- Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050058
感想・レビュー・書評
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やってることはえげつないのに美しくも儚くも見えるのは三島の文体のおかげですね、
三島の美に対する姿勢が垣間見える作品だった -
浅田次郎が自身の著作で、禁色について、書いててその内容がめちゃウケたから、いつか読もうと思って忘れてたら、おすすめに出てきた。役立つ〜ひゅ〜
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老作家・檜俊輔が、かつて自分を袖にした3人の女に復讐するために、同性愛の美青年・南悠一を傀儡にして3人の女を悠一の虜にしてしまう。
スリリングなストーリー展開に、当時のゲイ社会に取材したリアルな描写、三島特有の文体、これでもかとばかりに浴びせられる豊かな語彙があいまって、最後まで読み飽かなかった。
やはり日本最高の小説家は三島由紀夫だ、間違いない。
随所随所で三島の美意識が爆発していておもしろい。
以下は特に気に入った箇所の引用。
「芸術というやつはどうしてこうも醜さに口実を与えるのだろう、それも天下御免の口実を」(p106)
「何の責任も義務も負わないことが美しいものの道徳なんだ。美は自分の不測の力の影響についていちいち責任を負っている暇がないんだ。美は幸福なんかについて考えている暇がないのだ。まして他人の幸福なんぞについて。……しかしそれだからこそ美は、そのために苦しんで死ぬ人をさえ幸福にする力をもっているんだ」(p193)
三島本人のその後の人生を予見するような言葉に遭遇して何度も「おや」と思わされた。たとえば次のような文。
「彼らは社会を向うにまわして(中略)挫折に終わることのわかっている感傷的なクウ・デタや、さまざまの悲劇的な青春を夢見たのであった」(p485)
「しかし、死において、自殺という行為と、生の全的な表現との同時性が可能であることは疑いを容れない。最高の瞬間の表現は死に俟(ま)たねばならない」(p568)
三島がこの本を書き上げたのは28歳のとき。
そのときすでに自らの死のシナリオを頭の中に描き始めていたんだろうか。 -
三島由紀夫の文章は絢爛過ぎてあんま長いこと読んでると疲れちゃう(笑)嫌いじゃないし、すごい、って圧倒されるんだけど、覚悟がいります。後半は飛ばし気味に読んでましたー先生ごめんなさい。
性欲を感じるのが少年だけ、という美青年の男色家っていう主人公?だけど、性欲を感じるだけで拘泥がないのって、女から見るとそれ愛を知らないんでは、と思ってしまう。まあ、愛ってテーマの作品でもないのだろうが。最終的に檜俊輔に死ぬほど愛されて終わるから、そこがパラドックスというか。でも23歳って愛を語れるほどの年齢でもないだろうに。それくらいで結婚しちゃう親孝行さが悲劇だったのかな。妻へ向かうべき性欲が他に向いてしまうことについて罪悪感を覚える繊細さも彼の悲劇だ。どんなに美貌でも、幸せになるって難しい、てことか -
初三島由紀夫。「さあ読むか!」っていうわくわく感と、読み始めてからのだらーっとした気分のくりかえしだった。なんていうか、まだ読んでいない部分に図らずも期待をするんだけど、いざ読むと一貫したテンションで、別段大きな変化も何もなくだらだらっと続く。話が大きく動いたのは、当然ながら序盤と、あと悠一のあれこれが実家にバレたとき、の二回くらいじゃないかな。ようこうも分厚くなるまで話を引っ張れるな、と感心すらした。自分の経験とともに捉え方が変わる気がする。
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三島由紀夫が26歳の時に書いた「仮面の告白」と並ぶ男色小説。
老いた小説家は自らの醜さと、そのことによって(と本人が考えている)自分を捨てた女たちへの復讐のために、男性しか愛せない美青年を利用する。
しかし従順だった美青年は男たち、女たちとの関わりの中で、小説家の手を離れ、彫像から「人間」になっていく。
発表当時、男色を社会に対するプロテストと解釈した批評家が多いようだが、三島にとって敗戦後の日本は醜く変貌していくばかりであった。だからこそ益々強くなる「美しきもの」への憧れがこうした形になったのだろう。
さらに、青年は自らの美しさを愛されれば愛されるほど醒めて行き、一人の人間になっていく。三島にとってそれは幻滅だろうが、それをあえて描いたところに、どうにもならない戦後日本に対するニヒリズムが見て取れるような気がする。
青年は妻との間に子どもをもうけるが、その行為は当然欺瞞である。だが、彼は多くの男たちと交わるものの、そこに精神的な恋愛感情がまったく見えない。逆に、青年は難産に苦しむ妻や、自分をストイックに愛し続ける元伯爵夫人に愛情を感じたりする。
徴兵検査で丙だった程ひよわだった三島が、たくましい男性の肉体に憧れたことは容易に理解できる。その証拠に、三島は30代で肉体改造に打ち込むことになる。おそらく三島は男性を愛するというよりも、その肉体を愛したわけで、これを男色というのか、男色に精神的な恋愛感情があるのかどうか私にはよくわからない。ただ、結局誰も愛さない青年の姿が、三島の中に棲んでいたことは否めない。
ところで、三島の作品を読む度に不思議な感覚にとらわれる。三島の空虚さだ。美しい色を創り出すがそれ自体は無色透明なプリズムのような。。。それが何なのかに触れるためにも、彼の作品は読み続けたい。 -
あらすじだけでもとんでもなく面白そうなのに、文章の素晴らしさがたまりません!
こういうのを読むと、純文学の作家さんの、一般人がどうしても言語化できない矛盾やいびつな感情をきちんと言葉にする能力に感嘆せざるをえません。
康子って、結婚した途端にどうしてあんな大人しくなってしまったのでしょう?冒頭の登場シーンとはかけ離れ過ぎていて、そこだけしっくりこなかったなぁ。
醜さってまず自身から破壊していきますけど、美しさは周囲から破壊していくんですね。
三島由紀夫は自決さえしていなければ、サリンジャーは作品を発表し続けてさえいれば、二人ともノーベル文学賞獲れたんだろうなぁ、と思います。
11.10.10 -
愛することの葛藤、そして愛は同性・異性関係なく、難しいものだとも。三島の文体は、苦手な人もいるだろうけれども、私は大好き。綺麗で深い。