青の時代 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.28
  • (44)
  • (117)
  • (332)
  • (41)
  • (7)
本棚登録 : 1362
レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050201

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「認識」と「行動」-三島の小説でよく見られるテーマ。
    つまり人間は頭で考えてから行動するのか、それともあくまで人間の活動自体がまずあって、それを理由づけて体系化するうえで認識が起こるのか?

    三島の持論は「行動が先」だったと思うが、行動と認識とが規則どおりに動きシステム化されていれば、世の人々は悩まないで済んだはず。この二者が実体を素直に表に見せず、時として行動と認識の順序がごっちゃになったり入れ替わったりするから、ややこしい。三島の意図はこの行動と認識の区別を、人物創作によって整理しようとしたものと私は考える。
     
    「青の時代」は1950年に発表。
    前年に発表された仮面の告白の主人公が、母の胎内から生まれ出た時の情景を覚えている、と独白する箇所が印象に残っている。なぜなら作中登場人物が自分の行動と認識に一定の制御を与え、理由付けをしており、いわば三島によって「プログラミング」された人物の創作に至ったと思えるからだ。

    この作品では冒頭で作者が人物創造の意図を「序」として告白している。
    今までにない人物創作によって真実の人間像に迫ってみせる、という堂々たる宣言ではないか?
     
    確かに尻すぼみの印象はある。起承転結の結がすぼんだような感じ。主人公と相対する第二キャラの出来も今一つだ。
    しかしこの作品はあくまで試行だと考えれば、金閣寺によって、主人公の行動や思考の動機付け描写の緻密さや、柏木という第二キャラの造形となって花開いたのだ、と捉えることもできるのではないか。
    (2008/6/23)

  • 人生は、これをわれわれが劇的に見ようと欲するとき、まず却ってわれわれに劇を演ずることを強いる。
    人生を我々が「劇」として見ようとする時、決まって我々に「劇を演ずる役者」である事を強いる。

  • 文学

  • この作品を読んでみて、漸く三島由紀夫の作風が何となく分かったような気がした。崇高な精神を持ち、公の理解に阿ることなく自分の表現を貫く。分かりやすさよりもある一定の教養がないとついていけない、そんな冷たさを持っているのだと感じた。

  • この小説は、作者と友人との会話で始まる。主人公のモデルとなった人物や、主題というよりはモチーフに近い内容を、序の段階で、対話という形式を以って説明されるのである。いわば料理の材料とレシピが明かされたわけである。

    そうして、詳細に語られた主人公の少年時代から、戦争、戦後へと軽々と突き進み、太陽カンパニイという会社を設立するところから、その破滅の予感までを描き、この小説は終わりを告げる。

    僕は、主人公の、意識的な冷酷さと、絶えず冷静でいようとする慎ましい努力が好きだ。ただ、内省に耽るあまり、周囲が見えていない。そういう世間知らずな一面は、どこか自分と通じる部分があって、なんとも好ましくない、嫌な感じをさせるのも、三島由紀夫の若者に対する観察力の素晴らしさを、宣伝しているに他ならない気がしている。

    結局のところ、この小説は素人目に見ても、何を目的としているのか伝わりづらい、中途半端な形で終わってしまっていた。

    主人公の精神を読むのか、ストーリーを追うのか。戦時中の若者達に氾濫していたニヒリズムを知ればいいのか。すべてが途中で投げ出され、投了した将棋盤を見ているような、どこか納得のいかないとは言い過ぎにしても、そういう心持ちにさせられた。

  • 行動一辺倒で、富も名誉も女も全て思い通りに手に入れた男が主人公である。物質的幸福に恵まれるほど精神的幸福が遠ざかるというテーマに思えた。が、まだ半分も理解できていない気がする。

    それにしても、新潮文庫にはガッカリした。せっかく後味よく読み終えたのに、最後の講評がダメ出しばかりで作品が台無しだった。

  • 唯物論と観念論は並立して存在する一方
    けして交わることのないものである
    で、あるがゆえに
    人間は、物質的な不足のなかにありつつも
    幸福を感じることが可能なのだ

    …戦争の時代を経てなお、経済的に裕福な実家を持つ川崎誠は
    そんな呑気なことを考えながら
    しかし唯物論者きどりの女の気をひくために
    父からゆずりうけた財産を増やそうと
    投資に手を出した
    そして詐欺師にひっかかり、大損ぶっこいたのだった
    その時の悔しさが、彼自身にも詐欺師の道を歩ませた
    宗教家でも社会主義者でもない彼にとって
    所詮、物質的幸福と観念的幸福は切り離せないものだった
    にもかかわらずそれでいて、彼は高いプライドの持ち主だった
    正論家ゆえに傲慢な、父親への反発があったため
    川崎誠は、あまのじゃくで依怙地な性格に育っていた
    しかしその臆病さと狡猾さに助けられ
    常に本音は隠し、周囲を欺いていた
    …というよりは、自分自身すら欺いていたのかもしれない
    つまり憎むべき父親のありようこそ
    実は川崎誠にとっての理想我であるということに
    彼自身気づいていなかった
    だから川崎誠は詐欺師にも、ましてやくざにもなりきれない
    いやそれはむしろ
    父親のように社会から認められたい
    その一心で始まる子供の火遊びにすぎなかった

    光クラブ事件をモデルにした作品ということで知られているが
    実際のそれとはかなり乖離しているようだ
    三島にはありがちなことで
    これも主人公の心理描写がくだくだしく、非常に読みにくい小説である

  • 私の記憶の中で一番最初に見たドラマは「青の時代」。オープニングとタイトルぐらいしか思い出せないけど、なんとなく印象に残っていて、古本屋でこのタイトルが目について「えっあのドラマって三島由紀夫が原作だったのか」とすかさず手に取った。

    けれど内容はそれとは違う別物で、堂本剛とは違う「青の時代」がしっかりと描かれていた。

    父の期待や、他人からの過剰な評価。
    自分の思いに反して膨れ上がる、周囲が期待する「誠」のイメージについて行こう必死になる。そうではなく自分の思う「誠」を生きたいと思うようになった主人公は頭が良いのにとても不器用で、私なら今のあなたにこう言ってあげたい、と思わせる。

    でもそれは私のエゴでしかなく、主人公の頭の良さや、考察について行くのに必死になりました。

  • 三島も4作目になりました。精神分析とその描写はほんとに詳細で繊細でなめらかで不器用で、気づくとつと共感をおぼえてしまう自分に怖さを感じる。男の人って多くの人がこんな風に父と決別するものなんですかね。しかしソシオパスな誠さんに振り回される女性たち、特に逸子さんのその後が気の毒です。

  • 気に入った一文

    かれらは当てずっぽうに、社会という無形のものに釣糸を垂れているのであった。
    浮子は動いたろうか。

    行変えがセクシー。メダカ程度の社会でいいから釣り上げてやりたいね。

全132件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三島由紀夫の作品

青の時代 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする