葉隠入門 (新潮文庫)

著者 : 三島由紀夫
  • 新潮社 (1983年4月発売)
3.58
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050331

葉隠入門 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 過去、どこかのレビューにも書いたのだが、再読してやはり、葉隠とはつくづく、自己啓発本だと思う。世に教訓をする人は多し。教訓を悦ぶ人はすくなし。まして教訓に従う人は稀なり。つまり、教訓を得るに、読書をするような自習も不可欠ということだ。恋愛や芸事、男色や上司との付き合いまで、その心得が書かれている。最近の自己啓発本と異なる点は、あるいは、武士道とは死ぬこと見付けたり、の一言に尽きるのかも知れない。常に死を覚悟することこそが誤りなく一生を過ごすために必要で、生きたいから、生きるための理屈ばかり考えるようではいけない。

    快楽を追求しても一時の認識に過ぎず、そこに執着する意味はない。しかし、自らが永遠に生きると錯覚するから、我欲にこだわるのだ。キリスト教がローマで急に勢いを得たのは、ある目標のために死ぬという衝動が渇望されていたからだという。我々も死について、覚悟と共に理想を携えておくべきなねだろう。そこから人生を設計することが、過剰な我欲を削ぎ、存在意義を全うできるのではないか。

  • 三島由紀夫が心酔した山本常朝の「葉隠」。「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の一句で名高く、死という概念を中核に据えた闊達な武士道精神を著したものです。三島由紀夫に「私のただ一冊の本と」まで言わしめ、その精神を今日によみがえらせ、その教えを現代という乱世に生きる「武士」たちに説こうとした本です。また、彼の人生論や道徳論であり文学的な思想的自伝でもあります。

    この本は、前段では山本常朝が述べていることについて、三島由紀夫がコメントをするような形のつくりになっています。あるところは共感し、あるところは矛盾を指摘し、あるところはきちんとした根拠を持って批判をしたりするなど、鋭くかつ醒めた目でこの思想を見つめています。

    後段では「葉隠」の彼なりの読み方を紹介しています。「死ぬこと」という概念を鋭利な刃物のように鋭い目で見つめています。「葉隠」の暗示する「死」、特攻隊の「死」、自殺者の「死」についての精神的な考察が深いです。われわれは、一つの思想や理論のために死ねるという錯覚に、いつも陥りたがります。しかし、「葉隠」が示しているものは、もっと容赦ない死であり、花も実もない無駄な犬死でさえも、人間の死としての尊厳を持っているということを主張しています。生の尊厳をそれほど重んじるならば、死の尊厳を重んじないわけにもいかないはずです。

    この本を突き詰めていくと、死という真理を感じるとともに、踏み入れていはいけないところに足を踏み入れたような恐怖も感じます。巻末に「葉隠」の名言抄がついていますが、それを踏まえて読んでみると三島の「鋭さ」を感じます。しかしながらよく切れるけど、一つ間違うとすぐ刃が欠けて使い物にならなくなる刃物のような思想。そんな諸刃の剣の怖さも感じます。

  • 2017.12/15

  • 三島由紀夫が「死を恐れぬことと、命を粗末にすることは全く違うのだ」と力説する前半に、後半は「死を恐れぬ」精神を如何にして育むべきかを説いた『葉隠』現代語訳。

  • ■武士道といふは、死ぬ事と見つけたり
    つねに死を覚悟していれば、道を誤ることはない
    ■三十歳を過ぎれば、とくに謙虚になること
    年をとるほど謙虚になり教訓を受けること
    ■一瞬、一瞬を、真剣勝負のつもりですごすこと
    いざというときと平常とはおなじこと

    必死という言葉の意味を噛み締める。美しく生きるということを学べる一冊。

  • 2017.12/15

  • 三島由紀夫=切腹のイメージが強く、葉隠入門という本を出していると知って、やはりな、と思いました。葉隠は、「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という言葉が有名だけど、本当はこんなにいろんなことを言っていたんだよ、みたいな内容ですが、それを三島由紀夫が解説しちゃうと、やっぱり「死ぬ事と見付けたり」なんだろうなぁ、と思っちゃいます。解説の、「三島由紀夫は芸術の秘鑰(ひやく)たる死の錬金術師だった」て言葉がよくわからないけどかっこいいです。

  • 葉隠の解説書でもあり三島由紀夫の思想表明でもあると思う.現代の社会と比べたりしてたり,わかりやすかった..

  • 山本常朝の葉隠を現代語訳化した
    武士の自己啓発本。

    前半部分は三島による葉隠の解説となっており
    後半は現代語訳という構成。

    葉隠の三大哲学は
    主体的な行動哲学、
    アガペーとエロースによる恋愛哲学、
    そして武士道といふは、死ぬ事と見付けたりに
    表される生きる哲学である。

    武士としてあるべき姿を
    厳格に、それでいて、愛に満ち溢れて書き述べてある。
    矛盾とニヒリズムの込められた
    考えさせられうる啓発本である。



    実践の項、あくびが出そうな時上唇を舐めて我慢する事。
    男たるもの嗜みを忘れるなかれという事ですね。
    メルセデスの男にもあったように、
    外見の道徳、嗜みの着飾りを忘れないようにします。

    子供の教育について。
    おどし、騙すことなどあるまじく候。
    脅かしや叱りがなければのびのび育ち
    臆病や打ち気になることもない。なるほど。
    また、父への敬いを忘れさせないこと。

    恩を受け候人には、一生のうち疎遠にあるまじきなり。

    武士道は死に狂いなり。
    本気にては大業はならず。
    気違いになりて死に狂いするまでなり。

    言行が人を変える。
    臆病に類する表現があれば心も臆病になる。

    世に教訓をする人は多し。
    教訓を悦ぶ人は少なし。
    まして教訓に従う人は稀なり。
    年30も越したるものは、教訓する人もなし。

    不仕合せの時、草臥ぶるる者は益に立たざるなり。

    恋の至極は忍恋と見立て候。
    一生忍んで思い死する事こそ恋の本意なれ。

    会議の方法、談合事は出席者一人一人をよく説得して、
    合意に達する工夫をしてから開くのがよい。

    人間一生誠に纔の事なり。好いた事をして暮らすべきなり。

    白刃を常に振り回す者には人が寄り付かず〜
    内にばかり納め置き候へば、錆も付き刃も鈍り〜

    50ばかりより、そろそろ仕上げたるが良きなり。
    今は折り返し地点なんだな。

    ーー葉隠の読み方より
    特攻隊はいかなる美名におおわれているとはいえ、
    強いられた死であった。
    原子爆弾による死でさえも、あのような圧倒的な強いられた死も、
    一個人一個人にとっては運命としての死であった。
    死の形態にはその人間的選択と超人間的との暗々裏の相剋が
    永久にまとわりついている。

    図に外れて生きて腰抜けになるより
    図に外れて死んだ方がまだいい。


    何度も読み返したい一冊であった。

  • 「毎日死を心に当てることは、毎日生を心に当てることと、いわば同じことだということを「葉隠」は主張している。われわれはきょう死ぬと思って仕事をするときに、その仕事が急にいきいきとした光を放ち出すのを認めざるをえない。」(28頁)
    「翌日のことは、前晩よりそれぞれ案じ」「わたし自身はあくる日の予定を前の晩にこまかくチェックして、それに必要な書類、伝言、あるいはかけるべき電話などを、前の晩に書きぬいて、あくる日にはいっさい心をわずらわせぬように、スムーズにとりおとしなく仕事が進むように気をつけている。」(42頁)

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