青の時代 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050201

感想・レビュー・書評

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  • 人生は、これをわれわれが劇的に見ようと欲するとき、まず却ってわれわれに劇を演ずることを強いる。
    人生を我々が「劇」として見ようとする時、決まって我々に「劇を演ずる役者」である事を強いる。

  • 「認識」と「行動」-三島の小説でよく見られるテーマ。
    つまり人間は頭で考えてから行動するのか、それともあくまで人間の活動自体がまずあって、それを理由づけて体系化するうえで認識が起こるのか?

    三島の持論は「行動が先」だったと思うが、行動と認識とが規則どおりに動きシステム化されていれば、世の人々は悩まないで済んだはず。この二者が実体を素直に表に見せず、時として行動と認識の順序がごっちゃになったり入れ替わったりするから、ややこしい。三島の意図はこの行動と認識の区別を、人物創作によって整理しようとしたものと私は考える。
     
    「青の時代」は1950年に発表。
    前年に発表された仮面の告白の主人公が、母の胎内から生まれ出た時の情景を覚えている、と独白する箇所が印象に残っている。なぜなら作中登場人物が自分の行動と認識に一定の制御を与え、理由付けをしており、いわば三島によって「プログラミング」された人物の創作に至ったと思えるからだ。

    この作品では冒頭で作者が人物創造の意図を「序」として告白している。
    今までにない人物創作によって真実の人間像に迫ってみせる、という堂々たる宣言ではないか?
     
    確かに尻すぼみの印象はある。起承転結の結がすぼんだような感じ。主人公と相対する第二キャラの出来も今一つだ。
    しかしこの作品はあくまで試行だと考えれば、金閣寺によって、主人公の行動や思考の動機付け描写の緻密さや、柏木という第二キャラの造形となって花開いたのだ、と捉えることもできるのではないか。
    (2008/6/23)

  • 文学

  • この作品を読んでみて、漸く三島由紀夫の作風が何となく分かったような気がした。崇高な精神を持ち、公の理解に阿ることなく自分の表現を貫く。分かりやすさよりもある一定の教養がないとついていけない、そんな冷たさを持っているのだと感じた。

  • この小説は、作者と友人との会話で始まる。主人公のモデルとなった人物や、主題というよりはモチーフに近い内容を、序の段階で、対話という形式を以って説明されるのである。いわば料理の材料とレシピが明かされたわけである。

    そうして、詳細に語られた主人公の少年時代から、戦争、戦後へと軽々と突き進み、太陽カンパニイという会社を設立するところから、その破滅の予感までを描き、この小説は終わりを告げる。

    僕は、主人公の、意識的な冷酷さと、絶えず冷静でいようとする慎ましい努力が好きだ。ただ、内省に耽るあまり、周囲が見えていない。そういう世間知らずな一面は、どこか自分と通じる部分があって、なんとも好ましくない、嫌な感じをさせるのも、三島由紀夫の若者に対する観察力の素晴らしさを、宣伝しているに他ならない気がしている。

    結局のところ、この小説は素人目に見ても、何を目的としているのか伝わりづらい、中途半端な形で終わってしまっていた。

    主人公の精神を読むのか、ストーリーを追うのか。戦時中の若者達に氾濫していたニヒリズムを知ればいいのか。すべてが途中で投げ出され、投了した将棋盤を見ているような、どこか納得のいかないとは言い過ぎにしても、そういう心持ちにさせられた。

  • 行動一辺倒で、富も名誉も女も全て思い通りに手に入れた男が主人公である。物質的幸福に恵まれるほど精神的幸福が遠ざかるというテーマに思えた。が、まだ半分も理解できていない気がする。

    それにしても、新潮文庫にはガッカリした。せっかく後味よく読み終えたのに、最後の講評がダメ出しばかりで作品が台無しだった。

  • 唯物論と観念論は並立して存在する一方
    けして交わることのないものである
    で、あるがゆえに
    人間は、物質的な不足のなかにありつつも
    幸福を感じることが可能なのだ

    …戦争の時代を経てなお、経済的に裕福な実家を持つ川崎誠は
    そんな呑気なことを考えながら
    しかし唯物論者きどりの女の気をひくために
    父からゆずりうけた財産を増やそうと
    投資に手を出した
    そして詐欺師にひっかかり、大損ぶっこいたのだった
    その時の悔しさが、彼自身にも詐欺師の道を歩ませた
    宗教家でも社会主義者でもない彼にとって
    所詮、物質的幸福と観念的幸福は切り離せないものだった
    にもかかわらずそれでいて、彼は高いプライドの持ち主だった
    正論家ゆえに傲慢な、父親への反発があったため
    川崎誠は、あまのじゃくで依怙地な性格に育っていた
    しかしその臆病さと狡猾さに助けられ
    常に本音は隠し、周囲を欺いていた
    …というよりは、自分自身すら欺いていたのかもしれない
    つまり憎むべき父親のありようこそ
    実は川崎誠にとっての理想我であるということに
    彼自身気づいていなかった
    だから川崎誠は詐欺師にも、ましてやくざにもなりきれない
    いやそれはむしろ
    父親のように社会から認められたい
    その一心で始まる子供の火遊びにすぎなかった

    光クラブ事件をモデルにした作品ということで知られているが
    実際のそれとはかなり乖離しているようだ
    三島にはありがちなことで
    これも主人公の心理描写がくだくだしく、非常に読みにくい小説である

  • 私の記憶の中で一番最初に見たドラマは「青の時代」。オープニングとタイトルぐらいしか思い出せないけど、なんとなく印象に残っていて、古本屋でこのタイトルが目について「えっあのドラマって三島由紀夫が原作だったのか」とすかさず手に取った。

    けれど内容はそれとは違う別物で、堂本剛とは違う「青の時代」がしっかりと描かれていた。

    父の期待や、他人からの過剰な評価。
    自分の思いに反して膨れ上がる、周囲が期待する「誠」のイメージについて行こう必死になる。そうではなく自分の思う「誠」を生きたいと思うようになった主人公は頭が良いのにとても不器用で、私なら今のあなたにこう言ってあげたい、と思わせる。

    でもそれは私のエゴでしかなく、主人公の頭の良さや、考察について行くのに必死になりました。

  • 三島も4作目になりました。精神分析とその描写はほんとに詳細で繊細でなめらかで不器用で、気づくとつと共感をおぼえてしまう自分に怖さを感じる。男の人って多くの人がこんな風に父と決別するものなんですかね。しかしソシオパスな誠さんに振り回される女性たち、特に逸子さんのその後が気の毒です。

  • 気に入った一文

    かれらは当てずっぽうに、社会という無形のものに釣糸を垂れているのであった。
    浮子は動いたろうか。

    行変えがセクシー。メダカ程度の社会でいいから釣り上げてやりたいね。

  • 2017/02/23 読了

  •  戦後実際に起こった光クラブ事件をモデルにした小説。
     超合理主義である主人公山崎誠は、一高、東大法学部に進学するほどの秀才。一方で、過剰な自意識を持っており、随所に出てくる『』で囲われた心情の吐露は、彼が尋常ならざる自意識の持ち主であったことをうかがわせる。
     戦後の混乱の中で、彼は「太陽カンパニイ」という高利貸しの会社を設立し、みるみるうちに大きな額のお金を動かすようになる。しかし、彼は物質の豊かさが精神的な豊かさにつながるとは考えていない(この辺りの哲学的な観念は私の読解力が足りなくてよくわからん)。女が精神的に自分を愛したとき女を棄てることを画策するあたりに、歪んだ人格が垣間見える。
     物語の最後に、彼の幼少期の回顧シーンがある。大きな展示用の鉛筆の模型(非売品)を手に入れたいと強く願った日々。法外なお金にしても、輝子にしても、子供のころに欲しがった鉛筆の模型にしても、手に入れられないものを手にいれるプロセスを楽しみたかっただけなのかな。「数量刑法学」の研究を続けていたら彼は、私たちの社会はどうなっていたのだろうか。

  • 大学時代に手に取った時には、読了しても多くが意味不明だったが、20年近くが経ち社会人として経験も培った今ならばと思い、再起。

    流石に全てを理解するのは難解を極めるが、大学時代の感触を3割とすれば、今回は7〜8割方吞み込めた自信がある。

    精神と物質世界の充足を相容れないものと峻別する、川崎誠の超現実主義。最終的に設計図と現実との乖離に敗北し、自ら毒を仰ぐ運命とはいえ、ともすれば幼子の意地にも似たその頑固さと一途さは、毎日に倦み疲れて理想と現実の狭間を彷徨っている自分にはなかなか眩しく見える。

    金融に手を出さず、学者になっていれば終生の研究課題となっていたであろう数量刑法学も、理念そのものは非常に合理的で辻褄が合っている。客観性を標榜しつつも結局は裁判官の心証に依拠せざるを得ず、またその裁判官の主観が判例となって以降の類似案件を拘束する現代司法の先を行く、文明を進める思想になり得たのではないか?

    無論、刑法の応報刑と教育刑という理念に真っ向からぶつかることになり、ある意味では罪刑法定主義さえも否定するため、現実に導入するには課題も多い(というより、法学会に革命でも起きない限りまず有り得ない)が、それでも人間の行為を定量的に評価するという試みは面白い。ユートピアか、あるいはディストピアかもしれないが、可能性だけは感じる。
    実際に誰か提唱している学者はいるのかな…?

    素材となる光クラブの事件から1年も経たずに上梓されたため、人物像は大部分が作者の創作であろうが、それでも戦後の焼け野原の中、現代よりもずっと広く映える空を見上げて、そこをカンバスとして誰よりも緻密に人生の設計図を描かんとした一個の人間に、一種の憧憬を感じたことは事実。

    ただ、結局彼の幸せはどこにあったのだろうか?というところだけ最後まで疑問ではあった。
    それと、どう言い繕っても結局クズであることだけは否定できない。プラグマティズムには憧れるけど、ここまで振り切ってしまってはいかんね。

  • 三島由紀夫の作品を読む。主人公の幼少期から思春期における父親に対する反抗心は心の襞が上手く表現されており、どんな大人になるのか楽しみだった。しかし、実際に社会に出た時と前半の話との脈絡があまりないように思え少し残念だった。

    主人公の誠が投資詐欺に騙された後、今度は仲間に誘われ自分が同じようなことをすることになるが、ここら辺が自分のような凡人には分からない感覚に思えた。

    文学作品にしてはページ数も少なく読みやかった。

  • 【291】

  • 光クラブ事件をモチーフにした小説。
    主人公 川崎誠は、あらゆるものを疑っているように見えて、権威に対しては疑うことを知らず、また、残酷な遊戯を行うことで、非凡な事象に作り変える、など、性格に難がある(というと平凡だが)人物。
    そして、その性格に起因する合理性で自分の行動を制約し、学友の愛宕から、決して君は君の自由にならない、と言わしめるほど。
    物語の前半では、主人公の性格、心理的な動きにスポットを当て、後半では、その性格に忠実に行動した結果、どういった顛末を迎えるか、が描かれている。

  • めんどくさいやっちゃなー、主人公。きっと作者もめんどくさい人だったに違いない。

  • 比喩が美しくて、素晴らしい。賢すぎる青年の苦悩。異常なんだけど、普通にも思える。そんな、狂気の狭間に、みんないるなのだと言う、怖いような、安心なような、様々な感情を味わった。三島由紀夫を読むということは、自分の価値観と向き合うということ。

  • 2002年 読了

  • 実際にあった事件をもとに、事件の主役の心理を考察した作品です。主人公の誠はしょせん子供の心理を出ていないように私には思えました。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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