鍵のかかる部屋 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 491
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050287

感想・レビュー・書評

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  • 年代バラバラの短編集。
    何をコンセプトに編んだのか、気になる。

    印象に残ったのは「祈りの日記」。
    筒井筒の引用から始まる冒頭。わくわく。
    幼少期に仲睦まじく過ごした様子から、約束を違えて疎遠になり、また年月を経て以前とは違った親密さを表すようになる男女。
    女の子が恋に芽生えて、それと知らずに戸惑うシーン、いいねえー。

    かと思いきや、「鍵のかかる部屋」では、お母さんと良い仲になっていた男が、続いて9歳の娘に翻弄される。
    そういう「妄想」に、ひたすら取り憑かれる男が下衆すぎる。
    母娘の、部屋に鍵をかける音がほんとうに脳内に響いて、すごいなと思った。

    「訃音」では、地方の役員達にナメられまいとする若手金融局長。
    お気に入りのパイプを失くして、そんな小さなことと思いつつも、どんどん平静を取り戻せずにいるところに、妻の訃報が。
    皆が、なるほど!そういうことだったのか!と合点しちゃうわけで。
    小心から美談への跳躍。ラストシーンは、男のしてやったり感が腹立つけど、笑えて良い。

  • 少年期から晩年まで書いた短編小説を集めたもの。正直難解な短編もあり、同じ新潮から出ている短編集「花ざかりの森、憂国」よりとっつきづらいが、より三島の化け物っぷりが分かる短編集だと思う。

    あと個人的に、三島の小説は普段たいして意識しない感覚のインデックスだと感じている。感覚の既視感というのか。

  • 耽美で女の子が怖い本でした。
    少女性って怖い、思春期って怖い。
    怖いこと尽くめで面白いお話が沢山詰まっていたように思います。
    続きが気になって、講義中にこっそり読んでました。

  • 「女を抱く時、我々は大抵、顔か乳房か局部か太腿かをバラバラに抱いているのだ」

    「隠れた名作」という言葉が良く似合う三島由紀夫の短編集。地味目な話が多いけれど、収録された話の内いくつかは三島ワールドの濃密さがたっぷり楽しめる珠玉の出来。

    「怪物」はタイトルに相応しい傲慢で悪魔的な性格の男が、突如介護が必要な身体状況に陥ってしまう。「江口初女覚書」は是非、現代のビッチに置き換えてリメイクしてほしい話。表題の「鍵のかかる部屋」では年端もいかぬ少女と密室の中で繰り広げられる秘密が、三島らしい人間観とともに語られる。

  • 語彙力がありすぎて、とても昭和の文学者って感じがしない。
    ・・・っていうと、昭和の文学者って何なんだって気がしなくもないけど
    明治の文豪あたりが使ってそうな語彙までカバーしてる感じがある。

    普遍的なバックグラウンド(自然や心情など)があれば
    それを表現する「言葉」というのは
    誕生してからどんなに時を経ても残ると思うし、実際残っているんだけれども。
    では
    その「言葉」を使うかどうか、
    ということに関しては
    使い手が、その言葉の表現しうる「事柄」に対しての気づきがあるかどうか
    にかかってくると思うんです。
    要は
    ある物事をどう見るか、またそれがどう見えるか、
    内外からの視点に気付ける感性を持っているかどうか、
    ってことなんだけれども
    彼はとにかく
    何に対しても感性が鋭いし
    その鋭さを持て余さないための語彙武装が
     ス ゴ イ (←私の語彙力…)。

    そんでもって
    一番驚かされるのは
    語の組み合わせのセンスの良さ、です。
    部屋の黴臭さ
    雪の上に物が落ちる音
    他人の絶望が自分の希望に変わる瞬間の逆流する血液
    そういうのが
    目の前で繰り広げられているかのように
    今ここで体験しているかのように
    入り込んでくる。

    三島の作品を日本語で読めるって幸せだな
    と改めて実感させてくれる1冊。

  • 短編集。「鍵のかかる部屋」などいくつかの作品は「金閣寺」のような戦後の日本人の混乱を描いている。愛するがゆえに殺す、悪徳が実は一番、道徳を理解しているなど相変わらず物事の価値観や表裏を考えさせる作品が多かった。印象的なのは「死の島」。作者自身の誌的表白らしい。大沼で湖から島々を眺めつつ、自分の内面を見ている作品。「生きる意志」が生をゆがめることもある。自分の生を眺めつつ、未知を探していくというような流れが好き。

  • 2015.11.29 読了

  • 今年は三島由紀夫の生誕90年を迎へますが、同時に没後45年に当る年でもあります。即ちその生涯45年に並んだといふ訳ですな。
    『金閣寺』『潮騒』などといふ著名な長篇小説は避けて、偏屈にも短篇集『鍵のかかる部屋』を手に取つてみました。
    解説(田中美代子氏)によりますと、「約三十年の作家生活を通して、各時期に書かれた短編小説十二編が収録されている」との事ですが、最後の『蘭陵王』だけ最晩年の作品で、あとは大体昭和20年代に集中してをります。この時代が三島由紀夫の所謂「文学的開花」の時期なのでせう。

    以下簡単に各作品に触れますと......
    「彩絵硝子」では、狷之助さんと則子さんの関係がどうなるか、通俗的な読者の期待を嘲ふかのやうな印象です。
    「祈りの日記」は、どうしても「男もすなる日記といふものを~」を連想しますね、読みにくいけれど。弓男さんを手玉に取るやうな康子さんの態度は、末恐ろしい。
    「慈善」に於ける秀子さんに対する作者の仕打ちには、高慢な残酷さを感じます。これも「ジャスティファイ」される行為なのか。
    「訃音」では、檜垣局長(権力者)への皮肉(嫌がらせ)が効いてをります。但しわたくしの好みぢやない。あ、わたくしの好みなんざ誰も聞いちやゐませんわな。
    「怪物」の松平斉茂氏は、最後の怪物ぶりを披露したが、その思惑は見事に外れ、檜垣(「訃音」の主人公と同名なのは偶然か?)の人望を上げるのに役立つただけのやうです。しかし真に人道的なのは誰なのか、分かつたもんぢやありません。
    「果実」では、女性同士の恋愛が描かれてゐますが、昨今の同性カップルとは一線を画し、必然的に破滅へ向かはざるを得ない幻想的な存在です。しかし「果実」とはぴつたりの表題ですな。
    「死の島」に於ける菊田次郎も、幽玄さを湛へた不思議な人物であります。支配人のゐる空間とは、完全に次元の違ふ世界に漂つてゐます。この人、無事に家に帰ることが出来るのかなあ。
    「美神」のN博士は、もう少しR博士に対して思ひやりがあつてもいいのぢやないか?と別次元の感想を抱きました。あはれなR博士......
    「江口初女覚書」は悪女の話。まるで新東宝映画を観てゐるやうです。若杉嘉津子か小畠絹子かな。
    表題作「鍵のかかる部屋」の、財務官僚と9歳の少女。二人の危険な香りのする関係。息苦しくなるやうな展開であります。使用人しげやの最後の一言は、読む者を凍りつかせるのでした。自分好みの作品。あ、わたくしの好みなんざ誰も(以下略)。
    「山の魂」は、作者の官憲嫌ひを窺はせる一篇であります。隆吉と飛田のやうな関係は、姿を変へながらも、きつと現在も続いてゐるのでせう。
    「蘭陵王」は「盾の会」の戦闘訓練での出来事を元にしてゐます。横笛で「蘭陵王」を演奏した青年の最後の一言は、真の敵を見誤つてゐる(と作者が考へる)大衆が念頭にあつたのでは?と脳裏をちらりと過りました。印象的な一篇。

    通読しますと、好みは別として、作者の溢れんばかりの才能や技巧を感じない訳にはいきません。そしてその背後には、一般大衆を小馬鹿にする、自信満々の作者のドヤ顔がちらつくのであります。

    さて、今夜も更けてまゐりました。この辺でご無礼いたします。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-588.html

  • 死の島・怪物・江口初などが面白かった。

  • 訃音・・・エリート故のプライド。いや、普通の人でもこういう妙なこだわりや世間体を気にした感情ってあるよな、はっとさせられました。

    怪物・・・悪行に取りつかれたある貴族の話です。
    寝たきりであるが為に、様々な思いが錯綜しています。かつて悪の限りを尽くした男の、あまりにも哀れな物語。


    鍵のかかる部屋・・・財務省勤めの青年が、九歳の少女へ抱く異常な感情を描いています。
    夢の中での話が、非常に不気味です。三島さん、ヤバい人だっていうのがよく分かります。(笑)
    しかし、短編ながら、長編のような完成度。



    私には少々、難解と感じる作品が多かったです。
    表題作「鍵のかかる部屋」は最も三島らしく、引き込まれる内容でした。

    どの物語も、人間がふとしたときに抱くけど、なかなか言葉にできない感情が描かれていて、改めて作者の
    表現力の凄味を感じました。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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