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本 ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784101050096
感想・レビュー・書評
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背徳行為すら美しい。
おそらくそれは、主人公の節子が
地位の高い女性であったからこそ。
そして著者の文章力の巧みさがあったからこそ。
ドロドロしていて、
嫉妬もあるのにそれさえも
美しいものへと変化させてしまう
まさに言葉の魔術師。
扱われているものはタブー。
ですが、その感情を
よく捉えています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやーおもしろい。女が1人で恋に溺れ、苦悩し、男の一挙一動に疲弊していくさまがありありと描かれてる。ほんとに愛さない人間が一番強くて、それにどうにも手が届かない感じ。いるなーこういう人。個性を愛するのは友情の仕事という文章が光る。恋愛の中でお互い欲しているのは、自分を見てくれるか、欲しいものを差し出してくれるかという点にしかない。それは個性とはかけ離れた、私のことが好きならこうするでしょうという思い込み。またはこうして欲しいというひとりよがり。
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「女にとって優雅であることは立派に美の代用をなすものである。なぜなら男が憧れるのは裏長屋の美女よりも、それほど美しくなくても優雅な女のほうであるから」生まれ育ちの良い節子には姦通という不貞も異国の珍しい宝石のようなものでしかなかった。この背徳の恋、穢れた肉欲を三島は無垢なる聖女の魂で描ききった。十分に幻想的とさえ言える耽美的な小説だ。出会ってから別れるまでのありきたりな関係の変化と意識の移り変わりが節子の一人称で書かれるから、男の理屈ではなく三島の言う女の理屈、いや無垢な論理で語られていく。それをベースに、繰り返す堕胎と男の冷めた気持を感じながらの別れ、その後の未練という陳腐な不倫を無垢の魂で受け止めて美しきものに転換した三島の筆力に感服する
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今は感想を書けない
再読した時に書こうと思う -
相変わらず三島文学は面白いから、読んでいて安心する
三島文学の登場人物はエロくてどこか狂っている、危険な香りがするひとたちで楽しい
そのエロさと狂っている感じが、どこか共感を得てしまうから、三島文学は不思議…
そして、相変わらず表現が素晴らしくて、たまらない -
三島由紀夫はなんとなくめんどくさくてややこしそう。そんな先入観から今まで避けてきました。ところがこの春、職場で異動ならぬ部屋の移動があちこちであり、断捨離で廊下に放り出された箱に「ご自由にお持ち帰りください」の文字。その中に三島由紀夫がある。読んでみなくてはといただいてきました。
本作は約200頁という薄さにも惹かれて頂戴したのですが、薄くても読みにくい作品というのはごろごろしていますから、少し不安。しかし冒頭から引き込まれて、三島由紀夫がこんなにも読みやすく、かつ品のある文体の人だったのかと驚きました。まったくもって失礼です、私。今まで読まずにすみません。
良家のお嬢様に生まれついたヒロイン節子は、純真無垢なまま、親の決めた相手と結婚。跡取りにも恵まれる。結婚後数年が経ち、いろいろとマンネリ化してきたころ、ふとファーストキスの相手である土屋のことを思い出す。あれはとてつもなくつたないキスだった。今の私なら土屋にキスの手ほどきすらできるだろう。そんなことを思っていた折り、土屋と再会する。土屋に求められても拒絶すればいい。あくまで優位に立つ自分を創造する節子だったが、がつがつ来ない土屋にいらだち、自分から行ってしまう。秘密を知るのは親友ただ一人。夫を騙しつづけ、まだ幼い一人息子は母の行動を知ってか知らずか、いぶかしげなまなざしを節子に向ける。
私はこれまでの人生で、嫉妬の感情を持ったことがないであろう女性に2人、会ったことがあります。育ちのいい人というのはこういう人のことをいうんだと驚きました。嫉妬などする必要もなく、嫉妬したことがないから、それがどういう感情なのかもわからない。このヒロイン節子もそもそもは同様の女性だという設定ではありますが、著者自身がその感情をじゅうぶんに有しているせいか、嫉妬めらめらというところが少しおかしくて、しかしそれは本作にマイナスではなく、面白く読めます。
「よろめき」という言葉を生み出した不倫小説であるにもかかわらず、ヒロインがどこまでも気高さを失わない(と自分では思っている)せいか、切なさや辛さは感じません。ただただ三島由紀夫の表現に驚かされるのみ。性描写にしても、こんなにも直接的でなく美しく、誰が書けましょう。たとえば「黙っている男の無言の暗い熱意のしるしに、ほとんど憐憫と呼んでもいいいじらしさで触れるのであった」。凄いです。
「偽善にもなかなかいいところがある。偽善の裡に住みさえすれば、人が美徳と呼ぶものに対して、心の渇きを覚えたりすることはなくなるのである」。この一文が強く心に残りました。本能のままに行動に出て三度もできちゃって、そのたびに思い悩んで結局堕ろすヒロインは学習力なさすぎでどうかと思いますが、そういうところにおかしみすら感じます。読んだこともないのに抱えていた苦手意識を払拭して三島由紀夫に手を出すきっかけになりそうな作品です。 -
節子はこの手紙を出さずに、破って捨てた。
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人妻の不倫を題材にした小説など星の数ほどこの世に存在しているだろう。
そういうものを意識的に避けてきた自分が、初めて望んで手に取った不倫小説である。
内容はともかく文章が凄い。
作者が三島氏でなければ、きっと読みおおせる事はできなかったと思う。
何の不満も無い安定した日常生活に飽きた有閑夫人が、かつて一度だけ唇を許した男と再会し、逢瀬を繰り返すうち次第に彼におぼれていく。
倫理を犯しているにもかかわらず、主人公に嫌悪の感情は湧いてこなかったが、その不倫相手については虫唾が走るほど嫌だった。結局この男は主人公を体のいい性欲処理の相手としか見ていなかったからである。
そんな下劣な男に惚れた主人公は本当に馬鹿な女性だが、身も心もぼろぼろになって最後自らを律する強さを奮い起こし、ただ一人のたうちまわりながらもこの関係に終止符を打ったのには好感が持てた。
不倫小説だというのに不思議な爽快感のうちに読み終わった作品であった。
最後の一行は見事だった -
「あの本、読みました?」で紹介されていた三島売り上げトップ10、すべて読んでいると思っていたら、どうやらこの1冊は読んでいなかったようだ。うすいので先に読んでしまった。一つの不倫の話の一部始終であった。特に大きな事件は起こらないまま最後を迎える。まあ、実の父親の存在は大きかったのかもしれない。この父娘関係がちょっとうらやましい。さて僕は読後すぐにコンドームの歴史を調べてみた。1950年代にはいまあるようなものが既に出ているようだ。ということはやはりおかしい。どう考えてもおかしい。女だけが痛々しい思いをしている。当時の女性たちはこれを読んでどう思ったのか。「よろめきブーム」が起こったとかテレビで言っていたようにも思うが。途中唐突に二人の識者というのか年寄りが恋愛の手ほどきのようなことをしているが、分かったような分からないような。もう少し詳しく読んだ方がいいのかもしれないが、まあさらっと読み流しておく。最後の手紙、良かった、出さなくて。ところで、紀元前にもコンドームのようなものはあった。牛か羊かの腸や膀胱、魚の浮袋などが使われていたらしい。それが一番の驚きだった。
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ぐぅエロい
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