豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050232

感想・レビュー・書評

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  • 再読。昭和16年、47歳になった本多は仕事で赴いたタイ(シャム)で、かつて日本に留学していた王子の末娘ジン・ジャンが、勲の生まれ変わりであることを知る。今までとちょっと違うのは、この時点で7歳の月光姫が自分の前世の記憶を持っていること。

    このタイ、インド旅行のくだりは三島自身の旅行記のようでもあり、詳細な描写は興味深いけれど小説の内容とは直接関係のない無駄な部分も多い。さらに、この四部作全体のテーマに関わることとはいえ、大乗・小乗仏教、ヒンズー教、インド神話、マヌ法典からオルフェウスやディオニュソスにいたるまで、本多のモノローグを借りた三島自身の知識の博覧会のような部分も長々とあり、いささか退屈。アラヤシキとかもういいよー。

    さらにその11年後、昭和27年、本多は58才。18歳になったジン・ジャンが留学生として日本にやってくるが、すでに彼女は前世の記憶を失っている。すでに老年にさしかかっているが本多はジン・ジャンに恋をする。しかしロリコンな上に覗き趣味の本多は自分の恋が成就しない決定的な瞬間を覗き見してしまい・・・。

    輪廻転生、これが「海のオーロラ」(里中満智子)のような少女マンガであれば、引き裂かれた恋人たちが何度も生まれ変わって悲恋を繰り広げるところだけれど、三島の描く転生者たちは生まれ変わるたびに違う相手に恋をする。清顕は聡子のために死ぬけれど生まれ変わった勲は聡子のことなど知らず槇子に恋するし、その転生であるジン・ジャンは槇子とも会っているけれど何の感慨も催さず別の人物に恋をする。本多はすべてを見ているけれど、ジン・ジャンはけして本多には恋しない。

    「この世には、記憶に留められる者と、記憶を留める者と、二種類の役割しかない(P188)」というくだりがありますが、 自らを「客観性の病気」と自認する本多は間違いなく記憶を留める側であり、傍観者である彼が覗き趣味になるのはある意味自然ななりゆきかも。本多という人物には明らかに三島自身が投影されているけれど、にも関わらず、いや、だからこそ、三島自身は「記憶に留められる」側にいきたくてもがいていたのかもしれないと思う。

  • 豊饒の海、第3巻。
    美しい華族の清顕、右翼テロリストの勲ときてタイの月光姫に物語は流れ着きました。
    解説にもありますが正に起承転結の「転」である本作は、タイ・インドから物語が始まり、三島由紀夫の思う輪廻転生の核について様々な形で描かれていました。
    阿頼耶識という一瞬一瞬の識を、水の飛沫が連なって一本の線に見せている「滝」を例にしており、
    「滝の下で」と言った清顕の一瞬の美しさを引き継いで滝の下に現れまた一瞬で消えてしまった勲。
    今西の変態主義的な「柘榴の国」のコミカルな台詞の中にも、美しいものは死ぬべきことや一瞬の性的な絶頂こそ最上であるという設定の描写があり、
    =人生の1番美しい瞬間に死んでいった清顕と勲
    の運命について納得させられる重要な文章が非常に多かったです。
    流れ行く一瞬を清顕、勲、月光姫と受け継いで
    三島由紀夫曰く「世界解釈」の解答が最終巻に向けて一気に加速した第3巻でした。

  • 本多の印象が、変わってしまったわ。。

  • 印度、月光姫、のぞき穴、同姓の交合・・妖しく織りなす転生の物語の三。

  • 己の理性のみ拠り所に生きてきた裁判官がインドのベナレスで生と死の究極の形に出会い、価値観をぼろぼろにされてしまう。現世のすべての努力は虚しいものなのか。人は輪廻転生し、この世の辛苦を味わい続けるのだろうか

  • ストーリーは、情熱感・勢い・ドキドキハラハラには欠けるが、人間らしい本多が垣間見える、1~2巻とはまた違ったテイストの作品だった。
    最終巻に向かってどんな伏線が張られているのか楽しみである。

  • 三島自身の校了の感想も、これまででもっとも不愉快だったと言っているそうで、この小説を書き終えた半年後に自衛隊での演説をおこなうことになるわけだが、このことを知って読むと一層感慨深い。内容は輪廻転生や人間の生をテーマとしているが、とにもかくにも人の美しさ、醜さ、高潔さ、狡猾さ、悲しみ、エロティシズムが、綺麗で力のある言葉で描かれている。前半後半で時間の流れがまったく違うと感じることも驚き。やはり三島は一度は読むべき。

  • このシリーズは間をおかずに一挙に読んだ方が関連がわかりやすい。
    第三巻は異国の女性が主人公なので、ややエログロナンセンス。

    二巻までは理性と良心の人だった本多が覗き魔になったり、孫といってもおかしくない娘に懸想したり。人物の誰にも共感が持てなかった。長ったらしい仏教などの解説部分も冗長にすぎる。

    ラストで驚きの結末を迎えるが、ボリュームもなく、二巻までに比べると、ストーリーを煮詰めずに荒書きした印象。作家の死の半年前脱稿を考えると、追い詰められていたのかと感ずる。

  • 20141118読了。
    豊饒の海第3巻。輪廻転生の話が相変わらず続いているのだけど、今回は主人公が本多になる。
    輪廻について本多が感じていることが書かれていて面白い。
    また実際にインドへ行ってガンジス川を眺めたことがあるため、無常観というか非日常感が共感できる。
    なんにしても本多の歪んだ一面が前面に出てきていて、読むのはしんどいがなかなか面白い。

  • 今まで転生の観察者であった本多が
    この巻では主人公となる。
    歳を重ねた本多が見出していく死生観めいたものが
    ただでさえ難解なのに、なかなか時間がとれず
    読むのに間をあけてしまったのでほとんど理解できなかった。

    清顕や勲の生まれ変わりであるジンジャンの目線が
    語られることがないので、彼女の行動の真意もわかりかねる。
    終盤に怒涛のように起る出来事にただ驚くばかりだった。

    そもそもなぜみんな本多の身近に生まれ変わってくるのか?
    たくさんの「?」が頭の中をうごめいているけど、
    四巻に進みたいと思います。

著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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