仮面の告白 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.55
  • (438)
  • (645)
  • (1327)
  • (98)
  • (19)
本棚登録 : 6709
レビュー : 591
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050010

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 奇妙な印象を残す作品。作家にも作品群にもより興味がわくと思う。前半少し大変だが後半の展開がいい。性的倒錯者や同性愛者でなくとも理解できる感じもありつつなのでなかなか考えさせられる。

  • 完全には内容を咀嚼し切れていないが作品から伝わってくる天才性と迫力は何であろう。本人は否定しているものの、三島の自伝的告白と捉えれば性的倒錯と園子への愛情つまり「普通」を渇望する相反に苦悩し陶酔しながらナルシシズムと自己反省が溢れる文章で告白が続く。後年に見られるような読者に与した娯楽的側面は皆無で徹底的に「三島」である。日本語はもとより古典の引用やラテン語などあらゆる言語表現を自由自在に操り読者を置き去りにすることを気にせず混じり物ゼロの高濃度で、読む者にも緊張感をもらたす作品であった。

  • 今読んでよかったなーって思う本でした。もしももっと若いときに読んでいたら、気持ち悪いとか、意味がわからないなんて思ってしまって、読み進められなかったかもしれない。

    言葉にして表すのが難しい感情や本当に微妙な心の動きが、鮮明に文字に起こされていて、そう!それ!みたいに思うところがたくさんありました。

    はじめから終わりまでずっと薄暗い雰囲気があり、主人公が心の根底で抱えている「不安」が終始感じられました。
    自分は人と違うかもしれないと思い悩み、同じであろうと必死に取り繕い、そうして自分の心を守るために自分に対して嘘を吐き、嘘を重ね過ぎて自分を見失ってしまい、そんな全部を本当は心の奥底では気付いているのに、どうしても直視したくなくて誤魔化し、また悩まされる…これは誰もが経験することなのか、しない人もいるのかわかりませんが、わたしは激しく共感しました。

    以下、印象に残った箇所---------------

    近江との手袋の記憶2つ。どちらもとてもドラマチックな情景でした。革手袋を顔に押し当てられるシーン。遊動円木上で目が合い手が触れ合う瞬間。助け起こされ、腕を引かれるも呆気なく離される手。どちらも近江には深い意図はなさそうなのに、その記憶を大事に持っている主人公が可愛くもあるし可哀想でもある。

    懸垂する近江の腋窩を見た後、激しく嫉妬するシーン。彼を愛しているがために彼と同じようになりたいと切望するも、そうなれないことは自分でわかっているし、それを愛ではないものにすり替えようと必死になる。

    園子とのキスシーン。あと何歩で〇〇をする…といったカウントダウンが妙にリアルで、初めて自分からキスをしようとする男の人の心境はきっとこんな感じだろうと思った。彼女とキスをすることで、自分も女性を性対象として見られるかもしれないという期待を持ちながらも、キスをしながら徐々にそれが崩れていき、全てを悟ってしまうところは本当に切なくて涙が出ました。

  • 頭脳明晰者の厨二病告白。あの時代には衝撃の告白だったと言う事かも。

  • 主人公の幼少期に生じた性癖から帰納的に成長した結果の結末といった感じだが、演繹的に生きても問題を先延ばしにしただけだし、まだ楽な結果だったのではないか。同じ思考をする理解者が現れていれば、主人公も幸せな人生を歩めていたのかもしれない。

  • 風邪をひきかけているときに読んで、はきそうになりました(苦笑)。私とは趣味が合わない。一生懸命書いておられることはわかるんですがね。

  • 久しぶりに読んだけど、三島先生の表現力は圧倒的だ。天才。

  • 何というか、見事な文章力で紡ぎ出される、ギリギリ不快になるかならないかの気持ちの悪さと、堕ちそうで堕ちきらない危うさ。紙一重の天才だからこその作品か。

  • 文章がうまくて。
    本当に三島由紀夫は天才だ。

    美しいものに惹かれる気持ちを理解させてくれるので、近江のパートも自然に感情移入していける。そして少しもいやらしくない。
    終盤、園子がけっこう踏み込んでくるのでどきどきする。

    「私」の語りを全部信じて読んでもいいと思うけど、どちらが「仮面」か、被っているのは「何の仮面」か、まったく逆の読みもできると思う。

    …って分かってはいても、青ざめ、震える「私」のノリにこちらも乗っかって、自分は異端なのか?という際限ない不安の綱渡りを楽しんだ。

  • 美しいモノ・純粋なモノを描いている作品だと思います。作者のインタビューで「死をいつか来るんだ それも遠くない将来に来ると戦争の時考えていた その心理状態は今に比べて幸福だった」と言っています。坂口安吾さんは堕落論で「戦争中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた」と書いています。大江さんの、特に初期の作品(飼育・芽むしり仔撃ち等)は、ある条件が揃うと人々は連帯する、その事実を中心に書かれていると思います。

    戦争中は、特に末期になるほど、大江さんが描いた、人々がある条件が揃った時に連帯する現象が、国レベルで起きていたのではないでしょうか。美しいモノが咲き誇り、心理状態も幸福だった。以上の事実が、作者が美しいモノ・純粋なモノを描くのに、戦争前後を舞台にした主な理由だと思います。

    坂口さんの堕落論では、「戦争中の美しさは、本当の美しさではない」と書いています。大江さんの飼育と芽むしり仔撃ちでは、条件が崩れた時、人々の連帯があっけなく崩れていく様を描いています。美しさ・純粋さは、ある条件が揃った時の幻影の様なモノなのかもしれません。けれど、作者は以上の事実を踏まえた上でも、「美」を描きたかったのではないでしょうか。

    心理描写が丁寧ですが、少しレトリック染みていると思いました。美しさ・純粋さを中心に描き、俗なモノを周辺に描いていると思います。 少し余談ですが、作品の最後、主人公と園子さんのやり取りと主人公の心理の変化の描写は、安部公房の「他人の顔」の最後の描写と似ていると思います。男性の感性は、女性の感性にかなわないのでしょうか。

全591件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

仮面の告白 (新潮文庫)のその他の作品

仮面の告白 単行本 仮面の告白 三島由紀夫

三島由紀夫の作品

ツイートする