午後の曳航 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 177
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050157

感想・レビュー・書評

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  • 明日にでも桜が満開を迎える日に読み終わった10年振りの三島由紀夫。畳み掛けるように形容を重ねていく文体がなんかもう脅迫的に美。中高生の時の方が遥かに今よりも虚無だったし美しいものを信じて潔癖だったのを思い出しちゃった。

  • 華麗な風景描写はさすが。

    内なる脆い美の崇拝など、金閣寺に似る設定もある。

    神戸児童連続殺傷事件を予見するかのような少年法、動物虐待場面。
    しかし同じに見える行動でも、今の13歳はもっと即物的、感覚的結果だろう。
    同年代の犯罪実行者であるサカキバラの犯行声明は文学的に深いと捉えられることが多いが、コピペ、剽窃によってできている虚しい内面が透けて見える。
    内面の論理性が異様に充実しているこの作品の少年たちは作者の脳内のみの怪物なのか。それとも1963年当時の精神レベルにおいて実在可能な造形だったのか。

  • (2002.05.13読了)(2002.04.11購入)
    内容紹介
    船乗り竜二の逞しい肉体と精神に憧れていた登は、母と竜二の抱擁を垣間見て愕然とする。矮小な世間とは無縁であった海の男が結婚を考え、陸の生活に馴染んでゆくとは……。それは登にとって赦しがたい屈辱であり、敵意にみちた現実からの挑戦であった。登は仲間とともに「自分達の未来の姿」を死刑に処すことで大人の世界に反撃する――。少年の透徹した観念の眼がえぐる傑作。
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    ☆三島由紀夫さんの本(既読)
    「仮面の告白」三島由紀夫著、新潮文庫、1950.06.25
    「愛の渇き」三島由紀夫著、新潮文庫、1952.03.31
    「潮騒」三島由紀夫著、新潮文庫、1955.12.25
    「金閣寺」三島由紀夫著、新潮文庫、1960.09.15
    「青の時代」三島由紀夫著、新潮文庫、1971.07.15
    「癩王のテラス」三島由紀夫著、中公文庫、1975.08.10

  • 三島はおっさんが嫌いということは分かった。というか、再確認した。

  • 主人公は中学生の男の子。父親は亡くなってて、母親がイギリスからの舶来品を売る店をやっててけっこうお金持ち。
    ある時港にやってきた船乗りと母親が恋に落ちて・・・というような話。

    この人の文章は、いつ読んでもあのマッチョな感じからは想像もできないくらいに繊細で、美しい。
    この作品でもそうだけど、「完璧なもの」というイメージが何かしらあって、それを穢したり損なったりするものにものすごく厳しいし、徹底して駆逐して、そのことを美だと思っているような感じ。

    この人の創造する世界が、脳にするっと入ってきてしまうような気がする。私はこの作品を読みながら、抽斗の穴から母親の部屋を覗いたし、潮の香りも嗅いだし、猫が殺されるところも見た、ように思う。

    猫が殺されるところの描写だけはほんとに無理だった。

  • 男は夢から覚めて現実を歩きはじめ、女は恋に落ちていく。そして人生に絶望を覚える、恐るべき子供たち、がここにある。

    最終章は息つく間もなく、竜二の思いが溢れ出し、しかしリアリティを求める子供が彼の運命を揺さぶっていく。

    久しぶりに三島を読み直したが、圧倒的な筆力と文章の美しさに飲み込まれた。小説のもつ空気感をあらためて感じ得た。

  • 少年、残酷だなーおい。
    どうしたらこんな風に育つんだ?
    確かに13歳~14歳の頃といえば、やけに悶々としていた記憶はある。
    そしてビックリするぐらい反抗的。
    でも社会にとか人生にとかじゃなくて、対人間だった。
    孤独に身を置きたがったし、その孤独が『快感』だった。実際には両親に護られた世界の中の“孤立”でしかないことに気付かない愚かな時代だった・・・な。

  •  横浜を舞台にした三島由紀夫の小説として、いろんな本で紹介されるので(自分の読む本が偏っているいるせいもあるが)いいかげん読んでみた。

     時代は「コクリコ坂」とほぼ同じ。元町で輸入品の洋装店を経営する母親と中学生の少年。父親はすでになく、母子関係が微妙にずれはじめていた。そこに突然現れた若く美しい航海士の青年。母親は青年と恋に落ち、少年は青年の逞しさに憧れるようになる。最初はうまくいっていた。しかし少年の夢想的な考え方が関係を壊し始め、ついには破滅へと向かっていく。ちょっとダークな内容。
     
     三島由紀夫の筆で綴られる横浜の美しい景色と、大人のありふれた常識が、少年の無邪気な冷酷さで汚されていく不気味さが、いつまで経っても記憶に残る秀作だ。

  • 子供の冷酷な行動に衝撃を受け、読後しばらく放心状態になった。ストーリーはテンポ良く2時間で一気に読めた。

  • 純潔たる理想と内なる美学の中の
    かつての憧れの者を通して、少年は
    純真という名の潔癖さを持って
    変わりゆく者へ、裏切りという絶望感を認識する。

    内なる世界観に無垢な残虐性が帯び始める様は、
    作者ならではの耽美の言い回しでより生々しく
    ゾクっと最後の余韻を繊細に浮かび上がらせる。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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