- Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050058
感想・レビュー・書評
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読みやすくて分かりやすくてネタに抵抗がなければ三島で一番おすすめ。
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「蘭科植物特有のあの媚態と羞恥とに関する惑わすような詭弁」
潮騒以来の三島。艶かしい文章が好きだ。他作品も読んでいきたい。 -
徹底的な「美」を追求した作品。
男色をテーマに、裏切られ続けたがゆえに女への復讐を企てる檜俊介、美青年の悠一を手練に操り物語は進みます。
様々な心理が複雑に錯綜しており、ギリシャの同性愛を肯定的に捉えた作品だと思いました。
作者の考える「美」が如実に表れ、書いた当初ではタブーとされていた同性愛なので、その時は否定的意見が多数だったらしいですが、後の作品に影響を与えているのは間違いないと感じます。
難解な部分が過半数を占めていますので、理解できない部分が多いですが面白い作品です。 -
もう一度読み返したい。
終盤の俊輔の語りが思想的で、美は此岸にある…
女のもつ性的魅力、媚態の本能、あらゆる性的牽引の才能は、女の無用であることの証拠である。有用なものは媚態を要しない。19
彼は秘蔵の河内打の若女の能面を死顔に被せた。それを押しつけるように被せたので、水死者の顔は熟れ切った果実のように能面の下に押し潰された。21
(この発想はすごい。芸術的。)
彼はいつの日か現実と出会うであろうか?彼が現実と出会を遂ぐべき場所で、すでに彼の欲望が、先まわりをして現実を蝕ばんでゆく以上、現実は永遠に虚構に姿を変え、欲望の命ずる形をとる他はない。40
一人だけ目をさましているということは何という背信だ。夜番はしかし、背信によって護るのである。眠りを裏切ることによって眠りを護る。67
成人することは、美しさの日没である。十八歳から二十五歳まで、
愛される者の美は微妙に姿を変えた。188
(夕焼は表現します、って暁の寺で言ってたなあ…)
「僕はなりたいんです。現実の存在になりたいんです」194
「どうだい。現実はどうだったね。お気に召したかね。」562
(この隔たりを越えた会話いいよね。)
この世における精神と自然との和解、精神と自然との交合の瞬間だ。その表現は、生きているあいだの人間には不可能という他はない。生ける人間は、その瞬間をおそらく味わうかもしれない。しかし表現することはできない。それは人間の能力をこえている。『人間はかくて超人間的なものを表現できない』と君は言うのか?それはまちがいだ。人間は真に人間的な究極の状態を表現できないのだ。人間が人間になる最高の瞬間を表現できないのだ。芸術家は万能ではないし、表現もまた万能ではない。表現はいつも二者択一を迫られている。表現か、行為か。愛の行為でも、人は行為を以てしか人を愛しえない。そしてあとからそれを表現する。しかし真の重要な問題は、表現と行為の同時性が可能かということだ。それについては人間は一つだけ知っている。それは死なのだ。568
生者の表現の最高のものは、たかだか、最高の瞬間の次位に位するもの、生の全的な姿からαを差引いたものなのだ。この表現に生のαが加わって、それによって生が完成されている。なぜかといえば、表現しつつも人は生きており、否定しえざるその生は表現から除外されており、表現者は仮死を装っているだけなのだ。568
このα、これを人はいかに夢みたろう。芸術家の夢はいつもそこにかかっている。生が表現を稀めること、表現の真の的確さを奪うこと、このことには誰しも気がついている。生者の考える的確さは一つの的確さにすぎぬ。死者にとっては、われわれが青いと思っている空も、緑いろに煌めいているかもしれないのだ。569
(もう少し前の彼岸、此岸、到達の可能性とかを踏まえたうえで) -
途中途中の芸術論?みたいなのが、高尚すぎてついていけなかった。話のみを拾って読んでいたが、最後の文章を読んでも結局何がいいたかったのかわからず、頭をひねるばかりであった。悠ちゃんの肉体と容貌がさも完璧なようにかかれているが、10人いて10人振り返るような人間はありえないだろう。三島由紀夫の理想だったのだろうか。ともかくも、読み進めるのは難しくなかったが、全く跡に残らない本だった。きっと私が未熟だからなのだろう。
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最高に面白い男色家小説。かなり力いれてた作品だけに、追い込む追い込む。悠ちゃんみてみたひ。
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それぞれ異なる段階にいる青年の美についての描写が圧巻。言葉だけでなんとしても美を再構築しようという作者の執念を感じた。
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金閣寺で挫折してからずっと三島には手を出していなかったのだけど、実写版「ゲゲゲ~」の監督さんが映画化してみたいと言っていたのを聞いて読んでみた。
一文が長く、難解な三島の文章に慣れるまでに多少てこずったけれど、読みなれたらグイグイ惹き込まれていって、あの分量にもかかわらず読了できた。
一言で言うと、「二人の三島がせめぎ合っている作品」だと思う。
老作家も悠一も、三島自身であり、かつ理想の三島なんだろう、と。
復讐に燃えるのも、復讐するのも、恋焦がれるのも、裏切るのも・・・全部三島自身の自分に対する葛藤なんじゃないか、と。
ラストの老作家の行動と、悠一が要所要所で見かける火事とが私の中で未解決なのですが、登場人物それぞれの思惑が拮抗する中で主人公二人がどんどん変化していくのがとても面白い。
三島の才能を見せつけられたという感じ。 -
現在進行形
三島由紀夫の文は小難しくて厄介ですね、でも綺麗 -
檜先生よかったね! なんというか、先生が終わりを見出せたようで良かったです。きっと抜け出せない泥の中にいたのだろうから。
悠一にも何か新しいものが見えているといい。
個人的に、鏑木夫人が気高くて堪らなかったです。素敵な女性すぎる。
康子さんの精神には共感しました。引きずり下ろされた時の居心地の悪さや、浮遊感は、多分ご本人としても持て余すものだったんじゃないかなぁと思う。
いろんな人それぞれの精神が絡み合っていて、とても読み応えのある一冊でした。