- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050089
感想・レビュー・書評
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なんとか頑張って読んだ。
主人公が金閣寺に火を放つまでの、内面の独白が永遠に続く。もちろん、他の描写もはいるのだが(そこは、なかなか面白く読めた)、主人公の孤独と絶望による内面形成は、きっとそうであろうと思いながらも、理解するのは難しかった。
これを読みながら、秋葉原の連続殺傷事件を思い出したりした。
三島由紀夫の語彙表現力に圧倒されながら、それについていけない自分が非常に残念…。
作家が生きた時代と、自分の生きている時代、若い人たちの生きている時代も全く違い、そこを超えての普遍的な価値はあるのだろうが、理解し深く共感できる人は徐々に少なくなっていくのだろう。
2020.2.6詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん、これは面白かった。読んで満足。
意外と読みやすかったし。
実際起きた金閣寺の放火事件を題材にしたということで、硬派なものをイメージしていたけど、
主人公の心理描写が精緻で複雑で圧倒的で、すごい引き込まれました。
美への執着とか、ものすごい劣等感とか、やたらと難解な屁理屈とか、
なんかわけわかんないとこも多かったけど
青春の青臭さ全開で、一つ間違えばただの幼稚なヘタレくんなんだけど
なんかすごかった。
緊張感の高まりも、美醜の対比も、罪と許しも、友情も、耽美的な死も悲劇的な死も、
なにもかも、これが三島文学かぁと。
最後のところ、感動しちゃったなぁ。
またいつか読み返したい。-
tiaraさん!
>最後のところ、感動しちゃったなぁ。
わかります。
僕も引き込まれて読んで、ラスト二行に衝撃を受けましたもん。
ああ、...tiaraさん!
>最後のところ、感動しちゃったなぁ。
わかります。
僕も引き込まれて読んで、ラスト二行に衝撃を受けましたもん。
ああ、読み返したくなりました。2013/07/25 -
kwosaさんへ
「人間失格」のとこのコメントでおすすめしてくださいましたよね。
そのおかげで早々に手に取ることができました。
ありがとう...kwosaさんへ
「人間失格」のとこのコメントでおすすめしてくださいましたよね。
そのおかげで早々に手に取ることができました。
ありがとうございました!
ドラマチックに一緒に燃えてしまうのかなーなんて思っていたくらいなので、わお!ってなりました。
いいラストでしたよね。2013/07/26
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ちょっと意味が解らない。とか言っちゃだめか……
最後まで主人公、溝口の主観で物語は描かれている。
柏木との対話は興味深い。
己の持つ狡猾さ、邪悪、恨み、愚かさ、凡そ人には明かせない暗黒の部分。偽善を装い、他人が私を受け入れること。それは自ら劣等を受け入れる妥協を含む恐れがある。永遠に矯正する機会を失うかもしれない。そこに甘んじることは何よりも許すことのできないこと。あまりにも醜く、救いようのない穢れを受け入れることなのだ。
唯一無二の金閣寺は、破滅的な行為の中で、美しさを完成させる。狂った美への執着が最後、どのような感情で締め括られたのか。
理解に苦しむ部分が多かったが、追求すると深みに嵌る恐れがある。美とは何か。この小説はただ狂っているものを描いているわけじゃなく、人の考え方を、極端な二つに分けて、その一方の主観を描いているような気がした。
私は二分された別の一方に属していただけで、ただただ極端な考えに、極端な不審感を抱いていたようだ。
読了。
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三島由紀夫の傑作、やっと読了。
特に最終章に近くにつれて秀逸。金閣の描写がとても美しく迫ってくる。
禅海和尚が救いだ。
「人の見ている私と、私の考えている私と、どちらが持続しているのでしょうか。」
「どちらもすぐ途絶えるのじゃ。」
仏教小説として受け取りたい。-
2021/01/01
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う、上手いなあ。
少年期の、吃りという疎外感と、両親への反抗心。
それが仏的世界や、もっと大きなモノへの悪意として結実してゆき、行為だけが変革を起こすと頑なに信じる。
少年革命なんとか、と言ってもいいようなドラマが広がっている。
以下、ラストシーンのネタバレ含むので注意!
「物質というものが、いかにわれわれから遠くに存在し、その存在の仕方が、いかにわれわれから手の届かないものであるかということを、死顔ほど如実に語ってくれるものはなかった。」
父の死に際して、涙を流さなかった「私」の目である。
「大声で歌いもせず、叫びながら駈けまわりもしない少年は、こんな風にして、自分の生を確かめてみることを学んだ。」
父と金閣という「絶対的存在」を分かち合いながら、亡くなった父は只の物質であると見做す。
後に、彼を慕った友人、鶴川が事故死した際には、鶴川の精神が、彼の姿を通じて象徴化される。
「鶴川はいつもこうして、私の誤解に充ちた解説者であった。が、彼は私には少しもうるさくない、必要な人間になっていた。彼は私のまことに善意な通訳者、私の言葉を現世の言葉に飜訳してくれる、かけがえのない友であった。」
私の好きな部分。
自分の悪意すら、誤解をしてくれる善き友。
そこに恐怖すら覚えるのだが、反転して善に近づけてくれる友人の存在に共感するのだ。
但し、主人公はその後、悪友柏木との親交を深めて、反転させることを許さない淵へと追い込まれてゆく。
「いいかね。美というものはそういうものなのだ。だから猫を斬ったことは、あたかも痛む虫歯を抜き、美を剔抉したように見えるが、さてそれが最後の解決であったかどうかわからない。美の根は絶たれず、たとい猫は死んでも、猫の美しさは死んでいないかもしれないからだ。」
世界を変貌させるのは「行為」だと考える「私」に対し、悪友柏木は「認識」であると考える。
「美しい「花」がある。「花」の美しさという様なものはない。」という小林秀雄の名文句がどうしても重なってくる。
観念的な美を、主人公は金閣寺に喩えた。そして、そのシンボルを行為によって象徴的に破壊する。
カルモチンと小刀は、実際の事件では使われ、この作品の末尾においては使われない。
生きることを望んだ「私」の胸の内にあったのは何だったのか。
色々考えつくこともあるのだけど、陳腐な気もするので、もう少し煮詰めてみようと思う。 -
参りました。ごめんなさい。許してください。
相変わらず変態。ヘンタイです。
美しいです。
好きではないけど…面白い!…うーん。脱帽ですね。
三島由紀夫さん。
食わず嫌いの印象論で言うと、余り好きではないのです。
でも、そこは男児四十にして惑わず(?)、読んでみましょう。
励みとしては、橋本治さん「三島由紀夫とはなんだったのか」を、いつか読むために。
と、言う長いタイトルの個人的試みの、第2弾。
第1弾の「仮面の告白」もそうなんですが…読んでみて。
「やっぱり好きじゃねえよ、俺」。…と、好みとしては思うんですが…。
でも、力負けと言うか。
オモシロイ。
それは誤魔化しようがないです。
1950年に、京都の金閣寺(つまり鹿苑寺)が、同寺の若い僧によって放火されて全焼。
犯人の若い僧は吃音、つまり、どもりの強い人だったそう。
放火の後、薬飲んで腹に刃物を突き立てて自殺未遂のところ、警察に確保。
さまざまな心理的な動機があったそう。つまり、判りにくい動機でしかなかったそう(笑)。
父は僧侶で既に病死。
母は息子の犯罪を受けて自殺。
犯人の青年は統合失調症(かつては精神分裂病と呼ばれていましたね)と診断。
懲役7年。
どんどん病気が重くなり、服役中の1956年3月に病死したそうです。
さて、この実際の事件をモデルに書かれたのが、小説「金閣寺」。
犯人の病死する以前、1956年1月から雑誌に連載開始。
三島由紀夫さんの創作資料として、金閣寺及び犯人さんの周辺に、執拗に取材した取材ノートがあるそうです(当然取材拒否されまくったそうですが)。
あくまで、「モデル」ですから。
実際の事件や犯人とは違うところもあるようです。
主人公は「私」。一人称小説です。
裏日本の侘しい寒村。貧しい住職の息子。
物心ついてから、ずっと吃音。
その劣等感に苛まれ。
健康、若さや恋愛、性愛や女性や友情…。と、かけ離れた少年期。
醜い己。惨めな自分。
美しさ、は自らの彼岸に常にあり。
戦時色強い時代に、病の父の希望、鹿苑寺(金閣寺)の住み込み修業僧に。
父の口癖は「金閣寺ほど美しいものはない」。
内向的。喜びの無い生活。
父の病死。母の期待。「いつか金閣寺の住職に」。
大谷大学に進学も。誰からも愛されず認められず。関心も持たれず。
ひたすら金閣寺の美に酔い、儚く寒く生きてきた主人公。
唯一の友人。人生の微かな灯。
しかし、その友は戦後の混乱期に事故死。
そして、障害を持つ悪友が出来る。
この友が、実に純粋なる悪意に満ちて、偽善に満ちた現世を打つ。
己の障害を糧に、利用し、女を誑す。善意の仮面を剥ぎ、露悪の醜悪を叩きつけ、刹那のみに価値を置く。
ファウストのような、フォルススタッフのような、ドクターキリコのような。
影響を受けつつも、そこまで強靭になれない。
ナイーブな「私」。
きっかけは、やはり「異性」と「友情」と「職場」と「家族」。
つまりは「人間関係」。
友情に見捨てられ。異性への惨めな憧れ。満たされぬ思い。
それを上回る、汚れた男女関係への嫌悪。
そして、金閣寺住職が金に倦んで女遊びをしている現実。
何かが切れてしまう。ぐれていく。反逆する。
もともとが孤独な青年が、余計に周囲から孤立していく。
最早、将来、金閣寺の住職、という希望もない。
そして、母が。自分を見る目が冥い。
ふっ。 …と、裏日本に出奔のように旅に出る。生まれ故郷の近く。冥い海。寒村。
そこで、雲から陽が差すように、思いが浮かぶ。
「金閣寺を燃やさねばならぬ」
…ここんとこ、超絶です。
スバラシイ。
時間が停まり。水際から一斉に鳥がはばたき。タラの夕陽にスカーレットが誓うような。
四回転ジャンプから何もなかったかのように完璧に着氷するような。
触れなば斬れん白刃の緊張感。
その断崖を超えた、無重力状態の恍惚。
(最近は、フィギュア観戦も愉しんでいるので…)
もう…たかが紙に文字が印刷されているだけで、コレダケの感情を他人の脳みそに作れるのか。
ほんとに、スバラシイ。
一事が万事ですが、文章が超絶です。
日本語が巧緻です。
三島さんの本人も、相当に苦心されたようです。
成程「仮面の告白」に比べたら、硬質、ハードボイルド。
放火するあたりからの畳み込み方は、息もつけない。
仁左衛門の油地獄を観ているよう。
スタンディング・オーベーション。
拍手喝采アンコールの暴動です。
…なんだけど…なんなんでしょう、この感じ。
…若い肉体の饐えた腋臭をコレデモカと嗅がされたような…。
なぜここまで、複雑にねじれ曲がった不幸を舐めるように憎悪しつつ愛さねばならんねん…。
かわいそうやねん…。
異形の彼方の、孤独のパンクロック。
内臓を抉って豚の腸を投げて、全裸になって糞尿を垂れるような。
そんな超絶パンクな、ホモで難病のロックスターのコンサートを見せられたような…。
なんだけど、歌声の澄み具合…美しい…というような。
正常と日常と安寧と平和と均整。
そんな僕たちの「普通」の、なるたけ隠したい暗部と陰部と欺瞞の構造的矛盾を、レイプのように暴虐にたたきつけるんですよね…。
…うむむむ。
いや、美味しいんですよ。すごい料理人の仕事が詰まった誇り高い逸品です。
なんだけど…。いや、凄いですけど。
好き、というのぢゃ、無いのですよ…。
なんだけど…。
その語り口。
その優雅さと無駄の無さ。
高名な指揮者の忘我の棒振りを見るような。
フィギュアやバレエの奇跡的な最高得点演技を見るような。
うーん。
これが美しさ。文章の芸術と言わなくて、何が芸術なんだろうか?という感じ。
細かくは覚えていませんが、
"戦争が人生を私から遠ざけた" (だったかな?てにをはは、自信なし)
…もう、こんな文章が惜しげもなく乱打されます。
拾い集めて額に入れたいようなフレーズが湯水のように、ダダ流れ。音色で言えば、エリック・ドルフィーの神がかり演奏のような。
月並みですが、才気溢れん語り口。
それに、恐らくは、想像を絶する「努力」と「執念」の人だったのかな…と。
解説等でも言及されていますが、「金閣寺放火事件」をモデルにしつつ、三島さんは三島さん自身を叩きつけているんだと思います。
世の中的に言うと、戦中育ちの戦後世代、そして無類の金持ちボンボンとしては、秩序混沌たる戦後の時代に、自らの劣等感と時代の大人たちへの不信感の泥沼を這い回って来たのでしょうが。
また、そんな観点もおいおいと。
次は、「潮騒」か「豊饒の海」か…。
三島由紀夫さん、恐るべしですね。
実に面白く、美しい。
なんだけど…なんかキモチワルイんですよね…。 -
1956年(昭和31年)。
あまりに毒々しい内面描写が延々と続くので辛くなり途中で挫折。主人公の視点からしか物語が見えないのも辛いし、時系列がほとんど一直線なのも辛い(金閣寺が燃えるまでの長いこと…)。世界的に評価が高い作家なのに、どうもフィーリングが合わないようだ。同じように日陰者の心理を代弁した作家でも、太宰は好きなんだけれども。何が違うのかなぁ…。 -
スローリーディングの実践を読んで、まずは金閣寺から。
自分を主人公の立場において物語を楽しんだり、小説の文章の描写などを楽しむことはできるが、平野さんほど深読みしてはまだまだ楽しめきれていないな。
でもゆっくり味わって読むことは大切というのは賛成。小さい頃に何度も何度も読んだ本、音楽は今でもしっかりと心の中に残っているから。これからはもう少し味わって楽しみたい。
さて肝心の小説自体への感想は、、、主人公の妄想癖がかなりありすぎて共感できるようなものではなかった。が、こういった思考回路をもって生活している人がいて、結果として社会を騒がせるような行為になったり、日常の中で自分にとっての違和感ある行為になったりするんだなと。
世界を変えるのは認識か?行為か?
自分にとって世界は変えるのは認識であり、行為でもある。もちろん他にもあるだろうと認識もしている。
故に、この質問自体、この議論自体が無用という認識。
著者プロフィール
三島由紀夫の作品






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