- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050126
感想・レビュー・書評
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もう少し、3人だけの閉じた世界に浸っていたかった。
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獣の戯れ、という題名から、男女の烈しい情熱の予感を感じた。そして、その予感は間違いではなかった。
あらすじだけを読めば、単純な男女の三角関係の話で、三島由紀夫のいう社会に対するところの孤独、神秘性は見られず、一種の恋愛小説、それも紋切り型のくだらない低俗なものに思え、読むのを躊躇した。だが、そこは文豪と呼ばれる所以、ありきたりな設定や世界観の中にも特異性を足して、普遍性の罠にかかることなく器用に書き上げている。
特に、不気味なのは小説家の逸平の、その杳としれない言動と態度である。幸二に襲われてからというもの、自分ではもはや何もできず、すべてを妻に預けるしかない境遇にあり、身体を拭くことも食べることもできない。次第に、周りを巻き込んで、登場人物全員が、僕たち読者には不幸の底の底にあるように思えるが、周囲は、特に妻は、元気だった頃よりも幸せそうに見えるから不思議だ。そして、其処にひとつの幸せを見出せる力があるのも女性の良い点なのかもしれない。
理由はなんであれ。
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幾つか読んでいたミシマものでは、これ、初読。
題名からして、TVドラマの脚本的筋書きかと思ったら、確かにその線だが、かなり哲学的に捻った展開の作品だった。
特に、会話に用いられる言葉。執筆は1966年ながら、およそ、その当時とは思えない大時代が買った雰囲気に仕上がっている。
解説によれば「ミラノ スカラ座でみたオペラ フィデリオ!
暗闇の中で繰り広げられる荘厳な官能的な歓喜を見た後、一睡もできなかった挙句、興奮のほてりで構想が細部まで浮かんだとある・・流石!常人ならぬ天才肌だけのことはあると思う一文。
筋そのものは実に低レベルながら、獣ら3人の男女が異様な行動と思惟の下に繰り広げていく展開。
被害者と障碍者、間に存する浮遊するようなおんな。
特に不気味というか正体に靄がかかっている逸平。澁澤龍彦や江戸川乱歩をちらっと想起した。
最期に並んだ墓碑銘3本は・・もはやホラー -
「一体、あんたは何を望むんだ。できないことを知りながら誘惑する。逃げ場のないことを知りながら追いつめる。蜘蛛のほうがあんたに比べればまだましだな。蜘蛛はとにかく自分の糸を紡ぎ出して、獲物をからめ取ろうとするんだから。あんたは自分の空虚を紡ぎ出さない。ほんのこれっぽっちも支出しない。あんたは空虚の本尊、空虚の世界の神聖な中心でいたいんだから。」
三島の中でもあまりない作風だな。『異邦人』みたい。 -
初めて三島由紀夫読んだ
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少し昔な情景や心情のレトロでお洒落な描写がとても良かった。哲学的な日本語の使い方が現代には無い雰囲気を醸し出しててよかった。
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三島作品は好きでよく読むのだが、この作品は「文学」性が強く、なかなか理解するのに難儀した。まず設定からいって特異で、よくある男女関係、三角関係を描いた作品なのだが、うち1人が障碍犯、1人がその被害者と聞けばどうであろうか。これだけでも一筋縄ではゆかない作品であることがよくわかるはず。ただ、「解説」で田中美代子が述べているように、本作は小難しい理窟など考えずに、ただありのまま読むのが正解なのかもしれない。本作が描き出す世界は何かのメタファーであり、何かのメタファーではないのだ。
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考えないといけないところがたくさんありすぎて、もうわけがわからなかった。
離れなくても離れられない奇妙な三人。こんな不思議なものをなんの違和感なく読ませるなんて。
著者プロフィール
三島由紀夫の作品





