サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 880
レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050270

作品紹介・あらすじ

獄に繋がれたサド侯爵を待ちつづけ、庇いつづけて老いた貞淑な妻ルネを突然離婚に駆りたてたものは何か?-悪徳の名を負うて天国の裏階段をのぼったサド侯爵を六人の女性に語らせ、人間性にひそむ不可思議な謎を描いた『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)。独裁政権誕生前夜の運命的な数日間を再現し、狂気と権力の構造を浮き彫りにした『わが友ヒットラー』。三島戯曲の代表作二編を収める。

感想・レビュー・書評

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  • 悪徳をテーマにした三島由紀夫の戯曲2編。一読して自分なんかが感じたことは巻末の作者自身の解題に趣旨の解説としてほぼ書かれてしまっているのですが(笑)、備忘的に。これも解題にあるのですが、『サド侯爵夫人』は女性ばかりの配役で、『わが友ヒットラー』は男性ばかりの配役という一対の効果をねらったものということです。さらに、「悪の怪物」と認識される両者よりも、三島の関心は「サド侯爵夫人」「突撃隊幕僚長レーム」の方にあるようで、「悪」そのものよりもその周囲から語らせて「悪」の凄みを引きだし、これが本作の面白さを引きたてているといえるでしょう。本作は背景に特色があるため、若干の歴史的事実を理解した上で読むほうが、より楽しめるかもしれません。
    演劇だけに、両作品とも役柄に明瞭な性格差異を与えていて、その対比から会話で魅せる手法は流石と思わざるを得ません。中でも世間様を代弁し強烈な反作用な個性のサド侯爵夫人ルネの母・モントルイユと、サド侯爵に「貞淑」を尽くす!ルネとの会話が火花を散らす第二幕、ひたすらヒットラーに友情を信じる極右レームと「革命」をそそのかす極左シュトラッサーの会話の第二幕は抜群の面白さでした。
    2作品とも全3幕構成ですが、それぞれのテーマに即した幕構成も秀逸でこれもかなり唸らさせられました。解題によると長回しのセリフはワザと挿入しているとのことですが(笑)、文学的要素も多分に含んでいて覚えるのは大変そうだなあ。(笑)
    テーマ内容としては、『サド侯爵夫人』ではサド侯爵アルフォンスに「貞淑」を尽くすということはどういうことか、そして最後の最後にサドにどう思われていたのかの三島なりの深層解釈が面白かった。『わが友ヒットラー』ではヒットラー自身を首相にまで押し上げた勢力を切り、独裁への次なるステップへ上がる時点でのそれぞれの思惑のぶつかりを、切られる方の葛藤と切る方の衝動と冷徹さの対比が面白かった。最後に垣間見られる「悪」そのものの実体がアイロニーに満ちているのは、舞台劇の結末として綺麗に落ちているといえるでしょう。どちらも舞台で観たくなりました。

    • 深川夏眠さん
      『サド侯爵夫人』だけ、昔、舞台を観ました。
      三幕構成で、第二幕がルネと母の鬼気迫る応酬で、凄い迫力でした。
      で、逆にこの本は未読なので、...
      『サド侯爵夫人』だけ、昔、舞台を観ました。
      三幕構成で、第二幕がルネと母の鬼気迫る応酬で、凄い迫力でした。
      で、逆にこの本は未読なので、これを機にボチボチ挑戦しようかな、と思い立ちました(笑)
      2013/02/11
    • mkt99さん
      深川さま
      コメントありがとうございます。m(__)m

      舞台でご覧になられたとは羨ましい!(笑)
      テーマがテーマなだけに舞台で観ると少し気恥...
      深川さま
      コメントありがとうございます。m(__)m

      舞台でご覧になられたとは羨ましい!(笑)
      テーマがテーマなだけに舞台で観ると少し気恥ずかしい気がするかなとも思っていたのですが、それだけの迫力だと圧倒されてしまうかもしれませんね!
      ますます舞台で観たくなりました。(笑)近辺で公演されないかな。
      2013/02/11
  • 3月に東山紀之&生田斗真の舞台を見に行ったので原作購入。
    舞台はほぼ原作の戯曲通り。

    『サド侯爵夫人』
    ずっとかたくなに夫に固執していたルネが、3幕で突然夫に見切りをつけるのが不思議。
    ルネが愛していたのは、「自らが作り上げたサド」だったのかなあ。
    そのあたりは他の登場人物の台詞から組み立てて推理していくしかないかな。

    すごく理論的な話の展開だと思った。
    女性が6人でてきて皆固い口調で話すだけなのに。


    『わが友ヒトラー』
    舞台でも思ったけど、『サド侯爵夫人』より、こっちのが好き。
    題名的には『サド侯爵夫人』が大々的にPRされてたけど。

    盲目的にヒトラーに従うレームが悲しい。
    どれだけ殺されると論理的に説かれても
    親友のヒトラーが自分を殺すはず無いんだ、俺も裏切らないのさ!って言い張るレームが馬鹿で一途でかわいくて悲しい。

    そこはかとなくホモっぽかった。
    三島由紀夫だしなー。そういうことだったんだろうな、意図としては。

    三幕で、自分を信じすぎていたレームが罪だと言うヒトラー。
    政治家はつらいんだね。




    戯曲っておもしろい。

  • 舞台鑑賞。
    あれほど献身的に尽くしたルネが見捨てるのは何故か悩む。最後に小間使いの台詞で登場するアルフォンソは、これまで語られていた美男子からは程遠く、ぶくぶくの歯の汚い中年(老年?)男性。頻繁に面会に行っていたルネはその変貌を当然知っていたはず。とすると彼女は自分がいつまでも美しい事を見せつけに行っていたのではないかと思ったりする。そしてずっと待っていると希望を与え続け最後の最後に突き放したのだ。本来の彼女の清純さと貞淑さを踏み躙った侯爵に対する遠大な復讐か。

    • akehideさん
      私も野村萬斎演出の舞台を見に行きました。行って本を読みたくなりました。
      私も野村萬斎演出の舞台を見に行きました。行って本を読みたくなりました。
      2012/03/12
  •  フランス革命期を背景に女6人(ルネ夫人・母モントルイユ・サンフォン伯爵夫人・シミアーヌ男爵夫人・妹アンヌ・家政婦シャルロット)だしか登場しない’’サド侯爵夫人’’、長いナイフの夜事件の直前を舞台に男4人(ヒットラー、活動家エルンストレーム・ナチ党左派シュトラッサー・鉄鋼王グスタフクルップ)しか登場しない’’わが友ヒットラー’’、何度も上映されてる三島由紀夫の台詞劇。非常に制約された状況下でこれだけの作品を作り上げた著者の激烈な才能を感じさせる一作。才能は感じたけど本で読んで面白いかどうかはまた別かもね、舞台で見るほうが面白そう。
     あとシャルロットをなぜ登場させてるのかの必然性が不明だった。愚直なエルンストレームに焦点を当てた描き方はよかった分シュトラッサーがかすんでしまったかな。

  • 三島由紀夫の女言葉は発話されてほしいし、舞台とか楽しいだろうなあ。綺麗な女優さんに際どくも美しい日本語を読んでほしい

  • 三島由紀夫は戯曲も面白いのだなと思った。

  • さしものサド侯爵も、侯爵夫人にかかってはかたなしといったところか。/貴族としての矜持、貞淑な妻としての矜持を持ち、夫に対する思いの深さ、まわりの雑音や、母からの"お前のためを思って"と言いつつの、夫婦の意思を無視した仕打ちに耐えつつ、監獄への見舞いや脱獄の手助けなどを実施したサド侯爵夫人ルネ。フランス革命で貴族の世がひっくり返る時、牢内のサド侯爵はその世間的なポジションが相対的にせりあがり、ついには帰ってくるが、夫人の対応は、会わない、というものだった、と。侯爵とはまた違った形で、己の道を思いきわめ、それを貫き通した見事な生き様。/以下抜粋。/サド侯爵はあのとおり、残虐がつまりやさしさで、鞭とボンボンを通してでなくては、心の本当の甘い優しさを表てに出せない方だと思いますの。/良人が悪徳の怪物だったら、こちらも貞淑の怪物にならなければ/幸福というものが、アンヌ、泥の中の砂金のように、地獄の底にも煌めいているものだとわかったんだわ。/何かわからぬものがあの人の中に生れ、悪の中でももっとも澄みやかな、悪の水晶を創り出してしまいました。/この世界の果て、世界の外れに、何があるか見ようともなさらず、鴇いろのカーテンで窓をおふさぎになる。そしてあなたは死ぬのです。自分が蔑んだものにとうとう傷つけられなかったことを、唯一の誇りになさって。

  • 2011/4/29 My本棚のこれまでに登録していなかった本を登録。

  • 表裏一体の世界
    夢想、現実
    友情、苦悩
    女達の戯曲、男達の戯曲

    演劇は台詞に力が込められている。
    詩的台詞に美と狂気を感じた。

  • 三島由紀夫が演劇の脚本を書いているとは露知らず手に取った作品。
    1作目の「サド侯爵夫人」は主人公のルネがどうにも好きになれず
    イライラしながら読み進めてしまいました。
    どちらかというと常識的な自分はモントルイユ夫人に共感し
    どうしても他人の思い通りにはならないとするルネのような人って
    いるよなぁなどと思いながら物語の本筋やテーマと全く関係の無いところに
    主眼を置いて読んでしまいました。

    「わが友ヒットラー」については一夜にして右と左の両方を斬捨て
    中道を進むと民衆に思わせ独裁体制を築いていったヒットラーの
    政治手腕とその苦悩を描いた作品だと思いますが
    ヒットラーとレーム、シュトラッサーのやり取りが悲劇に向かいつつも
    喜劇的で面白く読むことが出来ましたが歴史背景をあまりに知らないため
    深いところまで読めていないなという思いはありました。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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