近代能楽集

  • 新潮社 (1968年3月27日発売)
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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784101050140

感想・レビュー・書評

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  • 近代能の定義や解釈を考えだしたらキリがなくなるけれども、とにかく八つの面白い噺を堪能できる本であることが、タイトルに対して何よりも担保になっている。

  • やはり三島由紀夫の戯曲は面白い!
    素早い展開に美しい言葉…一気に引き込まれその勢いのままにスルスルっと読めてしまいました。

    全8篇、どれも魅力的な作品でしたが特に気に入ったのは『綾の鼓』と『卒塔婆小町』。
    どちらのお話も妖しく夢幻的な雰囲気を湛えた作品です。小説にしろ舞台にしろそういう雰囲気のものが好きということもあって印象に残りました。

    今回、今まで読んできた戯曲と違ったのは、読みながらこんな風に演出したら面白そう!とかセットや衣装はこんな感じというイメージが沸々と湧いてきた点。
    今まで戯曲を読みながらそんな気分になったことは無かったので、自分でもびっくりでした。
    『熊野』に至っては「ユヤ」をちょっと演じてみたくなったりもして…笑
    戯曲を読む時の新たな楽しみ方を知った気分です!

  •  お、面白かった……滅茶苦茶面白かった……。休日、何か色々書こうかと思っていたけれど、読むことに夢中で一日が終わってしまった。
     美しい序破急だなと思った。「邯鄲」で、赤ん坊を軽々殺してしまうような、自暴自棄な主人公が、全財産寄付したり、毒を飲まされそうになるところで生きようとしたりして、夢の中の悟りを開かせる存在を翻弄して、最後は、井戸の花がキレイだなーと終わる、その鮮やかな、大地への戻り方!「綾の鼓」の、聞こえているのに、聞こえてないそのやり取りの後の、「あと一つ、うっていたら、聞こえていたのに……」という終わり方のSっぷり! 「卒塔婆小町」の、いきなり若返る演出、生まれ変わりと巡り合わせの後の、ちゅうちゅうたこかいなというギャップと戻り方! 「班女」の、ずっと待ち続ける女が、ついにその男がやってきても、「素晴らしい人生!」と女二人で待ち続けることを選んで叫ぶ所! 読んでて、「なんて、最後にかましてくるんや~うわーかましてくるわ~」と思った。もう完璧やねん。「道成寺」の、あの紳士のところへ、死んだ男のことを乗り越えて、元気よく顔でやってくぞーっと怖いもの知らずになって進んでいく終わり方。「熊野」の、偽物のお母さんやらが出てきて、なんかもうようわからんようになって、宗盛がみんなをかえしてユヤと二人きりになったあと、実にいい花見をした……という静かな終わりの感じ。「熊野」についてはあと10回くらいは読み直そうと思う。「弱法師」も素晴らしい。藤原竜也が演劇していたそうだが、人間じゃないと評する人がいた。誰からも愛されるんだよと、一人ぽつんとなる終わり方のにくいことにくいこと。
     一編一編読み終えるたび、三島が「ドヤ! ドヤサ!」と言ってる顔が思い浮かぶ。舞台を見終わった時ぐらいの疲労と「おお~」という感嘆の吐息を洩らしてしまう。完璧やん……としか言葉が出ない……。

  • 能楽? と思いながら読み始めましたが、面白かったです。
    台詞と簡単な指示だけで、これだけの面白さが伝えられるのは新鮮でした。
    特に印象深かったのは「熊野」男と女の人間性の違い、そして、ラストに呻りました。

    • kotonecchiさん
      お勧め読んで下さってありがとうございます。
      今、YouTubeを調べてみましたら、舞台化されたものが公開されています。
      私が学生の頃は、...
      お勧め読んで下さってありがとうございます。
      今、YouTubeを調べてみましたら、舞台化されたものが公開されています。
      私が学生の頃は、ディヴィッド・ルヴォー氏と美輪明宏さんが同じ作品を競うようにかけていて、お互い、どうした?という感じで観劇に大忙しだったのですが、YouTube内に何本か私が見ていたものもありました。
      実際、舞台になっているものを見ると、さらに「近代能楽集」は面白くなります。言葉の無限の可能性に気付きます。是非、お勧めします。
      2023/05/03
  • 永遠に愛せるこの本は、蜷川演出白石加代子主演で観た。年に数回は読み直して、どうして芝居が好きになったのか考え直している。

  • 今更ながら読みました、面白かった!
    オリジナルの能を見た上で読み直したい…。

    邯鄲
    現代の盧生は「夢のなかでだって僕たちは自由です。生きようとしたって生きまいとしたって、あなたの知ったことじゃないじゃないか」と言い、それに対して「だってあんたは一度だってこの世で生きようとしたことがないんだ。つまり生きながら死んでいる身なんだ、あんたは。それが死にたくないとは何だろうね」と突きつけられても、「それでも僕はいきたいんだ!」と半ば駄々をこねているのだが、こういうふうに生きているのかもしれない…そうして生命が戻る庭の花たち…

    綾の鼓
    華子「(夢うつつに)あたくしにもきこえたのに、あと一つ打ちさえすれば」

    卒塔婆小町、漱石の夢十夜の第一夜のようだった。小町と深草少将の話は好きなんですよー。そうして、男の懸念というか、まさに恋とは得恋する直前が一番美しく、留めておきたいという気持ちはよくわかる…。

    老婆「言わないで。おねがいだから」
    詩人「今その瞬間が来たんだ。九十九夜、九十九年、僕たちが待っていた瞬間が。」
    老婆「ああ、あなたの目がきらきらしてきた。およしなさい。およしなさい。」
    詩人「言うよ。…小町、(小町手をとられて慄えている)君は美しい。世界中でいちばん美しい。一万年たったって、君の美しさは衰えやしない。…僕は又きっと君に会うだろう、百年もすれば、おんなじところで…」
    老婆「もう百年!」

    葵上 こちらも好きだったー!光が御息所を選ぶ世界線があったって良いじゃないの!
    光と康子が幻影の中でヨットに乗っている際のト書きに、
    (ふしぎな音楽。下手から、大きなヨットが辷り出る。ヨットは白鳥のように悠々と進んで来て、両人とベッドの間に、丁度ベッドを隠すスクリーンのような具合に止る。両人はヨットに乗っているような様になる)
    という文章を読んだ瞬間に、ローエングリンの第一幕への前奏曲が頭の中で鳴り出したのは私だけじゃないと信じている笑。

    六「さあ、何のために来たのか、あたくし存じません。あたくしは、あなたを殺したいと思うときに、死んだあなたから憐れまれたいと思うでしょう。いろんな感情の中に、同時にあたくしが居ます。いろんな存在の中に、同時にあたくしが居たって、ふしぎではないでしょう。」
    六「どうしてこの世に右と左が、一つのものに右側と左側があるんでしょう。今あたくしはあなたの右側にいるわ。そうすると、あなたの心臓はもうあたくしから遠いんです。もし左側にいるとするわ。そうすると、あなたの右側の横顔はもう見えないの。」
    六「でもあたくし、自分は死なないで、その女の人をきっと殺すでしょうよ。あたくしの魂は生きながらあたくしの体を離れて、そのひとを苦しめに行くでしょう。苦しめて、責めて、さいなんで、あたくしの生霊は殺すまで手を緩めないでしょう。そのひとは、かわいそうに、毎夜毎夜物怪に襲われて死ぬでしょう」

    班女 
    こちらもオリジナル能見てみたい!
    松園の花がたみ、思い出した
    扇を取り替えて、気づかず、女同士それぞれ最高の幸せを手に入れる話

    道成寺
    やっぱり私は蛇になりたいのです〜〜

    熊野
    なぜ宗盛なんだろう!

    弱法師
    天人五衰〜

  • 2024年1月
    三島由紀夫の美意識に胸焼けするかと思ったら、この戯曲集は案外楽しめた(失礼)。
    作品の時代背景を考える必要があるが、現在の日本にも通用するテーマもある。
    個人的には「班女」と「道成寺」が面白かった。

  • 「戯曲」の最高傑作のひとつだと思います。
    戯曲集ですから、一作ずつ、短く、三島由紀夫初心者の若い方にも、難解な印象を強くは与えないと思います。
    どの作品も、元ネタ有り。有名な作品の三島さんのリメイクなのですが、そんなことは後から知ればよいことです。
    かつては、舞台化されたものが始終、衛星放送や劇場で観られたのですが、今は、YouTubeでしょうか???
    同じ作品を違った方々が演出されていましたので、これも舞台志望だった私は唸りました。
    いろんな意味で、私の教科書の一冊です。
    とにかく、台詞とト書きを学べます。

  • 読む前は難解なイメージがあったが、面白かった。「綾の鼓」、「卒塔婆小町」、「葵の上」、「班女」、「道成寺」がお気に入り(ほぼ全てですが)。どの物語にもどこか暗さがあり、引き込まれる。全ての台詞に音読したくなるような美しさがあった。

  • この本は、攻殻機動隊というアニメ作品に出てくるある著者のモデルとなっていると聞き、書店にて購入した。三島作品は久しぶりであったが、彼の文体は個人的に読みやすく耽美な表現に触れる感触が好きである。そして、この「近代能楽集」は文字通り伝統的能楽作品を舞台設定や登場人物などを近代版に再編し、出版当時の世相に即した、という風である。能楽は意外と普遍性の高い作品が多いため、その様なことが出来るのだということを間接的に感じた。ただ、普遍性を羅列するだけでなく三島的な妖艶耽美とも云える表現が織り込まれており、どの物語も大正から昭和初期の薫りが漂ってくる様であった。これを機に能楽にも興味が湧いたため、勉強してみたい。非常に奥深い作品であった。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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