美しい星 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050133

感想・レビュー・書評

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  • ある田舎の平凡な家族。彼らそれぞれがある時に円盤を目撃したことにより覚醒する。すなわち、自分らは実は宇宙人でそれぞれ違う惑星からやってきたのだと。そして、核兵器におびえる冷戦時代を背景に、人類に正体を隠しつつ彼らの人類救済事業がスタートする・・・。

    三島由紀夫にしては風変わりなシチュエーションの小説だが、SF小説を装いながら自分にはブラックコメディーの小説のように思え、エスプリの効いたユーモアには大いに楽しませてもらった。(笑)シチュエーションは奇想天外だが、きめが細やかで端正な文章表現から生み出される真面目な精神展開や情景描写にて、ここでもほとんど隙が無い完璧な美意識が展開されており、それがまた可笑しみをも誘っている。
    それぞれ別の惑星人だという家族それぞれの思惑の違いが物語の幅を大いに広げ、滑稽さも煽っているのだが、とりわけ、政治にうつつを抜かす長男と、宇宙人的(!)恋愛に浸る美少女の妹の様相は、一見風変わりではあっても、政治へ常に介在しようとする想いや、美少女の一途な破滅的な儚い精神と肉体といった三島節が炸裂していて、このあたりは三島ワールドテンコ盛りの楽しい世界でもあった。そして、彼らに横たわる精神の暗闇を乗り越えて、本性的には異なるはずの彼らの人間的な「家族の絆」の姿は、悲劇的な状況であったにもかかわらず、やはり喜劇のスパイスが充満していて、何とも微笑ましい限りであり、「家族」に対する挑発的な皮肉にも感じられた。
    中盤に登場してくる敵対勢力の異星人は人類を核兵器にて美しく滅亡せんと画策していて、これがまたぶっ飛んだ連中なので何とも可笑しい限りであったが、彼らとの終盤での人類救済か滅亡かの議論は、三島の人類論、人間論、近未来終末論が対比効果により縦横に展開される白眉なクライマックスであり、この小説の構成の力強さを示すとともに、三島の社会や政治やひいては人類全体への挑戦であり、こうした奇抜なシチュエーションの文学的成功であったともいえる。
    しかし、三島が一方で夢想した終末にはついに到らず、現在も漫然と進行している人間の歴史。本作に通底していた通り、三島も最後は個々の「絆」の確かさを理想として期待していたに違いない。
    異色作であるというが、三島ワールドのエッセンスと三島の思考が十二分に詰め込まれた出色な文学作品であったと思う。

  • 面白かったです。
    ある日、自分は地球人ではなく異星人である、という意識を持った家族のお話。
    それぞれ星が違うので、考え方も違うのが興味深いです。
    そして、家族とは別の場所で異星人という意識を持った3人との考えの違いが面白かったです。
    「美しい星」を目指すも、重一郎は人類を救おうとし、3人は人類を滅ぼそうとする。3人が重一郎にキツい言葉を浴びせるシーンは辛かったです。
    黒木が一雄ではなく3人を選んだことで、人類は滅亡に向かうのかなと少し思いました。
    先に映画を観たのですが、原作の方が深みがあって、映画はエンターテイメントだったんだなと思いました。佐々木蔵之介さんの異様さがよかったけど。
    ラストは、映画と違って、家族みんなが地球を離れるのですね。
    三島由紀夫は、人に好意と絶望を抱いていたのかなと思ったりしました。

  • 久しぶりの三島作品。珍しいSFチックな小説。空飛ぶ円盤を目撃したことをきっかけに、自分たちは宇宙から来たものだと確信した家族。そこから、人間の傲慢、強欲、軽薄、核戦争の危機を引き起こす愚かさを嘆きつつ、人類救済のために密かに活動を始める。これに対応し、無視するもの、賛同するもの、対立するものが現れ、様々な衝突や出会いを繰り広げる。三島のその後を知っているので、登場人物の言動は全て三島の言いたかったこと、自分も自覚しているけど否定したかったことではないかと思える。こういうことを含めて「美しい星」なのか、「美しかった星」なのか考えてしまう。

  • 初、三島由紀夫。これは素晴らしい。なんとも、面白く突き刺さる。とても深い人間物語。

  • 「美しい星」

    2017年5月26日公開
    キャスト:リリー・フランキー(主演)、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子
    監督:吉田 大八
    http://gaga.ne.jp/hoshi/

  • 宇宙人としての意識に目覚めた父。
    最初はその言い分を笑って聞いていた家族も
    じきに「霊感」に打たれて父に従う。
    彼ら四人家族は
    各々別の惑星から地球に飛来した霊魂を宿し、
    今では肉体も精神も「それ」に支配されている――

    という設定から、

    ・フォリアドゥならぬ四人狂気?
     folie à quatre(四人狂い)、
     folie en famille(家族狂い)と呼ばれる感応精神病。
     一人の妄想がもう一人に感染し、
     複数人で同じ妄想を共有することが特徴。

    ――かと思ったが、そうではなかった。
    至って真面目に
    人類を核戦争による滅亡から救うべく奮闘する父親と、
    俗物なりに夫を信じて寄り添う妻、
    それぞれ悩みを抱えながら
    父を支えようとする息子と娘の姿が描かれる。

    終盤の、父 vs 一家を敵視する仙台の三人組による
    人類の存亡を巡る激論の場の雰囲気は、
    埴谷雄高『死霊』を彷彿させる迫力だけれども、
    四人家族の言動は終始、特に父と娘が真剣な分だけ、
    どうしても滑稽に映ってしまう。

    とはいえ、第七章、
    作者自身の歌舞伎の演目「鰯売恋曳網」に
    言及する箇所の
    自虐的セルフ突っ込みは素敵(笑)。

    ところで、第一章(p.15)
    下記の「宇宙人」を「吸血鬼」に置き換えても
    話が通じるな……と、
    萩尾望都『ポーの一族』を思い浮かべて
    ニヤニヤしてしまった。

    -----
     宇宙人としての矜りを持つことは結構だが、
     少しでも傲慢になれば、
     それだけ裸になることであり、
     世間から見破られる危険も多い。
     自分たちの優越性は絶対に隠さねばならぬ。
     世間は少しでも抜きん出た人間からは、
     その原因を嗅ぎ出そうと夢中になるからだ。
    -----

    • mkt99さん
      深川夏眠さん、こんにちわ!(^o^)/

      そうなんですよね。
      真面目であれば真面目であるほど可笑しみがあるんですよね。

      人類の方...
      深川夏眠さん、こんにちわ!(^o^)/

      そうなんですよね。
      真面目であれば真面目であるほど可笑しみがあるんですよね。

      人類の方が狂気に満ちていると言いたかったんでしょうかね・・・。

      「宇宙人」を「吸血鬼」に置き換えても・・・。
      なるほど!いろいろと置き換えて楽しめそうですね!(笑)
      2016/07/31
    • 深川夏眠さん
      おおっ、ありがとうございます!

      この本はいろいろな方が三島の異色作!
      と言っておられるので
      興味津々で買ったものの、
      一年近くも...
      おおっ、ありがとうございます!

      この本はいろいろな方が三島の異色作!
      と言っておられるので
      興味津々で買ったものの、
      一年近くも寝かせてしまいました(笑)。

      東西冷戦下という時代背景があって、
      いつ、一瞬にして「世界」が終わっても
      不思議ではない、それを食い止めたい……
      という真剣な気持ちは
      伝わって来るのですが、
      異様に真面目過ぎて270°くらい(?)
      回転した奇怪な面白さを感じました。

      仙台チーム(笑)の脳内イメージが
      どうしても楳図かずお絵の「悪い大人たち」
      になってしまって困りました(;・∀・)ゞ

      ラストに、あの一家にとっての「救い」が
      訪れたので、読後感は悪くなかったです。
      2016/08/01
  • 純文学の作家がSF書くと変な小説になりますね。大江健三郎の『ピンチランナー調書』とか。それがいい味だしてる、そんな気がします。

    最近になって映画化されたので、そちらもおすすめ。平沢進さんの挿入歌『金星』が素晴らしい。
    https://gaga.ne.jp/hoshi/

  • 三島はミステリーやらSFやら通俗的なものは・・・という残念感を再認識した。昔、これだけ買わず終いにした理由を再発見しただけだった。

  • 本屋の平積みでこの本に目が止まったとき、正直「何事だろう」と思ったのでした。
    うっかりしていたのですが、2016年に映画化されていたのですね。それで再び見注目されたのでしょうね。

    SF空飛ぶ円盤小説ものといい、著者が純文学の三島由紀夫氏いい、書かれた年代が1962年(昭和37年)といい、当時話題になっていいのです。

    1962年ころと言えばSFは別世界の文学で、むしろ漫画的な軽いジャンルでしたよ。解説の奥野健男さんの文章にも雑誌に連載中「大丈夫か?」とはらはらしながら読んでいらしたとか。

    でも大丈夫、あれよあれよという間に引き込まれて、設定時代を忘れてしい現代にも通じる暗喩・比喩がありました。特に人間に化けているとされる宇宙人たちの派閥争いの議論は圧巻です。(解説の奥野さんはドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟における「大審問官」の章のようだと)

    宇宙戦争は何も武器を取って戦うだけではありませんのね。しかも三島流唯美主義のきらびやかな文章。「人間に化けている」大杉家家族の生活をなんと巧みに描写してあることか。

    それにわたしには昭和37年という年代に注目してしまいます。
    そうでした、当時はソビエトとアメリカが核実験競争をしていて終末的な不安もありました。冷戦時代と呼び、ケネディ大統領暗殺もこの後すぐ、三島由紀夫氏に至ってはこれから10年たたないうちに衝撃的な死を選びました。

    「美しい星」になってほしい地球はこの小説が書かれてすぐ、月に到達したアメリカの宇宙ロケット乗組員の「地球は青かった」が今にして思えば皮肉なものです。

    翻って現代、世界戦争の危機は去っていません。中国が月の裏に到達したとか、北朝鮮が宇宙開発のため(うそ)大陸間弾道弾ロケットを飛ばすやら核実験やら、アメリカもロシアも何やってるのだか・・・。ますます複雑になりました。少しも安穏な世界になってません。

  • 三島由紀夫のSF小説。(!)これまで読んだ三島由紀夫の小説で一番好きです。
    あるときUFOを見たことで、それぞれ地球ではない星から来たことに気づき、使命感に目覚める家族の話。

    この小説には、苦しみながら生きる人類を全員安楽死させ、美しい星にしようと目論む異星人も登場するのだが、障害者施設を襲った、相模原の事件を思い出す…。
    そして相模原の犯人も「UFOを見た」と言っているそう。
    奇妙な符合だ。三島由紀夫は時代を見越していたのだろうか。

    地球を滅ぼそうとする勢力と地球を守ろうとする勢力とのやりとりが非常に哲学的で文学的で、考えさせられた。

    彼らは本当に他の星から来たのか、そういう妄想にとりつかれただけなのか、
    まあ後者なんだろうけれど、
    そこらへんが最後まで明かされず、余白が残されている点がとてもよかった。

    信じたいものが、真実でいいのだ。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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