真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1054
レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050188

感想・レビュー・書評

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  • 伊豆の海岸で2人の子供を失った女性(朝子)の物語です。

    彼女が味わった理不尽な悲劇が、時の経過によって忘れかけている際、彼女がその忘却に対して葛藤している場面で描かれている
    『…人間を狂気に陥れて、死なせるのには、どれだけの大事件が必要なのか?それとも狂気は特殊の天分に属し、人間は本質的に決して狂気に陥らないのか?
    我らを狂気から救うのもは何ものなのか?生命力なのか?エゴイズムなのか?狡さなのか?人間の感受性の限界なのか?…』
    の流れと勢いには、朝子に感情移入している反面、高揚する感情も押し寄せてきて表現し難い複雑な心境になりました。


    数段に分かれて累積している雲の上段の部分を表す表現『箒で掃いたあとのような軽やかな雲』はとても綺麗でお気に入りです。

  • 【本の内容】
    著者自選による第二短編集。

    伊豆今井浜で実際に起った水死事故を下敷きに、苛酷な宿命とそれを克服した後にやってくる虚しさの意味を作品化した『真夏の死』をはじめ、文壇へのデビュー作ともいうべき『煙草』、レスビアニズム小説の先駆的な作品『春子』、戦後の少年少女の風俗に取材した作品等、短編小説の方法論と技術的実験に充ちた11編を、著者自身の解説を付して収める。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    「雨降る夜に」の〈僕〉は彼女にどんな本を貸したのだろう?

    自分なら、せっかく雨の日だけ開館する図書館なのだから、雨をモチーフにした物語がいい。

    長編だと次に会える日が先になってしまうから、すぐに読める短編にしよう。

    ふと三島由紀夫の自薦短編集『真夏の死』(新潮社)に目がとまる。

    最後におさめられた「雨のなかの噴水」。

    恋愛小説にしてはシニカルだが、本好きの彼女なら面白がってくれるかもしれない。

    少年は重たい砂袋のような、この泣きやまない少女を引きずって、雨のなかを歩くのにくたびれた。

    という一文で始まる。

    少年の名は明男。実に傲慢でいやな男だ。

    女に別れよう!というセリフを放ってみたい。

    そのためだけに、少女――雅子を愛したふりをして、口説き、一緒に寝ることまでするのだから。

    明男は丸ビルの喫茶店で念願の一言をいい、涙を流す雅子をじっと眺めている自分の心の薄荷のような涼しさにうっとりする。

    ところが雅子が泣きやまないので、明男は泣き袋(雅子のことだ!)の捨て場所を探して公園の噴水に向かう。

    一見、女の子にすすめる小説じゃないような感じだが、ラストシーンで明男がぎゃふんといわされるので痛快だ。

    天から降る雨と、下から突き上げてくる噴水の対比も見事。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 私は、真夏に死の匂いをいつも感じる。
    この作品を読む度、走り水の景色が頭に浮かぶ。

  • 三島由紀夫が1970年に発表した自選短篇集の第2弾。彼の自決の数カ月前に書かれた解説と真夏の死(1952)、煙草(1946)、春子(1947)、サーカス(1948)、翼(1951)、離宮の松(1951)、クロスワードパズル(1952)、花火(1953)、貴顕(1957)、葡萄パン(1963)、雨のなかの噴水(1963)の11編を収録。どの作品も表現が美しく、取り扱っているテーマが"死"や"エロティシズム"であっても品位が損なわれることがありません。好きなのは"翼"、"真夏の日"、"雨のなかの噴水"です。

  • 三島由紀夫の自選短編集。三島由紀夫はこれがいいと勧められたので購入。表題作「真夏の死」が素晴らしい。実際の事件を元にして書かれた小説らしい。お気に入りは「サーカス」刹那的。退廃的美しさ。2013/419

  • 三島の自選短編集。主義主張が前面に出ていない三島は相当に好き。中でも『真夏の死』はマイベストオブゆきお。人間の感情の描写が絶品。シニックで寓話的な『サーカス』みたいな小品もよい。

  • ”ボーイズラブ”の真逆のものとして、キレイな女の子と可愛い女の子がキャッキャウフフする”百合小説”なるジャンルがあるが、私の知る限り、その最強の作品が本作に収録されている『春子』である。三島由紀夫、おそるべし。

  • バラエティ色豊かな短編集。最初期〜中期にわたる作品がバランスよく配置されている。

  • 初期短編。今年は三島作品の初期によく登場する少年の青々しさにはまってる。
    相変わらずの緻密な描写はいくら読んでも飽きない。
    ぴょこりとあらぬ方向にお辞儀をして逃げた、って場面なんてとても好き。
    個人的には短編がにがてなので、どうしても「ああもう終わり」とおもうけれど、短編好きなひとにはおすすめ。

  • ねちっこく精緻な文章が、とても心地いい。
    表題作は力作。こんな空虚な気持ち、この追体験でしか味わったことがない。

著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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