宴のあと (新潮文庫)

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レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050164

感想・レビュー・書評

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  • 社会的現実を直接文学化した作品として海外でも評価された作品のようです。日本の非政治的風土を皮肉を込めて表現したと、あらすじを読んでから読み始めました。
    2人の対照的な夫婦の気持ち、性格を踊らせながら書いていくことにより、当時の政治を皮肉っています。
    印象に残ったのは最後の山崎の手紙です。「選挙があらゆる偽物の幸福を打ち砕き、野口氏もあなたも、裸の人間を見せ合う事になったという点で、本当の意味で、不幸で合ったとは言えない」

    主は、当時の政治背景が分からない若者であるので共感は出来ませんでしたが、三島氏の使う文章はやはり引き込まれます。

  • 読後に“満腹感”を催すような「三島由紀夫の文章」で、昭和30年代前半辺りの世界で繰り広げられる、少し年嵩な男女の愛憎と「政治」とが描かれる訳だ。
    三島由紀夫は、実際に起こった事件等を参考に、事件関係者を“作中人物”として練り上げ、“作中世界”を巧みに組み上げ、あの「三島由紀夫の文章」で作品を創ったという例が多く在る作家だ。『宴のあと』に関しても、作品が登場した頃には「同時代」な、「タイムリー」な話題が含まれていたということなのかもしれない。が、現在の時点でこれを読んでも「のめり込んで暴走する女と、その女に付いて行けない、御し難いものを感じてしまう男」という、或いは演劇でも視ているような気にさえなる物語である。正しく“作品”で、“裁判沙汰”の中で「何がどういうように問題になったのか??」と不思議な気分にさえなってしまう。
    『宴のあと』は、流れが演劇を思わせる―『戦後日記』に観劇や映画鑑賞をした話題が幾度も出て来る。意識するしないを問わず、三島由紀夫は自作の構成の中で自然と「演劇のような」感じで物語を綴っていたのであろう…因みに三島由紀夫には戯曲作品も在る…―のだが、読者に示される作中世界というのは、何か鮮やかな色彩の情景写真が随時提示されているかのようである。そして人物の、ことにかづの描写は「丁寧に女性モデルを撮るポートレート写真」に写っているモノを「言葉だけで伝えようとしている?」かのようである。正に「鮮やかな画が浮かぶ」というような感で、作中世界に引き込まれた…
    読後に何となく思ったが…本作は作中の“時代”を少し変えて翻案し、テレビドラマか何かにでも仕立ててしまうことさえ適ってしまうような気もした。正しく、少なくとも文庫本で「第77刷」と半世紀も、作品の初登場時は更に以前だが、永く読み継がれた“古典”である。本作を読み終え、やや大きな満足感に包まれている…

  • Ti

  • 何故か家にあったので、初めて三島由紀夫に挑戦。切腹した人だよな…という微妙な予備知識しかなかったんだけど、そこから思ってたイメージとは全く違った作品だったので、ビックリした。まず情景描写が恐ろしく繊細で美しい。耽美な感じ。あんだけ細かく書いたら冗長に感じそうなものだけど、それが全然無いのが凄い。あと女性が魅力的に描かれている(男性については時代背景とかもあってよく分からない)。しかし、政治が絡む人間関係の機敏というのがイマイチピンと来ない。あと個人的には、一人称ではない文章は読みにくいなと思ったり。でも全体としては思ってたより読みやすくて気に入りました。

  • 舞台は政界、主役は50歳の女と60歳の男、
    それにもかかわらず、あるいは、だからなのかもしれませんが、
    ストーリーは美しく、どこかロマンチックですらあります。

    都知事選という狂乱に突き進むことで浮かび上がる、
    それぞれの考え方の違い、周囲の変化、熱狂と動揺、
    そして宴のあとの虚無感と、そこからの再スタート。
    いいですね。こういう小説好きです。

    わりかし普遍的なテーマであるため、
    三島由紀夫のクセのないところだけ美味しく頂ける、
    そんな小説として楽しむこともできるかと。

    テーマだけでなく、表現も比較的大人しいため、
    コアなファンはパンチに欠けると思われるかもしれませんが、
    さほどのファンでなかった私にとっては、
    いいじゃん、三島由紀夫、と再確認させられる小説でした。

  • はじめての三島由紀夫。
    美しい文体かはわからないけど、面白かった。
    するする読めた。飽きさせない感じ。
    でもいま深い感想が残っていない。残念。言葉で語れないならすぐ忘れてしまうんだろうな。結局よくわかってないんだろうな。

    わからない言葉も沢山あって漢検の勉強がしたくなった。的確な言葉を知っていたら気持ちいいはずー

    かづの豊潤な肉体の魅力が羨ましかった。
    いつも色や柄や小物に意味を込めて着物を着るのがよかった。着物って面白い。ファッションってこう楽しむべきなんだな。

    政治とは?

  • うーん「潮騒」のようなインパクトは無いなあ。

    機械的で理想主義者の政治家夫と、熱情的でリスクラバーな獣系妻が協力して選挙に挑むというストーリー。

    「政治とは、倫理や志ではなく、結局はカネだ」という“政治とは何ぞや”に対する答えに、本職の夫よりも早く、妻が理解してしまうのが何とも切ない。

    より痛烈に。読んでる側が気持ち悪くなるくらい、徹底的に人間の内情を描写する三島はやっぱスゲーと思う。また、女性描写もさすが三島。50歳過ぎの熟れた女性の艶を見事に表現している。

  • 訴訟問題でも有名な、三島由紀夫の代表作。特に物語中盤から終盤にかけての盛り上がりが秀逸。
    説明的過ぎる文体が気に障るが、読む人によってはそこが「美しい日本語」と捉えられるから不思議である。

    しづという人物に対して、私は一種の扇動家のような印象を持った。天性の人懐っこさと激情、そして恵まれた肉体を武器に、次々に周りの人間を巻き込んでいく様は、どこか恐ろしい。純粋に自然とやっているから、尚更タチが悪い。その犠牲者とも言える野口がただただ哀れである。その後、しづはどのような最期を迎えたのだろう。

  • 太田光さんのラジオを聴いていたら、太宰ファンの彼が三島由紀夫を薦めていた。そんなとき他方面から三島作品を薦められたのは、今は三島を読めという天の啓示か。リズム感が良くて物語が生き生きと進んでいく。大学時代に読んだ「孔雀」という短編集がやけにオスカー・ワイルドに似ていて、改めて彼の来歴を読めば一時期ワイルドに傾倒していたとのことだが、とにかく全く印象が違う。主人公かづの情熱は、さながら山崎豊子の作品に出てくる女性のようだが、この日本の政治を皮肉たっぷりに描き出した作品、金と選挙活動、理想と現実。まさに野党が勝ってしまった後に読むと感慨深いが、しかしながら民主党はこの山崎のようには負けなれていない人たちだからこそ勝ったのかもしれない。そうなると、ますます野党も与党も似たり寄ったり的な三島の指摘が新鮮なのかも。

  • 生き生きとしたやり手の料亭女将、福沢かづと、あまりにも貴族的な革新主義者、野口雄賢。ひょんなことから結婚し、野口の都知事選を戦うことに。政治に疎いかづの政治性と、政治家であるはずの雄賢の政治に向かない姿。2人の対比が面白かったです。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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