- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050010
感想・レビュー・書評
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一本の大木をガリガリ削り落とし、朧げにフォルムが見えてくると繊細な刀に持ち替えて丁寧に掘り進めていく。大木の中に潜む物語の形がまるで見えているように。
園子がみずみずしさから艶めき、主人公のこれまでの仮面が剥がされようとしたその時、従来の不可能性をもって生来の衝動が悠然と姿を表すクライマクスは引き込まれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
深くて濃い内容です。
三島由紀夫を読むと他の小説が軽くてアッサリしているように感じます。
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仮面の告白
(和書)2008年10月26日 19:15
新潮社 三島 由紀夫
三島由紀夫の作品をはじめて読む。今まで読まなかったのは何故だろうか?ちょっと怖い感じがしていたのだ。柄谷行人が三島由紀夫のアイロニーということを「そういうことができる自分を誇らしげに示すアイロニー」ということを書いていた。それに対し「フロイトの死刑囚のユーモア(夏目漱石のユーモア)」などを書いていてそこに倫理があるのだろうと勝手に考えていた。だから三島由紀夫を読むとアイロニーの暗黒圏みたいなものに捕まってしまうのではないかと怖れていたのかもしれない。実際読んでみて、それほど強い吸引力は感じなかった。逞しい男の腋咼の草叢・筋肉をみて勃起するというシーンなどは面白かったが、私は同性に性欲を感じたことがないので話が虚構に思えた。その虚構がある人々には救いになるのかもしれないと感じるが少なくとも私には思ったよりあらゆる意味で感動はしなかった。ただ意外と軽く読めると言うことを発見した。この本を貸してくれた友人に感謝したい。次に読むとしたら春の雪かな。 -
2020/09/13
描写が生々しくて、うまいんだろうけど気持ち悪かった←
普通の人でいることに憧れてたのかなぁ。男色の傾向があって、それを園子と恋愛してると錯覚することで自分のアイデンティティを守ろうとしたのかな。他人から見た普通に、固執しすぎてる気はする。周りには理解してもらおうと勿論してなかったから、さみしい晩年
書かれた時代が時代だし仕方ないけど読みにくい〜まだまだ修行が足りんわ -
「うつくしい日本語で人間を知る」
所蔵情報
https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/detail?rgtn=B19365 -
主人公の幼少期に生じた性癖から帰納的に成長した結果の結末といった感じだが、演繹的に生きても問題を先延ばしにしただけだし、まだ楽な結果だったのではないか。同じ思考をする理解者が現れていれば、主人公も幸せな人生を歩めていたのかもしれない。
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風邪をひきかけているときに読んで、はきそうになりました(苦笑)。私とは趣味が合わない。一生懸命書いておられることはわかるんですがね。
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何というか、見事な文章力で紡ぎ出される、ギリギリ不快になるかならないかの気持ちの悪さと、堕ちそうで堕ちきらない危うさ。紙一重の天才だからこその作品か。
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美しいモノ・純粋なモノを描いている作品だと思います。作者のインタビューで「死をいつか来るんだ それも遠くない将来に来ると戦争の時考えていた その心理状態は今に比べて幸福だった」と言っています。坂口安吾さんは堕落論で「戦争中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた」と書いています。大江さんの、特に初期の作品(飼育・芽むしり仔撃ち等)は、ある条件が揃うと人々は連帯する、その事実を中心に書かれていると思います。
戦争中は、特に末期になるほど、大江さんが描いた、人々がある条件が揃った時に連帯する現象が、国レベルで起きていたのではないでしょうか。美しいモノが咲き誇り、心理状態も幸福だった。以上の事実が、作者が美しいモノ・純粋なモノを描くのに、戦争前後を舞台にした主な理由だと思います。
坂口さんの堕落論では、「戦争中の美しさは、本当の美しさではない」と書いています。大江さんの飼育と芽むしり仔撃ちでは、条件が崩れた時、人々の連帯があっけなく崩れていく様を描いています。美しさ・純粋さは、ある条件が揃った時の幻影の様なモノなのかもしれません。けれど、作者は以上の事実を踏まえた上でも、「美」を描きたかったのではないでしょうか。
心理描写が丁寧ですが、少しレトリック染みていると思いました。美しさ・純粋さを中心に描き、俗なモノを周辺に描いていると思います。 少し余談ですが、作品の最後、主人公と園子さんのやり取りと主人公の心理の変化の描写は、安部公房の「他人の顔」の最後の描写と似ていると思います。男性の感性は、女性の感性にかなわないのでしょうか。 -
単純に面白くない。
理性という名の自己愛ですべてに理由や目的を求めたがる思春期そのままこじらせたみたいな男が主人公。
自分は人とほとんど同じだと言いつつどこか人と違うものを見ているんだとでも言いたいような語り口は自慰でも見せられているみたいでその繰り返しはうんざりした。
こういう人は楽しいものを楽しい、愛しいものを愛しいと素直に感じられない。すぐに「こう考える自分は何だ?」となるから。すごく損。自分大好き人間…。
こういう世界に女は入れないなあ。 -
作者の自伝的な作品。
同性愛であったことを気付くけれど、病弱であった。それでもずっと園子のことは好きでした。そんなお話。 -
とにかく文章が端正で官能的。
内容的には同性愛のカミングアウトという1点につきるが、それだけで読者をこうも引き込むことができるのか。 -
三島由紀夫という作家の表現方法、癖がわかった気がする。ひとつ近づけたという価値において、仮面の告白は、告白たり得ていたと言える。しかし三島自身の告白ではないことは、仮面の語が証している。
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三島由紀夫とは、文学とは、について考えさせられる書
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平成28年11月
死のうと思うが、生きたいと思う。 -
性的倒錯者が本当の自分を世間には偽りながら送る生涯を自伝形式で記した小説という、どこか「人間失格」を連想させる作品。「自分は周りの、普通の人間とは異なっている」と思うことは、いざ自分が他者との共通点を見つけてしまった際には、枷にもなり得るし、自信にもなり得るということが理解できた。
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積読本を眺めていて、引き寄せられるように手に取って一気に読了。子供の頃、主人公と同じように、死んだ真似をして遊んだ(?)ことがあったのでなんか笑ってしまった。(セーラームーンの真似してたんだけど、紛らわしいとその後ひどく怒られた。)しかし、なんとも切ない恋物語ですね。少年期のあれこれも、これが村上春樹作品ならば“やれやれ”と眉を顰めるようなところですが、三島由紀夫が書くと不思議といやらしさは感じませんね。恥の意識の強さと、芸術性の高さでしょうかね。これ以上進みようのない“おしまい”がまた、一段と切ない。
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三島作品で一番好き。読んでいくうちに心が苦しくなって、誇張なしに動悸が起こった。気持ち悪いでもないし、切ないでもない。理由は分からないけど、どうしても苦しくなって、読むのが辛いのにページをめくる手が止まらなかった。自分の中でどう捉えればいいのか分からない作品。
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一気読み。
自分ではどうにもならないセクシュアリティ。
一般向け用に努力してみた結果、どうにもならなかったという話。 -
2016.6
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夥しい知識量と超前衛的な三島感性が節々にほとばしってる。24歳のときの作品とは!ただただ敬服!
今まで読んだ三島由紀夫の小説・エッセイ・戯曲の中でもかなり好き。 -
切々とねっとりと吐き出されていく男の苦悩。
アブノーマルでありながら、ノーマルに焦がれてみたり焦がれる事で苦しんだり。
一人出会う女に救われる。精神、魂で惹かれた女。
受動的な死を求めるほどの苦しみ。
吐き気がするほど迫ってくる。 -
初めて読んだ中学生の時は気持ち悪くなったけど、今読んだら抵抗なく読めそう。再読予定
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濃い…。話の流れはまあわかるんだけど表現が深遠というかなんというか、わああ…となるような厚さ。薄い文庫なんだけどやたら読むのに時間がかかった。いい意味で。小説ってすごいなあとか。また読みたい。
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三島由紀夫「え?俺?ゲイだよ。そうだよ、だから何度も言っとるやん……園子?好きやで?……いやだから俺はゲイなんやて!女とかまじ無理だから!……なに?園子をどう思ってるか?…せやからめっちゃ好きやっちゅうねん!」
ということが230ページ続く話