    やっぱり自己肯定感が低いのって良くないなって思う。(特に日本人はその傾向強いよね)
    私は私が好きで(笑ってもいいです)それは別に、自信があるとかそういうことじゃなくって、だって、自分は自分の人生しか歩けないし、自分を一番愛してあげられるのは自分じゃん、と思うからなのです。

    基本、ミステリー派なので、グイグイと謎解きを楽しみ、本の中に没頭するのが好きな私ですが、そういった作品の合間に、時々差し込むように、寺地はるなさんの作品、これからも読んでいきたいなあ~と思いました。心がふんわりとリセットされる気持ちがします。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ、大阪府在住。2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。21年『水を縫う』で河合隼雄物語賞受賞、24年『ほたるいしマジカルランド』で大阪ほんま本大賞受賞。『大人は泣かないと思っていた』『カレーの時間』『ガラスの海を渡る舟』『こまどりたちが歌うなら』『いつか月夜』『雫』など著書多数。

「2025年 『そういえば最近』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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