ラディゲの死 (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050294

感想・レビュー・書評

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  • オチの冴えがスゴい。短編の手本集のよう。ただ、自分の中のミシマは長編の中にあるかも‥‥。

  • 久しぶりの短編集、思ったよりハマらなかった短編集だった。昭和30年に発売された単行本を図書館で借りてきたら、現在新潮社から出ている文庫本と収録作品が異なっていて、そういうこともあるのか…となっていた。
    単行本には、花火、離宮の松、水音、新聞紙、不満な女たち、卵、海と夕焼、旅の墓碑銘、ラディゲの死、地獄変、鰯売恋曳網が収録され、本文庫本には、みのもの月、山羊の首、大臣、魔群の通過、花山院、日曜日、箱根細工、偉大な姉妹、朝顔、旅の墓碑銘、ラディゲの死、復讐、施餓鬼舟

    旅の墓碑銘とラディゲの死だけが共通。まずは文庫本を読んだ形。
    文庫本の中では「みのもの月」「朝顔」「旅の墓碑銘」「ラディゲの死」あたりは好きだったけど、どれもめちゃくちゃ好き!というほどにもならなくて、残念笑。

    「みのもの月」は17歳の時の作品!みのも=水面。
    「どうぞお心を昔にかえして下さいまし。どうぞ再びわたくしに会うと仰言って下さいまし。御戻り下さいまし。後生。お戻り下さいまし。…」から始まる女と男のやりとり。
    女が縋っているような出だしだが、途中で立場が逆転するも、男がすげなく断られ出家・逝去となる。最後の「瓔珞のかげからどうぞわたくしに繽紛と花のはちすをお降らし下さいまし、はるかのそらにかかる無量の琴のねを、この地上にあって哀しみにたえております女の耳におきかせ下さいまし、わたくしは、みのもの月でございますから。」という最後の文が美しい

    「旅の墓碑銘」単行本によると、「「火山の休暇」「死の島」に続く連作の一篇で、菊田次郎という作者の分身をして、作者の制作心理を語らしめようとした小説であるが、私はかういう遊びに飽きたから、これから先、菊田次郎の登場する作品が、また生れるかどうかは定かではない」そうだ。
    火山の休暇は『岬にての物語』、死の島は『鍵のかかる部屋』で読んでいるはずだが直線で繋がらなかった。

    「君は生命に觸れなかつたのか」
    「君はその指でもつて生命に觸れるとでも言ひたげだね。猥褻だね。生命は指で觸れるもんぢやない。生命は生命で觸れるものだ。丁度物質と物質が觸れ合うようにね。それ以上のどんな接觸が可能だらう。…それにしても旅の思ひ出といふものは、情交の思ひ出とよく似てゐる。事前の欲望を辿ることはもうできない代りに、その欲望は微妙に變質してまた目前にあるので、思ひ出の行爲があたかも遡りうるやうな錯覚を與へる」

  • 「芸術の顔 三島由紀夫」というアンソロジーで、「旅の墓碑銘」からの「旅人はもまた泥棒みたいなものさ」「一分のちに、無縁の人間になれるとわかると、僕たちは安心して友だちになり、相手の中へずかずかと入ってゆき、そこから全部を失敬して引き上げる。世界中に友人を作るのは易々たるものだね」をはじめ、いくつもの言葉が気にかかり、一冊読んでみたくなった次第。/尊敬は一種の不換紙幣で、どこにも黄金の感情はないのだ(大臣)/生活するためには生活を犠牲にすればよろしい(魔群の通過)/神を見た人間は、視力の極地まで、人間能力の極地まで行ってかえって来る(ラディゲの死)/幸福な状態は、幸福について考えるのに適していない(施餓鬼船)/電車に惹かれて首をはねられた恋人たちのイメージ、箱根の芸妓との恋におぼれた真面目一徹の丁稚が、東京に戻るとともに音信を絶たれただただ虚しい思いをかかえるシーン、部下に戦犯の罪を押し付けてその父からの復讐におびえる一家、蕩児の放埒をむしろ褒め称えこれぞ男だと甘やかしつけあがらせる祖母...など。

  • 言葉がきれい。お上手。

  • 憂国と1・2を争う感じで読み返してます。
    三島の本が好きだなーと漠然とは思ってたけど、堂々と三島好きです!と言い出したのはこの辺読み終えてからだなあ。

  • どれも登場人物に引き込まれます。

    【みのもの月】
    昔の文のやりとり。表現がかっこよかったです。
    手紙の内容については、好きだからこそ、ジメジメしていて、皮肉めいた内容になるのものなのかと思った。執念深さが伝わりました。
    それでも最後、相手が亡くなった後に向けた「この地上にあって悲しみにたえております女の耳にお聞かせ下さいまし」に想いが込められていました。

    【ラディゲの死】
    フランス文学を全く知らないので、ラディゲとコクトオについて調べてから読むことで漸く理解できました。
    【日曜日】
    別に魅力的でもなんでもない2人についての描写だったはずなのに、親しみを覚えたころにこの結末。。
    読んでいるこちらがショックを受けているのと関係なく続く日常の描写に、たしかに、現実って、そのとおり人の死に関係なく日常は続くよね、、と思いました。

    【魔群の通過】
    登場人物が全員癖ありで面白かったです。
    ・生活の苦労 生活するためには生活を犠牲にすればよろしい
    は響きました。

    【偉大な姉妹】
    文章が好きだけど、難しくて一回ではなかなか入ってこなかったです。再読が必要です。

  • 「花山院」が読みたくて。

  • 人工美。

  • 「山羊の首」は★★★★★

  • 三島由紀夫のアンビバレントな内面を感じる短編集であった。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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