愛の渇き (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050034

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃的な結末に、驚いたの怖いのなんの。マジかよ、そんなオチかよ。解説に三島由紀夫の他の作品よりもストーリーが立ってるようです。期待したハッピーエンドじゃないという、まあ面白いと言っても良いか。やはり怖いので読まない方がいいですよ、でも読んでみて下さい、どっちだよ。文章は素晴らしいのです。
    三島由紀夫自身のことが分かるのが、「仮面の告白」だそうですが、今度読んでみたいです。

  • 解説を読むと、物語の登場人物全てに計算し尽くされた配役が与えられているのが分かる。三島の作品に対する全力の姿勢がここに強く現れている。それはやがて遺作「豊饒の海」へと繋がっていく。。。

  • 悦子の三郎への歪んだ愛は男児が好きな子を苛める稚拙な愛情表現によく似ている。しかし飢渇して海水を求めれば喉は渇く。悦子の自己憐憫的な渇愛は二人の行く末に逆説の悲劇をもたらした。

    ミケランジェロと運慶は彫刻は創り出すのではなく削り出すと語っているが、三島由紀夫作品にも同じものを感じる。文章が文学を編み上げるのではなく最も適切な日本語を最も適切に配置した文学が三島作品だ。彼の語彙力や表現力は天才過ぎる。

  • 三島の世界に圧倒される。なんと美しく的確な表現で埋め尽くされているのか。
    思い通りにならない恋愛にいらだち、嫉妬し、相手の不幸を願い、自分をも痛めつける、恋愛に限らずこの悶々とした思いは、自分にも存在する感情だと心を揺さぶられる。
    芳しい文章が微酔を誘うこの作品はプチブルの傲慢さと自分の幸せを求めて自己中になる心の狭さをまざまざと描き、登場人物はどれも明確なキャラクターの上に各自の役割を全うしてこの作品を構成している。
    ラストは衝撃。ちょっとしたきっかけで狂気へと踏み外す瞬間を読者は目撃する。

  • 今更ながら、三島作品は個人的な中身の好みの差はともかく、題名が素敵だなと思った。

    2002年5月22日読了

  • 「私が決めます。私は一旦決めたことを、決して枉げはいたしません。」

    良人の壮絶な最後を看取った悦子。悦子の視点から展開する終末の夫婦の姿に頭がぐらぐらと揺すられる心地がした。
    後半の悦子の姿はある意味魔性であるのだけれど、果てのない渇きを持った彼女が何故か凛として見える。
    恐ろしいほど真っ直ぐ何かを求めているのに、決して純愛とは言えない。
    ぶつかり合うその結末は総て悲劇へと繋がっている。

    自分の情念に飲まれて生きることが辛いときに読むと、エゴと無私がぐるぐると混ざり合ってやはり頭がぐらぐらと揺すられる心地がする。

    愛なんてこの世に存在するのだろうか、と絶望するくらいなら読むべきだと思う。

    そして凛として立ち宣言すればいい。
    「私が決めます。私は一旦決めたことを、決して枉げはいたしません。」

  • 最後の方は恐ろしいと思ったけど、それまでは共感できる点が多すぎて、そのことに気づいた時は自分の将来を不安に感じた。特に女や愛する人の不幸を望んでいるはずなのに、実際にそうなると本当は望んでいなかった、と感じるやりきれない気持ちに共感した。


    悦子が抱く感情の中には、ごく一般的な恋する女性の感情もありながら、凶悪な行為に繋がる感情が奥底に根ざしている。愛していたために結末を迎えたのではなく、ただ手に負えない、コントロールしきれない感情を抱いてしまった自分との闘いの行く末であったと思う。ある種閉鎖的な環境が彼女をそのような考えに陥れたのであろう。

  • 先日、「夫婦善哉」を読んだのを機に昭和初期の小説をもう少し読みたいなと思って三島由紀夫。ちょっと違ったか…。三島は高校時代にあらかた読んだか(ものの、潮騒の焚き火のシーンくらいしか記憶にない)と思っていたが、この「愛の渇き」は未読。時代がかった技法が目立って現代小説ほどのテンポはないが、寡婦の満たされない愛と、愛をまだ充分に理解しない少年との擦れ違いは充分に読ませる。

  • 主人公の悦子は愛に飢えていた。
    自分が好いた人に愛してもらいたかったんだね、それでタイトルの愛の渇き。...ただこれは主人公に限ったものではなかった、登場人物は主に悦子の属する杉本一家なんだが、これがまた気持ち悪い。皆それぞれ普通に暮らしてくれ...

  • 悦子の幸福を求める様子は狂人的で、やや不気味だった。だも自分を苦しめることで幸福を得る感覚はわからなくもなかった。そして自分にも悦子のような狂気が備わっていることがやや不気味に思えた。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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